人的資本経営とは?注目の背景やメリット、取り組み手順を徹底解説!
投資家の要望を満たし、従業員1人ひとりのエンゲージメントを高める施策が求められている昨今、人的資本経営が注目されています。
人的資本経営とは、従業員を資本として捉え投資対象とし、企業の価値を向上させる経営戦略です。 本記事では、人的資本経営が注目されている理由や実施するメリット・デメリット、対策例も併せて解説します。ぜひ、自社で実施すべき施策の検討・立案をすすめましょう。
目次[非表示]
- 1.人的資本経営とは?
- 1.1.従来の経営手法との方向性の違い
- 1.2.人的資本とその他の資本の違い
- 2.人的資本経営が注目されている背景
- 2.1.ダイバーシティの拡大化
- 2.2.投資の世界で無形資本の需要が高い
- 2.3.ESG投資が浸透している
- 2.4.デジタル化時代における経営戦略
- 3.人的資本経営を加速!伊藤レポートが示す3P・5Fモデルとは?
- 4.人的資本経営を行うメリット
- 4.1.従業員のスキルや特性を把握できる
- 4.2.従業員のエンゲージメントが向上する
- 4.3.生産性が向上する
- 4.4.企業のイメージアップにつながる
- 4.5.定着率の向上につながる
- 4.6.投資対象として注目されやすくなる
- 5.人的資本経営を行うデメリット
- 5.1.膨大なコストがかかる
- 5.2.長期的に取り組まなければならない
- 5.3.成果が出る確実性がない
- 6.人的資本経営において重要な「情報開示」
- 6.1.情報開示するべき19項目
- 7.人的資本経営を進めるにあたって知っておくべき重要ポイント
- 7.1.情報開示だけを目的にしない
- 7.2.人材戦略と経営戦略を関連付ける
- 7.3.企業全体で目標へ向かう
- 8.人的資本経営を行うための手順
- 8.1.経営戦略と人材戦略の紐づけを行う
- 8.2.目標と現状のギャップを可視化する
- 8.3.目標達成のためKPIを設定する
- 8.4.ギャップを埋めていく施策を実行する
- 8.5.実行した施策の効果検証をする
- 9.人的資本経営を実行するための施策例
- 9.1.人材ポートフォリオを構築する
- 9.2.ダイバーシティの促進を推奨する
- 9.3.従業員のエンゲージメントを向上させる
- 10.人的資本経営には「リロクラブ」の福利厚生サービスがおすすめ
- 11.人的資本経営を成功させて企業の生産性を向上させよう!
人的資本経営とは?
人的資本経営とは、人材を資本として企業価値を高める経営戦略です。経済産業省では、人的資本経営を次のように定義づけています。 「人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です」
つまり人的資本経営とは、従業員をコストや労働力ではなく「投資対象の資本」として捉え、育成・マネジメントをする経営方針です。優秀な人材を育成・獲得することで、企業全体の価値を向上させて投資家の注目を集めます。 人的資本経営は、労働人口が減少し競合他社と競争する立場にある企業が実施するべき経営戦略です。
従来の経営手法との方向性の違い
人的資本経営について深く理解するためには、従来の経営手法との方向性の違いを把握しておくことが大切です。 従来の経営手法と人的資本経営では、以下のように方向性が違います。
経営項目 |
従来の経営手法(Not this) |
人的資本経営(But this) |
人材マネジメントの目的 |
人的資源・管理 (人的資源の管理。オペレーション志向。「投資」ではなく「コスト」。)
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人的資本・価値創造 (人的資源の活用・成長。クリエーション志向。「投資」であり、効果を見える化。)
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アクション |
人事 (人事諸制度の運用・改善が目的。経営戦略と連動していない。)
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人材戦略 (持続的な企業価値の向上が目的。経営戦略から落とし込んで策定。)
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イニシアチブ |
人事部 (人材関係は人事部門任せ。経営戦略の紐づけは意識されず。)
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経営陣/取締役会 (経営陣のイニシアチブで経営戦略と紐づけ。取締役会がモニタリング。)
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ベクトル・方向性 |
内向き (雇用コミュニティの同質性が高く人事は囲い込み型。)
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積極的対話 (人材戦略は価値創造のストーリー。投資家・従業員に、積極的に発信・対話。)
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個と組織の関係性 |
相互依存 (企業は囲い込み。個人も依存。硬直的な文化になり、イノベーションが生まれにくい。)
