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人的資本経営の成功事例13選|実現させるための具体的な施策まで徹底解説!

近年注目を集めている人的資本経営ですが、具体的にどのような施策を実行するべきか悩んでいませんか?

人的資本経営を実現させるためには、従来の経営戦略との違いを理解し、実行するための要点を押さえておかなければなりません。

自社でどのような施策を実行するべきか悩んでいる企業は、すでに人的資本経営を実現させている他社の成功事例を参考にしましょう。

本記事では、人的資本経営の成功事例を13社ご紹介します。人的資本経営を実現させるメリットや具体的な施策を併せて解説するため、最後まで読んで自社が実行するべき取り組みを考案してください。

■人的資本に関するお役立ち資料も是非ご参照ください。
人的資本の開示項目に対応!各開示項目に対するサービス事例

目次[非表示]

  1. 1.人的資本経営とは?
    1. 1.1.従来の経営戦略との違い
    2. 1.2.人的資本の開示状況
  2. 2.人的資本経営で重要な3P・5Fモデル
    1. 2.1.人的資本経営における3P
    2. 2.2.人的資本経営における5F
  3. 3.人的資本経営を実現するメリット
    1. 3.1.人材獲得・人材育成へつながる
    2. 3.2.従業員エンゲージメントが向上する
    3. 3.3.生産性が向上する
    4. 3.4.企業イメージアップにつながる
    5. 3.5.投資や融資を受けやすくなる
  4. 4.人的資本経営を実現させる具体的な施策例
    1. 4.1.人材ポートフォリオの構築
    2. 4.2.ダイバーシティの促進
    3. 4.3.従業員エンゲージメントの向上
    4. 4.4.フレックスタイム制・テレワークの導入
    5. 4.5.経営目標・課題の共有
  5. 5.人的資本経営の成功事例13選
    1. 5.1.成功事例1. 旭化成株式会社
    2. 5.2.成功事例2. アステラス製薬株式会社
    3. 5.3.成功事例3. 伊藤忠商事株式会社
    4. 5.4.成功事例4. 株式会社荏原製作所
    5. 5.5.成功事例5. オムロン株式会社
    6. 5.6.成功事例6. 花王株式会社
    7. 5.7.成功事例7. キリンホールディングス株式会社
    8. 5.8.成功事例8. KDDI株式会社
    9. 5.9.成功事例9. 株式会社サイバーエージェント
    10. 5.10.成功事例10. 双日株式会社
    11. 5.11.成功事例11. ソニーグループ株式会社
    12. 5.12.成功事例12. SOMPOホールディングス株式会社
    13. 5.13.成功事例13. 東京海上ホールディングス株式会社
  6. 6.人的資本経営の成功事例を参考に自社に合う施策を考案・実行しよう!

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、人材を資本として捉える経営戦略です。 従業員のスキルアップや知識の習熟に注力することで、中長期的に企業の業績を上げます。

人材の知識やスキルの向上だけではなく、従業員エンゲージメントを向上させて、生産性を高める目的もあります。 人的資本経営は、欧州や欧米など海外から注目され始め、国内でも企業価値を向上させる施策として推奨されています。

まず欧州では、2019年にISO(国際標準化機構)が人的資本経営に関して、「ISO30414」と呼ばれる指標を提示しました。

さらに米国では、2020年にSEC(米国証券取引委員会)が人的資本に関する情報開示を義務化しています。

国内では、2020年に経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を実施しており、人的資本経営への取り組みが注目されました。 従業員のスキルアップやライフワークバランスに取り組む人的資本経営は、人材不足・働き方改革が課題となっている現代の企業に求められる経営戦略です。


従来の経営戦略との違い

人的資本経営と従来の経営戦略の違いは、経営方針の方向性が異なることです。 従来の経営戦略では、長期的定着を前提とした人材の確保・管理を行っていました。

対して、人的資本経営は人材の管理ではなく、人材に投資して育てる経営戦略です。 人的資本経営は人材を資本として捉えるため、従業員のスキルアップやモチベーションの向上を重視して投資を惜しみません。

