メンタルヘルス対策の基本|知っておきたい「3つの段階」と「4つのケア」

メンタルヘルス対策の基本|知っておきたい「3つの段階」と「4つのケア」

健康経営に欠かせないメンタルヘルス対策。企業の経営にとってメンタルヘルス対策の遅れは、大きな損失や業績悪化につながるため、早めの対応が必要です。メンタルヘルス対策の基本的な考え方である「3つの段階」と「4つのケア」を理解し、労働者のメンタルヘルス不調の早期発見・早期対処を心がけましょう。

メンタルヘルス対策はリスクマネジメントの一種

メンタルヘルス対策はリスクマネジメントの一種

メンタルヘルス対策は健全な組織運営と切り離せません。メンタルヘルスの対策方法についてみていく前に、まずはメンタルヘルスの重要性を確認しておきましょう。

重要性を増す「メンタルヘルス」とは?

そもそも、メンタルヘルスとは「心の健康状態」をあらわす言葉です。厚生労働省は、メンタルヘルス(心の健康状態)の不調を以下のように定義しています。

“精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう”

引用:労働者の心の健康の保持増進のための指針|厚生労働省(PDF資料)

メンタルヘルス不調というと、うつ病や適応障害などの精神疾患をイメージするかもしれませんが、ストレスや強い悩み、不安感といった病名が付かない精神状態も含まれています。

近年、うつ病などの精神障害の労災請求および認定件数は増加傾向にあります。2018年度の精神障害の労災補償請求件数は1,820件で、前年度比88件増加でした。このような現状から、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が増しています。

職場の活力や生産性を左右するメンタルヘルス

労働者の心の健康状態は、組織全体の活力や生産性に影響を与えます。

なぜなら、メンタルヘルス不調になると脳の機能が低下し、集中力や判断力のほか、ものごとに対する意欲や好奇心も低下するからです。職場にメンタルヘルス不調者が増えて個々の仕事の質が落ちれば、組織全体の活力が失われ、生産性が低下してしまうのは当然のことです。

対策が遅れると業績低下のリスクも

2019年に厚生労働省が公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、職場や仕事で不安やストレスを感じたことがある労働者の割合は58.0%でした。

職場で約6割の人が何らかのメンタルヘルス不調を抱えているということは、それだけ精神疾患による休職・離職につながる可能性があることを意味しています。生産性が低下するだけではなく、休職や離職は労働力不足となり、事業全体の業績低下にもつながりかねません。

このようなリスクを踏まえると、メンタルヘルス対策は労働者一人ひとりの心の健康状態にとどまらず、経営のリスクマネジメントの一種と捉えるべきでしょう。労働環境の改善も含め、事業者によるメンタルヘルス対策の積極的推進が重要になってきます。

メンタルヘルス対策の基本的な考え方

メンタルヘルス対策の基本的な考え方

職場のメンタルヘルス対策には「3つの段階」があり「4つのケア」が効果的だと考えられています。これらはメンタルヘルス対策を推進するうえでの土台となるため、基本概要を知っておきましょう。

メンタルヘルス対策における「3つの段階」

「3つの段階」とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、1次予防・2次予防・3次予防に分かれています。各段階の考え方を確認しましょう。

1次予防【未然に防ぐ】

ストレスによってメンタルヘルスに不調をきたす前に予防する段階です。労働者が各自で行うストレス緩和ケアのほか、労働環境の改善もこの段階に含まれます。

主に、ストレスマネジメント研修やストレスチェック制度の導入などにより、労働者一人ひとりのメンタルヘルスに対する意識を高めていきます。

2次予防【早期発見】

2次予防では、メンタルヘルスに不調があらわれた労働者を早めに発見して適切な措置を行う段階です。

本人が不調に気づいたときに自発的に相談できる相談窓口の設置や、産業医との面談機会を設けることなどが主な施策です。メンタルヘルス専門の外部サービスとの連携も効果的です。同僚や管理監督者も異変にいち早く気づき、気兼ねなく相談できる職場風土を目指します。

3次予防【職場復帰支援】

メンタルヘルス不調によって休職した労働者の職場復帰をサポートする段階です。休職による不安や焦りを緩和させるための精神的なフォローや、復帰後に無理をさせないような仕事面のケアなどを行います。

3次予防をおろそかにすると再発や離職につながるため、慎重なフォローが求められます。

求められる「4つのケア」

「3つの段階」で教育研修や制度の導入、情報提供、労働環境の改善に取り組みながら、「4つのケア」を継続的かつ計画的に行うことが重要です。

「4つのケア」は、厚生労働省が2015年に公表した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(改正)で示されたものですので、ポイントを押さえておきましょう。

