メンタルヘルスに有効な取り組みとは?メリットと4つのケアを徹底解説!
労働者の過労やストレスが問題になっている現代、「健康的に働きたい」という願望はすべての労働者に共通するものです。労働環境に関連する法整備が進む今日において、労働者のメンタルヘルスケアの推進は必須です。企業の経営にとって労働者のメンタルヘルス不調は、大きな損失や業績悪化につながるため、早めの対応が必要となります。
今回はメンタルヘルスケアに積極的に取り組みたい経営者や管理監督者、総務人事部門の担当者に向け、企業で導入すべき基本的なメンタルヘルスケアを網羅的に解説します。
メンタルヘルスケアの基本的な考え方である「3つの段階」と「4つのケア」を理解し、労働者のメンタルヘルス不調の早期発見・早期対処を心がけましょう。
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目次[非表示]
- 1.メンタルヘルスケアはリスクマネジメントに欠かせない
- 2.メンタルヘルスケアに有効な4つの取り組み
- 2.1.有効な取り組み1.ストレスチェック制度
- 2.2.有効な取り組み2.産業医との連携
- 2.3.有効な取り組み3.従業員支援プログラム(EAP)
- 2.4.有効な取り組み4.ストレスマネジメント研修などの教育活動
- 3.メンタルヘルスケアの基本的な「3つの段階」
- 3.1.一次予防【未然に防ぐ】
- 3.2.二次予防【早期発見】
- 3.3.三次予防【職場復帰支援】
- 4.企業に求められる「4つのケア」
- 4.1.セルフケア【個人(労働者)】
- 4.2.ラインによるケア【管理監督者】
- 4.3.産業保健スタッフ等によるケア【事業場全体】
- 4.4.事業場外資源によるケア【外部との連携】
- 5.メンタルヘルスケアを積極的に推進する企業側のメリット
- 6.メンタルヘルスケアの具体的な取り組み例
- 6.1.メンタルヘルスに関するノウハウ教育する
- 6.2.ラインケアを強化する
- 6.3.ストレスチェックを強化する
- 6.4.コミュニケーションを活性化させる
- 6.5.メンタルヘルス対策専門の部署を設立する
- 7.メンタルヘルスケアを充実させている企業の好事例5選
- 7.1.三菱電線工業株式会社
- 7.2.ヤフー株式会社
- 7.3.株式会社八天堂
- 7.4.ダイハツ工業株式会社
- 7.5.株式会社ベネッセコーポレーション 東京本部
- 8.テレワークにおけるメンタルヘルスケア
- 8.1.テレワークの問題点
- 8.2.テレワークにおける具体的なメンタルヘルスケア
- 9.まとめ
メンタルヘルスケアはリスクマネジメントに欠かせない
労働者のメンタルヘルスケアは健全な組織運営と切り離せない一方、「そもそもメンタルヘルスとは何?」という人もいます。
労働者の心の健康の保持増進のための措置(以下、メンタルヘルスケア)について具体的な解説をしていく前に、まずはメンタルヘルスの重要性を一度確認しておきます。
重要性を増すメンタルヘルスとは?
そもそも、メンタルヘルスとは「精神面における健康」や「心の健康状態」を表す言葉です。世界保健機関(WHO)は、メンタルヘルスの不調を以下のように定義しています。
“「すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処し、生産的かつ効果的に働き、コミュニティに貢献することができる健全な状態”
引用:日本看護協会「メンタルヘルス Mental Health」
メンタルヘルス不調というと、うつ病や適応障害などの精神疾患をイメージするかもしれませんが、ストレスや強い悩み、不安感といった病名が付かない精神状態も含まれています。
近年、うつ病などの精神障害の労災請求および認定件数は増加傾向にあります。2023年度の精神障害の労災補償請求件数は2,683件で、5年前の1820件と比べると863件の増加でした(147.4%)。このような現状から、労働者に対するメンタルヘルスケアの重要性が増しています。
参照:令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省
職場の活力や生産性を左右する労働者のメンタルヘルス
労働者の心の健康状態は、組織全体の活力や生産性に影響を与えます。 メンタルヘルス不調になると脳の機能が低下し、集中力や判断力のほか、ものごとに対する意欲や好奇心も低下します。
こうしたメンタルヘルス不調者が職場に増えて個々の仕事の質が落ちれば、組織全体の活力が失われ、生産性が低下してしまうのは当然のことです。
なお、メンタルヘルスの基本情報については、別ページでも詳しく解説をしています。
企業におけるメンタルヘルスケアの必要性や、メンタルヘルス対策に有効なストレスチェックなどを知りたい方は、こちらをあわせてご覧ください。
企業のメンタルヘルス対策|ストレスの原因や影響・事例3選も紹介
メンタルヘルスケアを推進しないと業績低下のリスクも
2023年に厚生労働省が公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、職場や仕事で不安やストレスを感じたことがある労働者の割合は82.2%でした。