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個の自律・活性化 (互いに選び合い、共に成長。多様な経験を取り込み、イノベーションにつなげる。)
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雇用コミュニティ |
囲い込み型 (終身雇用や年功序列により、囲い込み型のコミュニティに。)
|
選び、選ばれる関係 (専門性を土台にした多様でオープンなコミュニティに。)
|
引用元|経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」
2つの重要な違いは、従来の経営手法では人材を「資源」として捉えているのに対して、人的資本経営は人材を「資本」と考えている点です。
資源とは「消費されていく既存のモノ」を意味し、資本は「新しく価値を生み出すモノ」であるため、似た言葉ですが価値や重視しているポイントがまったく異なります。
従来の経営手法では、企業が従業員を囲い込み、個人が企業に依存する体制が多かったものの、人的資本経営では企業と個人がお互いを選び合い、ともに成長していく関係性が求められます。
人的資本とその他の資本の違い
人的資本経営では人材を資本と捉えますが、人的資本は「無形資本」と呼ばれる形のない資産です。無形資本には、著作権やノウハウ・スキルなどの形のない資本が該当します。
株式や借入などは「財務資本」であり、建物や設備などは「製造資本」、形がある資本は「有形資産」と呼ばれます。
Elsten and Hill(2017)によると、米国の代表的な株価指数であるS&P500に採用されている企業の市場価値を要因分解した場合、2015年時点で84%が無形資産でした。
さらに、欧州のS&P Europe350に採用されている企業の市場価値は、71%が無形資産と注目を集めています。
現在は有形資産より無形資産が注目されており、投資対象となるケースも多いです。そのため、投資家から注目される人的資本経営が推奨されており、取り組む企業が増えています。
人的資本経営が注目されている背景
人的資本経営を実施するべきか悩んでいる企業は、なぜ注目されているのか、背景を把握しておきましょう。 人的資本経営が注目されている背景は、次のとおりです。
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ダイバーシティの拡大化
-
投資の世界で無形資本の需要が高い
-
ESG投資が浸透している
- デジタル化時代における経営戦略
それぞれの要因を確認して、人的資本経営を実施すべきか検討してください。
ダイバーシティの拡大化
人的資本経営が注目されている背景には、ダイバーシティの拡大化があります。 ダイバーシティとは、人種・年齢・性別・能力・価値観などさまざまな違いを持った人々が組織内で活躍する「多様化された世界」です。
現在は、シニア世代や外国人労働者など多種多様な人材が就業しており、かつフレックスタイム制度やリモートワークの導入など、企業側が従業員個々人に合わせた向き合い方が求められます。 人的資本経営では、従業員を「資本」として扱い個々に合わせた向き合い方を貴重としているため、ダイバーシティの拡大化に対応可能です。
投資の世界で無形資本の需要が高い
人的資本経営が注目されている理由は、投資の世界で無形資本の需要が高まっているからです。 経済産業省が公表した「無形資本と経済成長」でも、世界の各国で無形資本への投資、主に研究開発Research&Development:R&D)への投資が増えていることが判明しました。 有形資産へ投資するのではなく、無形資本であるアイデアへの投資が増えており、今後も企業価値を判断する材料として注目される見込みです。
投資の世界で無形資産の需要が高まっており、企業の将来性を判断する材料として人的資本の情報開示を求めるケースが増えています。投資家が企業の将来性を判断する際に、人的資本経営のような無形資産のあり方が求められるため、企業としては経営手法を見直さなければなりません。
ESG投資が浸透している
ESG投資が浸透していることも人的資本経営が注目されている背景に関係しています。ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取ったものです。 ステークホルダーというものが企業の価値を評価する重要な項目である現代では、これらESGのサステナビリティが重視されています。
ESG投資への取り組みとして、環境に配慮したプラスチックをすべて再生プラスチックへ変える施策などが挙げられます。 他にも、リモートワークや時短労働などの企業統治・従業員の多様な働き方を優先した施策が普及しました。人的資本は「Social(社会)」と「Governance(ガバナンス)」に該当するため、人的資本経営が注目されているのです。 ESG投資が浸透している現代で、投資家たちの注目を集めるために人的資本経営を実施しましょう。
デジタル化時代における経営戦略
デジタル化の時代では、人的資本経営が重要な戦略ポイントです。 現代ではさまざまな業務が自動化されているため、人が担う役割はさらなるイノベーションや、価値の創造へと変化しています。 そのため、企業が付加価値を作り上げて維持していくためにも、従業員一人ひとりの個人を生かす戦略が重要です。人的資本経営は、デジタル化が進む時代に1つの大きなポイントとなる経営戦略といえるでしょう。
人的資本経営を加速!伊藤レポートが示す3P・5Fモデルとは?