セルフケア【個人】

セルフケアは労働者自身でストレスを予防し、気づいたときに適切に対処することです。セルフケアは正しい知識がないとうまく対処できないため、事業者は労働者への情報提供や教育研修によりサポートします。ストレスへの気づきを促すためには、ストレスチェックの実施も有効です。

ラインによるケア【管理監督者】

ラインによるケアは、管理監督者が職場のストレス要因を把握して改善することです。管理監督者は部下である労働者の相談に乗り、必要に応じて労働環境等の改善を行うなどの対応をします。

事業場内の産業保健スタッフ等によるケア【事業場全体】

事業場内の産業保健スタッフ等によるケアは、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフ等による支援です。セルフケアおよびラインによるケアの実施をサポートします。個々のケースを支援だけではなく、メンタルヘルス関連の教育研修の企画・実施や労働者からの相談等を受けることができる制度及び体制を整えることなども行います。

事業場外資源によるケア【外部連携】

事業場外資源によるケアは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。事業場内での相談を希望しない労働者のケアや、企業が抱えるメンタルヘルスの課題を外部の専門的な知識を有する資源の支援により解決したい場合に効果的です。

「3つの段階」の取り組みと「4つのケア」を継続的かつ計画的に実施することができれば、労働者のメンタルヘルス不調を防ぎ、発生時も適切に対処できるでしょう。

メンタルヘルス対策 有効な4つの取り組み

メンタルヘルス対策 有効な4つの取り組み

メンタルヘルス対策にはさまざまな選択肢があるため、「何から始めればよいか分からない」という人は多いのではないでしょうか。

厚生労働省は、2015年の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(改正)においてメンタルヘルスケア(労働者の心の健康の保持増進のための措置)の基本的考え方を公表しました。その中で、有効な取り組みとして推奨されている4つの取り組みを紹介します。

有効な取り組み1.ストレスチェック制度

ストレスチェック制度とは、ストレスチェック及びその結果に基づく面談指導の実施、集団ごとの集計・分析等、事業場における一連の取り組みのことです。ストレスチェック制度の中心になるストレスチェックは、労働者のストレスレベルを判定するアンケート形式の検査です。

このストレスチェック実施により、労働者自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調の予防を図ります。検査結果は本人に通知され、自身によるストレスケアにつなげるほか、職場全体のデータを分析して労働環境の改善に役立てることもできます。

メンタルヘルス対策は予防から!ストレスチェックの効果と実施方法

メンタルヘルス対策は予防から!ストレスチェック実施の効果と実施方法

企業のストレスチェック実施は2015年に義務化されました。労働者数50人未満の事業場では努力義務となっていますが、中小企業ほどメンタルヘルス対策は遅れがちですので、早めの導入・実施をおすすめします。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合をみると、事業所規模1,000人以上の事業所では99.7%がメンタルヘルス対策に取り組んでいる一方、事業所規模29人以下の事業所では51.6%と、メンタルヘルス対策の取り組みに大きな差があります。

しかし中小企業には「法令にしっかり対応したいけれどマンパワーが足りない」といった人的リソース不足やコスト負担の問題があります。そこでおすすめするのは、ストレスチェック実施業務のアウトソーシングです。ストレスチェック実施に係るアウトソーシングサービスは、いくつかあります。ここでは4社を紹介します。

リロクラブ「メンタルヘルスケアサービス」

リロクラブ「メンタルヘルスケアサービス」

福利厚生パッケージサービス「福利厚生倶楽部」を提供しているリロクラブの「メンタルヘルスサービス」。4つのメニューで構成されており、各社の課題やニーズにあわせたストレスチェックの実施が可能です。ストレスチェックに関する法令への対策も万全です。しかも、ストレスチェックに関連する業務をシステム化できるので、企業の担当者の事務的な手間や心理的負担を軽減できます。

特徴
ウェブ版&紙版 両方対応、豊富なバリエーション、カスタマイズ
料金・基本利用料:お問い合わせください
・ウェブ版価格:お問い合わせください
・紙版価格:お問い合わせください

NEC VALWAY「メンタルヘルスケアサービス」

NEC VALWAY「メンタルヘルスケアサービス」

NEC VALWAYの「メンタルヘルスサービス」。NEC独自の職場分析詳細レポートを出力でき、職場間比較や経年比較を直観的なグラフで確認することができます。それぞれの職場が抱えているストレス状況を詳細に分析できるため、的確な改善施策の立案に役立てることができます。

特徴
ウェブ版&紙版 両方対応、NEC独自の職場分析詳細レポート、提携医療機関への紹介
料金 ・基本利用料:20,000円(別途、設定料10,000円)
・ウェブ版価格:500円(/ ID)
・紙版価格:600円(/ ID)