人的資本経営と従来の経営戦略では、次のように方向性が異なります。

経営項目
従来の経営手法(Not this)
人的資本経営(But this)
人材マネジメントの目的
人的資源・管理 (人的資源の管理。オペレーション志向。「投資」ではなく「コスト」。)
人的資本・価値創造 (人的資源の活用・成長。クリエーション志向。「投資」であり、効果を見える化。)
アクション
人事 (人事諸制度の運用・改善が目的。経営戦略と連動していない。)
人材戦略 (持続的な企業価値の向上が目的。経営戦略から落とし込んで策定。)
イニシアチブ
人事部 (人材関係は人事部門任せ。経営戦略の紐づけは意識されず。)
経営陣/取締役会 (経営陣のイニシアチブで経営戦略と紐づけ。取締役会がモニタリング。)
ベクトル・方向性
内向き (雇用コミュニティの同質性が高く人事は囲い込み型。)
積極的対話 (人材戦略は価値創造のストーリー。投資家・従業員に、積極的に発信・対話。)
個と組織の関係性
相互依存 (企業は囲い込み。個人も依存。硬直的な文化になり、イノベーションが生まれにくい。)
個の自律・活性化 (互いに選び合い、共に成長。多様な経験を取り込み、イノベーションにつなげる。)
雇用コミュニティ
囲い込み型 (終身雇用や年功序列により、囲い込み型のコミュニティに。)
選び、選ばれる関係 (専門性を土台にした多様でオープンなコミュニティに。)

引用元|経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」

従来の経営戦略では人材を消費する「資源」として捉え、人的資本経営では企業の財産になる「資本」として扱います。

そして教育や研修・職場環境の改善によってマネジメントする経営戦略が人的資本経営です。

人的資本の開示状況

国内の人的資本の開示状況は低い傾向にあります。

パーソル総合研究所が、TOPIX500指数構成銘柄の企業380社について2023年3月期決算を対象に調査した結果、人的資本のガバナンス項目を記入していた企業は380社のうち82社・全体の21.6%でした。

参照元|パーソル総合研究所「有価証券報告書を通した人的資本のガバナンスの開示状況とその内容」

まだまだ人的資本経営を実現させている企業は少ないことが、数値からも読み取れます。

また、金融庁が2023年1月31日に公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」によると、情報開示義務が次のように改正されました。

「改正前」 プライム・スタンダード市場の上場企業は、統合報告書で人的資本に関する情報の記載を任意で求める 「改正後」 グロース市場を含むすべての上場企業は、有価証券報告書で人的資本に関する情報の開示義務が発生する

情報開示に関する改正案によって、次のような人材資本に関する内容を有価証券報告書に記載するよう義務付けられました。

  • 人材育成の方針や社内環境整備の方針
  • 女性活躍推進法等に基づいた「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」

参照元|金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」


人材資本の情報開示義務は、2023年3月31日以降に事業年度が終了する上場企業に発生します。

参照元|金融庁「開示義務の適応時期について」

人的資本経営で重要な3P・5Fモデル

人的資本経営を実現させるためには、「人的資本経営の実現に向けた検討会」の報告書である「伊藤レポート」で定められた3P・5Fモデルを押さえておくことが大切です。

伊藤レポートにおける3P・5Fモデルは、人的資本経営を実現させるための指標です。

  • 3P「人的資本経営において欠かせない3つの視点」
  • 5F「人的資本経営において欠かせない5つの要素」

引用元|経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」

それぞれの要素を押さえることによって、人的資本経営を実現させる施策を考案できます。伊藤レポートの3P・5Fモデルを押さえた施策を実行するために確認しておきましょう。

詳細はコチラの記事も参照ください。


人的資本経営における3P

人的資本経営における3Pとは、3つの「Perspectives(視点)」で構成される経営指標です。 伊藤レポートで定められた3Pモデルとは、次の要素で構成されています。

  • 経営戦略と人材戦略の連動
  • 「As is-To be ギャップ」の定量把握
  • 企業文化への定着

引用元|経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」

人的資本経営を実現させるために各視点を押さえておきましょう。

経営戦略と人材戦略の連動

伊藤レポートにおける3Pの1つである「経営戦略と人材戦略の連動」は、人的資本経営を実現させるために重要なポイントです。

経営戦略が企業の方向性や目標を定めるのに対し、人材戦略はその実現に向けて必要な人材の育成や配置を計画します。双方が連動しなければ、企業の成長や競争力を向上できません。