人的資本経営が注目されるきっかけは、2020年9月に経済産業省が発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会(人材版伊藤レポート)」という報告書です。
レポート内容は、企業が将来的に成長を続けるための指針を具体的に示したもので、伊藤邦雄氏を座長に据えて作成されたため伊藤レポートと呼ばれています。 そのなかで、3P・5Fモデルという概念が生まれました。 3P・5Fモデルとは、簡単に表すと次のような意味を持ちます。
-
3Pとは「人的資本経営において欠かせない3つの視点」
- 5Fとは「人的資本経営において欠かせない5つの要素」
引用元|経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」
経済産業省が公開した「人材版伊藤レポート2.0」では、人的資本経営を成功させるためのポイントとして3P・5Fの重要性が説明されています。 人的資本経営のポイントとなる3P・5Fモデルについて解説するため、確認して人的資本経営を成功させましょう。
3Pとは「人的資本経営において欠かせない3つの視点」
3Pとは「人的資本経営における3つの視点」を指します。3Pで必要となる3つの項目は、次のとおりです。
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経営戦略や人材戦略と連動しているか
- ビジネスモデルや経営戦略が現時点での人材戦略に与えるギャップを把握しているか
- 組織や個人の行動が反映され企業文化としての定着しているか
人的資本経営では、経営戦略と人材戦略を連動させ、経営戦略を実施することで人材戦略に与える影響を把握する必要があります。 さらに組織だけでなく従業員1人ひとりの行動が反映され、企業の風土として定着させることが重要です。
5Fとは「人的資本経営において欠かせない5つの要素」
5Fとは「人的資本経営において欠かせない5つの要素」を指します。5Fで重要となる5つの要素とは、次のとおりです。
-
人的資本経営が多種多様な人材が活躍できる環境を構築できているか
- 人の多様性が対話やイノベーション、事業のアウトプットにつながる環境であるか
- 目標としている将来と現代のギャップを埋めれているか
-
多種多様な人材が個を主張し意欲的に活動しているか
- 時間や場所にとらわれない働き方ができているか
ダイバーシティに対応する多種多様な人材の就業、また従業員1人ひとりが個を主張し、テレワークやフレックスタイム制度などを視野に入れながら高いモチベーションで活動できる環境が必要です。 人的資本経営を実施する際には、3P・5Fモデルを意識して施策に取り入れましょう。
人的資本経営を行うメリット
人的資本経営を行うと、企業と従業員どちらにとってもさまざまなメリットが得られます。人的資本経営に取り組むべきか悩んでいる企業は、次のメリットを確認し、実施を検討しましょう。
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従業員のスキルや特性を把握できる
- 従業員のエンゲージメントが向上する
- 生産性が向上する
-
企業のイメージアップにつながる
- 定着率の向上につながる
- 投資対象として注目されやすくなる
それぞれのメリットを理解して、人的資本経営の取り組みをスタートさせることが成功の鍵です。
従業員のスキルや特性を把握できる
人的資本経営を行うと、従業員のスキルや特性を把握できます。 人的資本経営では、従業員を「資本」として人材教育・育成を行い、企業価値を高めます。
人材教育を行う過程で、従業員1人ひとりに合ったパーソナライズした育成プランが必要であり、個々のスキルや特性を把握しなければなりません。
育成プランの構築・教育実習を行う過程で、従業員1人ひとりがどのようなスキル・特性を持っているか、把握することが可能です。従業員のスキル・特性を把握できれば、個々のパフォーマンスを最大限発揮できる人員配置を実現できます。
従業員のスキル・特性を正確に把握することは、企業の生産性向上へつながるメリットです。
従業員のエンゲージメントが向上する
従業員のエンゲージメントが向上することもメリットのひとつです。