ケミカル同仁「iStress(アイストレス)」

ケミカル同仁「iStress(アイストレス)」

ケミカル同仁の「iStress(アイストレス)」。企業ごとに専任の担当医師がサポートにつき、豊富な経験と知識にもとづいてサービス提供をしています。従業員の氏名・メールアドレスといった個人情報を使用しないので、個人情報が保護され、担当者や従業員も安心してストレスチェックを実施できます。

特徴
ウェブ版&紙版 両方対応、直感的な集団分析が可能、専任の担当医師がサポート
料金・基本利用料:10,000円(/事業所)
・ウェブ版価格:200円(/ 人)
・紙版価格:600円(/ 人)

ここむ「COCOMUストレスチェック支援サービス」

ここむ「COCOMUストレスチェック支援サービス」

ここむの「COCOMUストレスチェック支援サービス」。ストレスチェックの専門家と職場のメンタルヘルス対策に精通する専門職によるチーム体制で、ストレスチェック制度有効化と職場環境改善を、総合的に支援しています。2011年のストレスチェック支援サービス開始以来、のべ1,000社(団体)以上の実績があります。

特徴
ウェブ版&紙版 両方対応、日本全国1,000社以上への支援実績、個人情報保護
第三者認証制度「JAPHICマーク」を取得
料金・基本利用料:20,000円(/社)
・ウェブ版価格:~300円(/ 人)
・紙版価格:~600円(/ 人)
ストレスチェック制度とは?企業に課される義務と実施方法

ストレスチェック制度とは?企業に課される義務と実施方法

有効な取り組み2.産業医との連携

労働者の健康管理を担う産業医や産業保健の専門スタッフとの連携も効果的です。

労働安全衛生法では、労働者が50人以上いる事業場に産業医を選任することが義務づけられていて、50人未満の場合は努力義務となっています。

産業医の主な役割は、健康診断の実施・結果への対処、長時間労働者の面接指導やストレスチェックの実施などです。病気の診断や薬の処方はせず、適切な医療機関の紹介や休職者の復職判断などにより労働者の心身の健康をサポートします。

また、後述する4つのケアをサポートする産業保健スタッフがいると、メンタルヘルスケアが実行しやすくなるでしょう。

有効な取り組み3.従業員支援プログラム(EAP)

従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)は、企業のメンタルヘルスケアをサポートするサービスのことです。

産業医や産業保健スタッフのように企業に常駐する「内部EAP」に対し、企業と連携して対策を行う外部機関やサービスを「外部EAP」と呼びます。外部EAPはストレスチェックの実施や復職支援プログラムなどの幅広い専門サービスを提供し、メンタルヘルスケアを推進します。

有効な取り組み4.ストレスマネジメント研修などの教育活動

ストレスマネジメント研修は、小規模事業場でも導入しやすい取り組みです。メンタルヘルスの重要性や基礎知識を労働者及び管理監督者に教育し、意識向上やメンタルヘルス不調の予防につなげることができます。啓蒙はリーフレットやDVDなどの各種媒体でも可能です。また、外部機関・サービスにアウトソーソシングすることも効果的です。

まとめ

健全な組織運営と切り離せない労働者のメンタルヘルス対策。労働者のメンタルヘルス不調は、仕事の質・生産性、しいては業績にまで影響を与えるため、早めの基本対策が必須。

メンタルヘルス対策における3つの予防段階は、以下。

  • 未然に防ぐ1次予防
  • 早期に発見し、適切な措置を行う2次予防
  • 職場復帰を支援する3次予防

それぞれの段階で予防・対処をしながら、4つのケアを行う。

  • 労働者個人で行うセルフケア
  • 管理監督者が部下に行うラインによるケア
  • セルフケアやラインによるケアをサポートする産業保健スタッフ等によるケア
  • 外部の機関やサービスを活用した事業場外資源によるケア

メンタルヘルス対策の有効な4つの取り組み。

  • ストレスチェック制度
  • 産業医や産業保健の専門スタッフとの連携
  • 従業員支援プログラム
  • ストレスマネジメント研修などの教育活動

健康経営は、労働者の身体の健康保持増進だけにとどまりません。労働者の心の健康状態(メンタルヘルス)を健全に保つことも重要です。メンタルヘルスの対策には基本があります。義務化されたストレスチェックの実施は、ストレスへの気づきや予防策、職場環境等の分析・対策に効果的な「基本」です。

まずは基本を徹底することで労働者一人ひとりの心の健康を考えることが、健康経営の第一歩です。労働者の健全な肉体と健全な精神という土台を作って、健全な組織運営・生産性の高い組織を目指しましょう。

メンタルヘルス対策と組織改善
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