人的資本経営では、経営戦略と人材戦略を連動して施策に取り組む必要があります。経営戦略と人材戦略の連動には、以下のポイントが重要です。

  • 目標の明確化と人材配置の最適化
  • スキル・能力の育成と経営戦略への適用

経営戦略を実現させるために、目標を明確化し適切な人材を配置する必要があります。さらに、組織内で必要なスキルや能力を持った人材を育成する人材戦略に取り組まなければなりません。 経営戦略と人材戦略を連動させることで、より効果的に人材育成・業績を向上できます。

「As is-To be ギャップ」の定量把握

「As is-To be ギャップ」の定量把握とは、現在の姿(As is)と理想とする姿(To be)のギャップを正しく把握することです。

現状と目標のギャップを把握することで、取り組むべき課題や施策を浮き彫りにできます。「To be」を具体的な数値や指標で設定すれば、目標の達成度を客観的に把握しやすくなり、明確な評価が可能になります。

また「As is-To be ギャップ」の定量把握により、現状の課題や数値を可視化できれば、経営戦略と人材戦略が連動しているかの判断も容易です。

企業文化への定着

企業文化は外部からもたらされるものではなく、人材戦略の結果として組織内に構築されます。

企業文化は、企業の特徴や価値観を表し、組織全体の行動や意思決定に影響を与える重要な要素です。

そのため、望ましい企業文化を築くことは、組織の成長と人的資本の活用に不可欠です。人的資本経営を実現させるために、従業員エンゲージメントを向上させ人的資本を高めるような企業文化を定着させましょう。

人的資本経営における5F

人的資本経営における5Fは、次のような5つの「Factors(要素)」で構成されています。

  • 動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用 
  • 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン 
  • リスキル・学び直し
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 時間や場所にとらわれない働き方の推奨

それぞれの要素を解説するため、3Pモデルと合わせて施策に取り入れましょう。

動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用 

人的資本経営を実現させるには、動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用が必要です。

経営戦略を実現させるためには、中長期的な人材の確保・育成によって持続的な人材運用が求められます。

そのため、経営戦略を実現させるために必要な人材の質・数・スキルを定めて、動的な人材ポートフォリオを作成する必要があります。

人材ポートフォリオとは、経営戦略に基づいて配置された人的資本の構成内容を指しており、人材調達方針を示す枠組みです。

さらに伊藤レポートで示される動的な人材ポートフォリオとは、対象の職務・業務に対して適切な人材の再配置を行うことを指しています。

知・経験のダイバーシティ&インクルージョン 

人的資本経営において企業の知・経験のダイバーシティ&インクルージョンを進めることが大切です。

多様化している顧客ニーズに対応するためには、多種多様な経験や視点を持つ人材が必要です。

価値観や国籍・経験などが異なる人材が掛け合わさることにより、イノベーションが生まれて企業価値を向上できます。

さらにダイバーシティが拡大している現代社会に対応するために、多種多様の人材や働き方を取り入れる必要があります。

ダイバーシティに対応し多種多様な人材や価値観をインクルージョンすることが、人的資本経営を進める上で重要です。

リスキル・学び直し

人的資本経営を実現するために人材を育成・成長させるリスキル・学び直しが必要です。

急速に変化する顧客のニーズに対応するためには、従業員がリスキル・学び直しをしてスキルアップしなければなりません。

従業員のリスキル・学び直しの機会を与えるために、研修や自己啓発の機会を設ける制度を整えましょう。

リスキル・学び直しを積極的に行える社内環境を整えることで、従業員を成長・育成する人的資本経営を実現できます。

従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントを向上させれば、人的資本経営の実現を促進できます。