人的資本経営は人材育成に注力するため、従業員からすると「自分たちの成長に力を入れてくれている」と認識し、その結果としてエンゲージメントが向上します。 エンゲージメントが向上した状態で仕事に取り組むと、高いパフォーマンスを発揮でき、生産性の向上が期待できます。
従業員が高い意欲で仕事に取り組み、組織全体を活性化させる企業風土は、投資家から見ても魅力的に映ることでしょう。
生産性が向上する
人的資本経営を行うと、さまざまな要因から生産性の向上が期待できます。
人的資本経営は、人材育成により従業員1人ひとりのスキルを向上させるため、個々が行うパフォーマンスが高くなります。その結果として生産性の向上につながるでしょう。さらに従業員をスキルアップ・成長させることで、中途採用や外部からの人材供給を必要とせず、採用活動にかけるコスト・リソースを削減できます。
そのため、自社の従業員を高スキルな人材へと育成し、企業と個人がお互いに成長し合う環境を実現できるのです。
企業のイメージアップにつながる
人的資本経営を行うメリットは、企業のイメージアップにつながることです。
従業員のスキルアップに注力し個々を尊重する経営方針は、魅力的な企業風土を構築します。 求職者からすると「ここで働きたい」と思える企業イメージが定着し、応募率・採用率の向上へつながります。さらに顧客や社会からすると、従業員を大切に扱う優良企業のイメージが定着するため、売上・契約率を向上できる可能性が高いです。
人的資本経営は従業員のスキル・モチベーションを向上させるだけでなく、企業のイメージアップにつながるブランディング戦略でもあります。
定着率の向上につながる
人的資本経営を行えば、定着率の向上につながります。
人的資本経営は、従業員の育成に力を入れ、従業員にとってスキルアップや成長ができる恵まれた環境です。多種多様な人材・働き方を認め、個々のスキルを成長させるため、経営層が従業員と真摯に向き合う体制は従業員にとって働きやすいでしょう。 自分のスキルアップにつながり個々を尊重してもらえる企業では、エンゲージメントを高めて意欲的に活動できます。そのため、従業員は「この企業で働きたい」と考えるようになり、離職率の減少が期待できるでしょう。
離職率の減少は定着率の向上へとつながるため、人的資本経営は人材獲得・定着ができる経営手法です。
投資対象として注目されやすくなる
人的資本経営を行うメリットは、投資対象として注目されやすくなることです。
現在はESG投資が注目され、無形資本である人的資本が重要視されています。そのため、人的資本経営を実施している企業は、投資家にとって将来性のある優良企業だと判断される可能性が高いです。 投資対象として注目され投資額が増大すれば、商品・サービスの開発や営業戦略に費やす予算が増えて、より高精度なサービスを提供できます。
人材への投資もより充実させられるため、投資対象として注目されることは、企業の将来性を高める重要な要素です。 企業の売上・将来性を高めるため、人的資本経営を実施して投資家からの注目を集めましょう。
人的資本経営を行うデメリット
人的資本経営を行うとさまざまなメリットを得られますが、同時にデメリットも発生します。人的資本経営を行うデメリットは、次のとおりです。
-
膨大なコストがかかる
- 長期的に取り組まなければなりない
- 成果が出る確実性がない
それぞれのデメリットを確認して、メリットとあわせて導入を検討してください。
膨大なコストがかかる
人的資本経営を行うデメリットは、膨大なコストがかかることです。
人的資本経営では人材を資本として考えているため、人材育成に力を入れます。そのため、人材育成プログラムや組織風土の強化費用、人的資本を評価・分析するツールやシステムの導入・利用料が発生するのです。自社に人的資本経営の知識・スキルがある人材が不足している場合は、外部の企業からアウトソーシングを検討しなければなりません。
人的資本経営は、人材が成長してから生産性や企業イメージの向上が期待できますが、初期投資・運用費に膨大なコストが発生してしまいます。
長期的に取り組まなければならない
人的資本経営を成功させるためには、長期的に取り組まなければなりません。
従業員1人ひとりのスキル・特性を把握して、個々に合った人材育成プログラムを作成する必要があり、人的資本経営を実現するまでに膨大な時間がかかります。 さらに個々を正当に評価するため、終身雇用や年功序列といった従来の企業風土がある場合にはそれらを一掃して作り直す必要があるため、長期的に取り組まなければ人的資本経営を実現できません。