従業員エンゲージメントは、従業員と企業のつながりの深さを表す指標であり、企業への愛着心や仕事への情熱を図る上で重要な要素です。

人的資本経営を実現するには、従業員が能動的に企業へ貢献しようと思える職場環境や体制を用意する必要があります。

従業員エンゲージメントの向上によって、従業員が能動的に仕事へ取り組み業績を向上させようと、高いパフォーマンスを発揮してくれます。

さらに自らスキルアップや知識の習得に励むようになるため、人的資本経営を促進することが可能です。

時間や場所にとらわれない働き方の推奨

人的資本経営に取り組む際には、時間や場所にとらわれない働き方を推奨しましょう。

テレワークやフレックスタイム制など、時間や場所にとらわれない働き方を採用すれば、従業員のライフワークバランスを高められます。

従業員のライフワークバランスが高まることで、企業への好感が高まり仕事のパフォーマンスも向上できます。 時間や場所にとらわれない働き方を推奨するためには、業務プロセスやマネジメント方針を見直さなければなりません。

人的資本経営を実現させるために、テレワークやフレックスタイム制などに対応できる組織づくりを行いましょう。

人的資本経営を実現するメリット

人的資本経営を実現するメリットは、次のとおりです。

  • 人材獲得・人材育成へつながる
  • 従業員エンゲージメントが向上する
  • 生産性が向上する
  • 企業イメージアップにつながる
  • 投資や融資を受けやすくなる

それぞれのメリットを確認して、人的資本経営に取り組むべきか検討しましょう。

人材獲得・人材育成へつながる

人的資本経営は、人材確保・人材育成へつながる経営戦略です。従業員にとって、働きやすくスキルアップができる企業は、できるだけ長く勤めたい魅力的な職場です。 人材のスキルアップや働きやすさに注力する人的資本経営は、従業員にとって魅力的な職場をつくりあげます。結果として、従業員の人材育成だけではなく、求職者の応募率を上げて採用力を強化できます。

従業員エンゲージメントが向上する

人的資本経営を実現すると、従業員エンゲージメントが向上します。 従業員にとって働きやすくスキルアップが望める環境を用意できるため、企業への愛着心・信頼が芽生えてエンゲージメントの向上が期待できます。 従業員エンゲージメントの向上は、定着率の向上やパフォーマンスの発揮につながるため、企業の業績を上げるためにも重要です。 人的資本経営を実現させるためには従業員エンゲージメントの向上が重要であり、従業員から信頼や好感を得られる施策を実施する必要があります。

生産性が向上する

人的資本経営を実現させるメリットは、生産性が向上することです。 人的資本経営によって従業員のスキル・パフォーマンスが向上すれば、効率的に業務を遂行できます。 さらに採用力・定着率の向上にもつながるため、採用コストや新たな人材を育成する教育コストを削減することが可能です。 人的資本経営は、従業員のスキルアップ・エンゲージメントの向上によって、生産性を高めて業績を向上できるメリットがあります。

企業イメージアップにつながる

人的資本経営を行うメリットは、企業イメージアップにつながることです。 従業員のスキルアップに貢献し働きやすい職場環境をつくる人的資本経営を実施すれば、「従業員を大切に扱う良い組織」と、企業のイメージアップにつながります。人的資本経営は自社のブランディングの一環となる経営戦略であるため、採用力の強化や顧客拡大が可能です。 働き方改革や労働人口減少によって、職場体制の整備や採用力の強化が求められる現代で、人的資本経営は課題を解決する打開策になる施策です。

投資や融資を受けやすくなる

人的資本経営を実施すれば、投資や融資を受けやすくなるメリットがあります。 投資や融資の評価項目となる人的資本を情報開示すれば、投資家たちの関心をひき出資を募ることが可能です。 ESG投資が注目される現代では、無形資本である人的資本が重要視されています。人的資本経営を実現させている企業は、将来性のある優良企業だと判断されて出資される可能性が高いです。 投資や融資を受けられれば、出資金により商品開発やサービスの拡大・人材への投資も充実させられるため、より事業を発展させられます。

人的資本経営を実現させる具体的な施策例

人的資本経営を実現させる具体的な施策は、次のとおりです。

  • 人材ポートフォリオの構築
  • ダイバーシティの促進
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • フレックスタイム制・テレワークの導入
  • 経営目標・課題の共有

それぞれの施策を実行すれば、人的資本経営の実現へ近づきます。それぞれの施策を参考に、自社で実行するべき対策を実行しましょう。

人材ポートフォリオの構築

人的資本経営を実現させるには、人材ポートフォリオの構築が必要です。 人材育成・適切な人員配置・雇用するべき人材の明確化を行うためには、自社で働く従業員のスキルや特性、必要なターゲット層を記した人材ポートフォリオを構築しなければなりません。 人材ポートフォリオを構築する際には、次のような項目を用意して、人材のスキルや特性を可視化しましょう。

  • 職務経験
  • スキルや能力
  • 人物像
  • 成長意欲や志向
  • 求める行動

採用活動を行う際に人材ポートフォリオを参考にすると、自社に必要な人材を把握できます。 さらに各従業員ごとの特性やスキルを把握できるため、適切な人員配置や育成プランの構築が可能です。

ダイバーシティの促進

人的資本経営に取り組む場合は、ダイバーシティの促進が必要です。 多種多様な人材や働き方を受け入れ、組織内でダイバーシティを促進することで、人的資本経営の実現に近づきます。 テレワークやフレックスタイム制の導入、外国人労働者やフリーランスの受け入れなど、従来の経営戦略にとらわれない柔軟な対応が必要です。 働きやすくイノベーションを促進する職場環境をつくりあげることで、従業員がパフォーマンスを発揮しやすい組織風土を構築できます。

従業員エンゲージメントの向上

人的資本経営を実現させるには、従業員エンゲージメントを向上させる施策が求められます。 従業員エンゲージメントが向上すれば、定着率や生産性を向上させて企業の業績アップに貢献してくれます。従業員エンゲージメントを高める具体的な施策例として、以下5つが効果的です。

  • 社内コミュニケーションの活性化
  • フレックスタイム制やテレワークの導入
  • ポジション公募制の導入
  • 健康経営の実施
  • 福利厚生の充実

従業員がモチベーションを高く持って働ける環境を提供するためには、職場環境の改善とワークライフバランスの向上が必要です。 人的資本経営に取り組む際には、従業員エンゲージメントの向上を目指して施策を考案しましょう。

フレックスタイム制・テレワークの導入

フレックスタイム制・テレワークの導入は、従業員エンゲージメントを高める施策としておすすめです。 働き方改革や新型コロナ感染対策によって、フレックスタイム制やテレワークの導入が普及しました。 現在では職場に出社せずとも働ける企業が増えており、従業員がライフワークバランスを充実させながら、お金を稼げるようになりました。

フレックスタイム制やテレワークを導入することによって、従業員エンゲージメントが向上して人的資本経営の実現につながります。 従業員のパフォーマンスを発揮して、無理なく働いてもらう環境を整えるために、フレックスタイム制やテレワークの導入が推奨されます。

経営目標・課題の共有

人的資本経営を実現させるためには、経営目標や課題の共有が必要不可欠です。 自社の経営戦略・目標を組織内で共有しておくことで、従業員と経営層が進むべき方向性を統一できます。 従業員のスキルアップやキャリアアップに注力し、人的資本経営の実現を目指す旨を宣言しておくことで、組織内のエンゲージメントを向上し高いパフォーマンスを発揮させることが可能です。

さらに経営課題を共有すれば、現場でしか把握できない課題や打開策を収集し、実行するべき施策を明確化できます。 人的資本経営に取り組む際は、社内報や自社ホームページ・朝礼で組織内に共有して、従業員と経営層が掲げる目標や課題のギャップを減らしましょう。

人的資本経営の成功事例13選

新たな経営戦略に取り組む際には、実際に戦略を実現させた他社の成功事例を参考にするべきです。成功事例を参考にすることによって、自社の課題に合った効果的な施策を考案できます。

経済産業省が公表している「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集」を参考に、人的資本経営の成功事例を13社紹介しますので、人的資本経営を実現させる施策を考案しましょう。

成功事例1. 旭化成株式会社

旭化成株式会社は、人材の確保・育成や従業員エンゲージメンを向上させて人的資本経営を実現させた成功事例です。 人的資本経営を実現させるために、全従業員を対象に年に1回人材ポートフォリオを構築しています。 採用すべき人材の質と量を事業軸と機能軸の双方の観点から洗い出し、採用計画や育成計画に反映して人材獲得を行っています。