人的資本経営は、コストだけではなく膨大な時間がかかる長期的な経営戦略であることを理解しておきましょう。
成果が出る確実性がない
人的資本経営を行うデメリットは、成果が出る確実性がないことです。
膨大なコストと時間が必要な人的資本経営ですが、長期的に取り組んでも従業員から反発され、成果が出ないケースもあります。 組織文化や体制を改善し教育制度までも作り変える人的資本経営は、従来の方法に馴染んでいる従業員から反発を買いやすいです。さらに自社にあった施策が見つからず、失敗続きで成果が出ない可能性があります。
成果が出る保証がない不確実なリスクこそ、人的資本経営に取り組むデメリットです。
ただし、人的資本経営は組織内の人材を資本と捉えて、成果が出れば企業にとって大きく貢献する施策です。成果が出る確実性はありませんが、施策の効果を都度検証しながら改善・見直しを行って、人材資本経営を成功させましょう。
人的資本経営において重要な「情報開示」
人的資本経営の重要な取り組みの中に、人的資本の情報開示があります。 人的資本の情報開示とは、企業内の従業員価値や個人の能力、企業文化など非財務情報を公開することです。情報開示が求められる理由は以下のとおりです。
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人的資本の価値向上
- ESG投資への関心の高まり
無形資産である人に対して企業価値向上につながる力があることが、企業や投資家に広まったことが大きいポイントです。
また、ESG投資を行う際の判断材料としても、情報開示が求められています。 人的資本の情報開示の義務化は、2023年3月期決算から始まり、大手企業4000社を対象として義務化が始まっています。 人的資本の情報開示をすることは、投資家や取引先などのステークホルダーが企業の持続性や将来性を理解するための重要なポイントといえるでしょう。
情報開示するべき19項目
開示情報には、明確なルールや基準は設けられていません。 ただし、開示が望ましいとされるポイントがあるため、下記で紹介します。
人材育成 |
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エンゲージメント |
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流動性 |
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ダイバーシティ |
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健康・安全 |
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労働慣行 |
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倫理 |
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参考:人的資本可視化指針|非財務情報可視化研究会 上記の19項目を参考にしながら、情報開示を進めましょう。
人的資本経営を進めるにあたって知っておくべき重要ポイント
本章では、人的資本経営を進める際の重要なポイントを紹介します。 主なポイントは下記の3つです。
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情報開示だけを目的にしない
- 人材戦略と経営戦略を関連付ける
- 企業全体で目標へ向かう
それぞれ解説します。
情報開示だけを目的にしない
1つめは、情報開示だけを目的にしないことです。
情報開示をするためだけにデータ収集や集計を行ってしまうと、そもそもの人的資本経営の目的から離れてしまいます。「人材」という資本の価値を最大限に引き出すための施策であると認識し、その上で情報開示などの施策を実行することがポイントです。
人材戦略と経営戦略を関連付ける
人材と経営の2つの戦略を紐づけて方針を固めることがポイントです。
例えば、従業員の教育や育成を担う人材戦略を定める際は、中長期的な経営戦略を定めた上で、経営戦略を実現するために必要な人材戦略を策定していく必要があります。 それぞれを独立して考えず、経営戦略を成功させるための、1つとして人材戦略のプロセスを組み立てていきましょう。