さらに、M&Aを通じた人材獲得やコーポレートベンチャーキャピタルや投資家たちとの関係性を強化することで、採用・育成計画で確保できない人材を獲得するよう対策しました。 2020年からはKSA(活力と成長アセスメント)を導入し、従業員エンゲージメントを測定し課題解決に取り組んでいます。

また高いスキル・知見を持ち、部署を問わずに活躍できる優秀な人材を「高度専門職」と定めて、組織内に高度専門職が増えるよう人材獲得・育成に注力しています。 企業のDX化に向けて高度専門職の人数増加をKPIとして設定し、育成目標の230名を達成しました。

成功事例2. アステラス製薬株式会社

アステラス製薬株式会社は、人事部門の役割を見直し、多様な採用計画・人材確保の方法を採用させた人的資本経営の成功事例です。 人事部が、事業部のリーダー・マネージャーの質を高めるために、データドリブン人事に取り組んでいます。 人材に関するデータを総合的に分析して、企業にとって重要な資源である人材を有効活用して、人的資本経営を実現させました。 具体的には、次のような施策を実行しています。

  • 組織の健全性を向上させる目標を設定
  • 社内文化や働き方に対するマインドを改善・浸透
  • 報酬の連動目標を全社業績へと変更
  • 国籍問わず優秀な人材の確保
  • 社内公募制度による社内転職を実現

経営計画や組織内の目標を設定し社内に共有することで、組織が一丸となり人的資本経営に取り組む社内風土を構築しています。

さらに報酬の連動目標を部署業績から全社業績に切り替えて、部署間を超えて協力し合う体制を整えました。

またグローバル人材を登用し、優秀な人材であれば国籍を問わずに採用するダイバーシティを推進しています。 従業員エンゲージメントを向上させるため、社内公募制度を導入し従業員が働きたい業務に就けるよう配慮しました。

結果として、人材のポテンシャルを最大化させ人的資本経営を成功させています。

成功事例3. 伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社は、少数精鋭の組織で競争力を向上させるために、労働生産性を重視して人的資本経営に取り組んだ成功事例です。 企業価値に直結する人材戦略と成果を明確化するために、次の目標を定めました。

  • 優秀な人材の確保
  • 能力開発
  • 効率性の追求
  • 健康力向上
  • モチベーション向上
  • 経営参画意識の向上

それぞれの目標ごとに課題と施策を定め、従業員の企業業績に対する意識を向上させています。 さらに労働生産性を重視して、社内数に対する純利益を社外へ公開し、採用力を強化しました。

結果として、大学生の就職人気企業ランキング1位を獲得し、優秀な人材の確保を可能とする好循環を実現しています。

また、人的資本投資についてのKPIと施策を社内で共有し、効果を測定しています。従業員の労働生産性や能力開発に費やした時間・費用、エンゲージメントサーベイのスコアなど、複数のKPIを設定して、目標達成のための施策に取り組んでいます。

成功事例4. 株式会社荏原製作所

株式会社荏原製作所は、事業展開に欠かせないグローバル人材の確保・育成に関する施策・KPI・過去の成果を開示している人的資本経営の成功事例です。 「E-Vision2030」と呼ばれる長期的な経営戦略に連動する人材施策・KPIを定め、持続的な成長を実現するための基盤を整備しました。

また従業員同士が競争し協力し合う企業風土を構築するために、現在の風土を変革する施策を掲げて、各施策ごとの目標を過去の成果とともに開示しています。 海外の各拠点で継続的に経営人材を選出するために、各国で優秀人材を早期に抜擢・育成を行ってきました。

さらに若手研究者を育成するために、外部研究機関で技術課題に関する共同研究を実施しています。 自社の退職者までも人的資本の対象としてネットワークを形成し、クラウド型SNSシステムによって社内のニュースやキャリア採用情報を配信しています。多様な人材の獲得や協業・オープンイノベーションを促進した人的資本経営の成功事例です。

成功事例5. オムロン株式会社

オムロン株式会社は、企業理念の浸透やリーダー育成・多様な人材活躍に取り組んだ人的資本経営の成功事例です。 企業理念を軸に事業を通じて社会的課題を解決するよう、従業員が自ら目標を立てる過程で企業理念を浸透させています。 組織を牽引するグローバルリーダー人材を育成し、経営人材の確保に取り組んでいます。

また、海外の重要拠点における人材の確保を現地で行えるよう注力し、エリアごとに適した人材の登用・意思決定を実現させました。 従業員エンゲージメントを持続的に向上・維持するために、人事情報システムを導入して、従業員の成長と仕事への充実度・適材配置の両立を目指しています。

成功事例6. 花王株式会社

花王株式会社は、多様な人材がパフォーマンスを発揮できる組織風土と従業員のチャレンジに注力した人的資本経営の成功事例です。 人材を企業の資本として捉え、従業員一人ひとりが持つ能力を活性化するために、次のような施策に取り組みました。

  • 全従業員によるチャレンジと立場を越えた連携の推進
  • 専門性の高い多様な人材が能力を発揮するためのキャリア開発と人材育成
  • 多様化した柔軟な働き方を実現するための環境整備

また経営層を委員長とする「人材企画委員会」を毎月開催し、人材開発の課題や施策についての議論や進捗報告を行っています。 従業員が成長のために挑戦する組織風土を構築するため、「自分の成りたい理想」を思い描いて目標を設定するOKR(Objectives & Key Results)を導入しました。

さらに2020年には新たな人材開発として、各部門・国内グループ会社の人事責任者・キャリアコーディネーターが、障がいのある従業員や女性従業員の活躍を推進するために「Diversity推進ミーティング」を計16回開催しました。 多様な人材が活躍するダイバーシティを拡大させた人的資本経営の成功事例です。

成功事例7. キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、食と医療の領域で築き上げた組織の強みを活かし、経営戦略と人材戦略の双方を両立させた人的資本経営の成功事例です。 既存の食領域・医領域に加えて新たにヘルスサイエンス領域へ参入するため、ヘルスサイエンスやICTなどの専門的な知識・経験を持つ人材をキャリア採用によって募集しました。

結果として、2017年度には全採用者数のうちキャリア採用者数が占める割合が16%だったのに対し、2020年には約40%向上しました。

また従業員エンゲージメントの向上のために、エンゲージメントスコアを重要な成果指標として設定しています。役員報酬にもエンゲージメントスコアを反映させることにより、従業員の働きに応じた成果報酬を実現させました。

多様な人材が活躍するダイバーシティの拡大に向けて、女性従業員や若手従業員が活躍する機会を設けて、キャリア採用・育成計画を充実させています。

成功事例8. KDDI株式会社

KDDI株式会社は、経営層・事業部門から信頼される人事戦略を実行した人的資本経営の成功事例です。 本社の営業部門で約20年の業務経験を持つ従業員を人事部門トップに登用し、経営と業務の連携を実現しました。

従業員へ生産性の高い働き方を推奨するため、HRデータをダッシュボードにまとめ社内に提示しています。

また「As is-To be ギャップ」の定量把握による、不足している人材層を採用・育成・配置によって埋める人材ポートフォリオの活用を行っています。

従業員のスキルアップのために、全部門共通のポータブルスキルや専門スキルを提供し、リスキル・学び直しの機会を整備しました。 さらに採用計画を見直してキャリア採用を10年で約10倍に増やす目標を掲げ、専門性の高い人材の入社を促進しています。

成功事例9. 株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントは、事業領域の拡大に合わせ社外人材を活用した組織的なリスキルを実現し、事業成長に必要な人材ポートフォリオを確保した人的資本経営の成功事例です。 広告代理事業からメディア事業・ゲーム事業・テレビ事業と、事業領域を拡大するごとにリスキルの領域を特定し勉強会形式で研修を行ってきました。

スキルが不足している人材層は社外人材を活用し、人材不足の課題を解消しています。

また成長事業分野の社長ポジションに新卒・若手社員を登用し、20〜30代の社長を52名輩出しました。 立場を超えて経営課題を討議できる機会を設けることで、組織全体の成長を促しています。