企業全体で目標へ向かう
最後は、企業全体で目標を達成させる意識を持つことです。
人的資本経営に関するさまざまな施策は、人事部や担当部署など一部のチームだけが担当するわけではありません。財務や広報、営業などあらゆる部門間で目標を共有し、達成に向けて施策を実行することが大切です。従業員に関する施策は人事部の担当だという認識は捨てて、企業全体の課題として共通認識を広めていきましょう。
人的資本経営を行うための手順
人的資本経営を行うためには、正しい手順を把握しておくことが大切です。「どのような手順で取り組むべきか」を悩んでいる方は、人的資本経営を行うために次の手順を確認しておきましょう。
-
経営戦略と人材戦略の紐づけを行う
- 目標と現状のギャップを可視化する
- 目標達成のためKPIを設定する
-
ギャップを埋めていく施策を実行する
- 実行した施策の効果検証をする
それぞれの手順を解説するため、具体的な進め方を把握して人的資本経営を成功させてください。
■参考記事;人的資本経営の成功事例13選|実現させるための具体的な施策まで徹底解説!
経営戦略と人材戦略の紐づけを行う
人的資本経営を始めるには、経営戦略と人材戦略の紐づけを行う必要があります。
3Pの「人的資本経営における3つの視点」で解説したとおり、人的資本経営は経営戦略と人材戦略を連携させることが重要です。 例えば「離職率の高さ」が経営課題の場合は、人材戦略として「マネジメント力の高い人材の獲得・育成」や「労働環境の見直し・改善ができる人材の配置・獲得」が求められます。
人的資本経営を成功させるため、まずは自社の優先課題を明確化し、経営戦略と人材戦略を紐づけた施策を構築しましょう。
目標と現状のギャップを可視化する
人的資本経営を実施する次のステップは、目標と現状のギャップを可視化することです。
人的資本経営を成功させて到達する目標を定めて、現状と比較しギャップを洗い出しましょう。 目標と現状のギャップを可視化できれば、目標達成のために実施すべき行動・施策を浮き彫りにできます。
目標達成のために現状を正しく分析・可視化して、目標とのギャップを把握しておいてください。
目標達成のためKPIを設定する
目標と現状のギャップを可視化できたら、目標達成のためKPIを設定しましょう。
KPIとは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」の意味合いを持ち、目標を達成するためプロセスを細分化し、それぞれの達成度を計測・分析する手法です。 目標を達成するために「何が必要か」「何から取り組むべきか」のように必要なプロセスを書き出し、KPIを設定していきます。
KPIを設定することで実施すべき施策を考案できるため、先に定めたKGI(重要目標達成指標)達成に必要なKPIを設定しましょう。
ギャップを埋めていく施策を実行する
目標達成のためにKPIを設定できたら、ギャップを埋めていく施策を実行しましょう。
実際に施策を実行していく過程で、従業員から反感を買ったり思い通りに成果が出なかったりと、トラブルが生じる可能性があります。施策を円滑に実行していくために、トラブルが生じた際の対策を事前に考案しておくとスムーズに人的資本経営を行なうことができます。
人的資本経営を成功させるため、KPIを達成する施策を実行していきましょう。
実行した施策の効果検証をする
人的資本経営を成功させるためには、施策を実行するだけでは不十分です。
施策を実行する際には、PDCAを意識する必要があります。 「PDCAの4つのポイント」
-
Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
施策を「Plan(計画)」し「Do(実行)」してから、効果検証する「Check(評価)」の工程が必要です。 さらに効果検証によって得られたデータをもとに、施策を「Action(改善)」して人的資本経営を成功へ導きましょう。
人的資本経営を実行するための施策例
人的資本経営を実行するための施策を立案する際に「どのような施策を実行すべきか」を悩んでしまうでしょう。 施策を考案する段階で悩んだ際には、次の施策例を参考にしてください。
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人材ポートフォリオを構築する