さらに従業員エンゲージメントを向上させるために、全従業員のエンゲージメント状況の測定・社内転職制度の導入を行っています。

成功事例10. 双日株式会社

双日株式会社は、人材KPIにより人事戦略・施策を可視化させて、経営戦略と連動した人的資本経営を実現した成功事例です。

経営会議と取締役会に人材KPIの進捗を定期報告させ、役員報酬と連動させています。 2030年代に女性従業員の比率を50%程度まで向上させることを目標に、外国人人材の登用など多様性を活かすKPIを設定しました。 従業員の多様なキャリア・ライフプランを支援するため、35歳以上の従業員がジョブ型雇用で副業や多様なキャリアパスで活躍できるようサポートしています。

さらに新入社員からグループ会社の取締役までが、自らの「発想」を事業化できる組織風土を構築し、立場に関係なく事業を拡大できる体制を実現しました。

成功事例11. ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社は、多様性を重視した人事戦略や経営戦略により、人的資本経営を実現させた成功事例です。

社内募集制度や次世代リーダー育成制度、従業員同士の交流促進によって、従業員の多様化した個性を尊重した人事戦略を実行しました。 各事業のCHROが人事運営をリードし、グループ全体で人事戦略を実行することにより、組織全体の成長を促進しています。

また経営陣の業績連動報酬にエンゲージメントスコアを連動させることで、従業員エンゲージメントを向上させる施策・対策を考える機会を設けています。

成功事例12. SOMPOホールディングス株式会社

SOMPOホールディングス株式会社は、MYパーパスの追求する企業文化へ変革した人的資本経営の成功事例です。

従業員へMYパーパスを追求してもらうために、経営陣自らが従来の「会社の中の自分」から「自分の中の会社・仕事」という考え方を発信してきました。

さらに従業員に人生における理想や使命を表現したMYパーパスの策定を促しています。 従業員がMYパーパスを実現するために能動的なアクションを起こすことで、従業員エンゲージメントを向上させて企業文化を変革しました。 他にも従業員エンゲージメントを向上させるための施策として、次のようなものに取り組んでいます。

  • MYパーパス1on1の実施
  • ジョブ型人事制度の導入
  • デジタル・ワークシフト

部下と上司が定期的に1on1ミーティングを開催することで、MYパーパスの中に仕事を落とし込む自律的な働き方を支援しています。

さらにジョブ型人事制度を導入して、MYパーパスに基づいて従業員が自らキャリアを選択できる環境を整えました。 人材ポートフォリオの構築には、すべての従業員を3つのデジタル人材区分に分類したデジタル・ワークシフトを活用して、自律的なキャリア形成を促進しています。

成功事例13. 東京海上ホールディングス株式会社

東京海上ホールディングス株式会社は、戦略的な人事制度によるポートフォリオの最適化と多様な人材を連帯させるパーパス浸透によって、人的資本経営を実現させた成功事例です。

トップタレントの獲得やグローバル経営人材の育成を目的とした人事制度を導入し、中長期的なキャリア形成を実現しました。

さらにダイバーシティを拡大するために、2030年には女性管理職の割合が30%以上になるよう、場所や時間にとらわれず働ける制度を充実させています。 国内外に4万人以上の多様な従業員がいる組織内で、全従業員に共通したパーパスを浸透させるため、まじめな話を気楽にできる対話の場「マジきら会」を設置しています。 多様な価値観や柔軟な働き方をサポートするために、人事制度や運用方法を見直した人的資本経営の成功事例です。

人的資本経営の成功事例を参考に自社に合う施策を考案・実行しよう!

人的資本経営を実現させるためには、他社の成功事例を参考に自社で取り組むべき施策を実行する必要があります。

伊藤レポートで定められた3P・5Fモデルを押さえて、人的資本経営に必要な課題・目標を明確化し、求められる施策を考案しましょう。 各成功事例では、自社の目標達成や課題解消に向けた施策を実行するために、KPIを設定し中長期的

な視点で人的資本経営に取り組んでいます。 人的資本経営に取り組む際には、中長期的な経営戦略だと理解して、定期的に従業員エンゲージメントを測定しながら施策を実施してください。

RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムス編集部です。 本メディアは、「福利厚生倶楽部」の株式会社リロクラブが運営しています。 「福利厚生倶楽部」の契約社数は19,200社、会員数710万人という規模で、業界シェアNo.1を誇ります。 従業員満足を追求する人事や総務、経営者の皆様にとって少しでも有益になる情報を発信していきます。

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