- ダイバーシティの促進を推奨する
- 従業員のエンゲージメントを向上させる
いずれも人的資本経営を成功させるために、重要な施策です。それぞれの施策例を紹介するため自社に必要な施策を考案しましょう。
人材ポートフォリオを構築する
人的資本経営を実行するための施策例として、人材ポートフォリオの構築が挙げられます。人的資本経営を成功させるには、自社に必要な人物像を明確化した人材ポートフォリオが必要です。
従業員のスキル・特性の把握や、雇用するターゲット層を明確化するため、人材ポートフォリオを構築しましょう。
人材ポートフォリオには、次のような項目を記載しておくと一目で人材のスキル・特性を把握できます。
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職種
- スキル
- 特性
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年齢
- 入社日
- 性別
「どのような人材が必要か」の人材ポートフォリオを構築して、求める人物像を明確化しましょう。
採用活動を行う際には、人材ポートフォリオに沿って獲得するべき従業員の人数や必要スキルを確認しておくと、自社の組織力を向上できます。
ダイバーシティの促進を推奨する
人的資本経営を実行するための施策として、ダイバーシティの促進を推奨する方法があります。
人的資本経営では、多種多様な人材がさまざまな働き方で就業する組織を構築するため、ダイバーシティを促進する施策が必要です。採用活動を見直したりテレワークやフレックスタイム制度を導入したり、従来の固定概念にとらわれない施策が求められます。
外国人労働者やフリーランス・非正規雇用の人材獲得など、ダイバーシティを促進する活動を実施しましょう。
従業員のエンゲージメントを向上させる
人的資本経営を実行するため、従業員のエンゲージメントを向上させる施策を実施しましょう。
従業員のエンゲージメントを向上させる施策として、次のような取り組みが効果的です。
- 健康経営の促進
- 福利厚生の充実
従業員の健康維持・増進を促進する「健康経営」を実施すれば、自社の従業員を大切に扱う施策として、組織内のエンゲージメント向上につながります。心身ともに健康な状態を維持・増進できれば、モチベーションの高い状態でパフォーマンスを発揮できるため、生産性・エンゲージメント向上が可能です。 さらにカフェテリアの設置や育休・特別休暇の取得促進・託児所の設置など、従業員がリフレッシュして働きやすい福利厚生を充実させましょう。
福利厚生が充実している企業であれば、従業員がのびのびとワーク・ライフ・バランスの促進をして、エンゲージメントの向上が期待できます。 健康経営や福利厚生が充実すれば、従業員のエンゲージメントを向上させて高いパフォーマンスを発揮できます。
人的資本経営には「リロクラブ」の福利厚生サービスがおすすめ
人的資本経営には、従業員のエンゲージメント向上が必要不可欠です。人的資本経営を実現するため、リロクラブの福利厚生サービスを活用しましょう。
福利厚生や健康経営を充実させることで、従業員が働きやすく意欲的に活動できる組織風土を構築できるため、人的資本経営の実現につながります。
リロクラブでは導入企業数19,200社以上の、福利厚生サービスを提供しており、低コストで充実した福利厚生を実現できます。
さらに健康経営をサポートするための、健康支援アプリや健康診断代行・メンタルヘルスチェックなども提供していますので、人的資本経営を実現したい方はぜひご相談ください。
人的資本経営を成功させて企業の生産性を向上させよう!
人的資本経営を成功させれば、企業の生産性を向上させられます。 人的資本経営は、従業員の育成・エンゲージメント向上を行い、最大化したパフォーマンスで高い生産性を実現します。
人材ポートフォリオの構築や従業員のエンゲージメント向上など、実施すべき施策はさまざまですが、まずは経営戦略と人材戦略を紐づけた課題解明・目標設定が必要です。 この記事で紹介した人的資本経営を行うための手順を参考に、自社で取り組むべき施策を立案しましょう。従業員のエンゲージメントを向上させる施策を実施したい場合は、リロクラブの福利厚生サービスがおすすめです。
顧客満足度の高い福利厚生アウトソーシングサービスで、自社のリソースを使わずに従業員のエンゲージメントを向上させられます。