職場で8 割以上の労働者が強いストレスを感じているということは、それだけ精神疾患による休職・離職につながる可能性があることを意味しています。
参照:令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況|厚生労働省(PDF資料)
労働者のメンタルヘルス不調は休職や離職による労働力不足だけではなく、労働力不足が引き金になって生産性の低下、事業全体の業績低下にもつながりかねません。
このようなリスクを踏まえると、メンタルヘルスケアは労働者一人ひとりの心の健康状態にとどまらず、経営のリスクマネジメントの一種と捉えるべきです。 労働環境の改善も含め、事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要になってきます。
2015年から、常時50人以上の労働者を使用する事業所はストレスチェックの実施が義務化されています。そのような背景もあり、企業のメンタルヘルスケアをサポートするサービスも少なくありません。
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メンタルヘルスケアに有効な4つの取り組み
メンタルヘルスケアの実施にはさまざまな選択肢があります。
そのため、経営者・総務人事部門の担当者の中には「何からはじめればよいかわからない」という人は多いのではないでしょうか。 厚生労働省は、2015年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(改正)においてメンタルヘルスケアの基本的考え方を公表しました。
その中で、有効な取り組みとして推奨されている4つの取り組みを紹介します。
- 有効な取り組み1.ストレスチェック制度
- 有効な取り組み2.産業医との連携
- 有効な取り組み3.従業員支援プログラム(EAP)
- 有効な取り組み4.ストレスマネジメント研修などの教育活動
有効な取り組み1.ストレスチェック制度
ストレスチェック制度とは、ストレスチェックおよびその結果に基づく面談指導の実施、集団ごとの集計・分析等、事業場における一連の取り組みです。
ストレスチェック制度の中心になるストレスチェックは、労働者のストレスレベルを判定するアンケート形式の検査を指します。 このストレスチェックは、検査の実施により労働者自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調の予防をはかる仕組みです。検査結果は本人に通知されるので、労働者自身によるストレスケアにつなげられます。
さらに、職場全体のデータを分析して労働環境の改善に役立てることもできます。 企業のストレスチェック実施は、2015年から義務化されています。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合を見ると、事業所規模1,000人以上の事業所では98.2%がメンタルヘルス対策に取り組んでいる一方、事業所規模29人以下の事業所では53.5%と、メンタルヘルス対策の取り組みに大きな差があります。
参照:令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況|厚生労働省(PDF資料)
以下では、ストレスチェック実施ができるアウトソーシングサービスを3つ紹介します。サービスによって内容や料金体系などが異なるため、比較検討をした上で自社に見合ったサービスを選びましょう。
リロクラブ「メンタルヘルスケアサービス」
福利厚生パッケージサービス「福利厚生倶楽部」を提供しているリロクラブの「メンタルヘルスケアサービス」。
4つのメニューで構成されており、各社の課題やニーズにあわせたストレスチェックの実施が可能です。ストレスチェックに関する法令への対策も万全です。しかも、ストレスチェックに関連する業務をシステム化できるので、企業の担当者の事務的な手間や心理的負担を軽減できます。
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NEC VALWAY「メンタルヘルスケアサービス」
出典:NEC VALWAY
NEC VALWAYの「メンタルヘルスサービス」。NEC独自の職場分析詳細レポートを出力でき、職場間比較や経年比較を直観的なグラフで確認することができます。それぞれの職場が抱えているストレス状況を詳細に分析できるため、的確な改善施策の立案に役立てることができます。
NEC VALWAYの「メンタルヘルスケアサービス」詳細はこちら
ケミカル同仁「iStress(アイストレス)」
出典:ケミカル同仁
ケミカル同仁の「iStress(アイストレス)」。企業ごとに専任の担当医師がサポートにつき、豊富な経験と知識にもとづいてサービス提供をしています。従業員の氏名・メールアドレスといった個人情報を使用しないので、個人情報が保護され、担当者や従業員も安心してストレスチェックを実施できます。
ケミカル同仁の「iStress(アイストレス)」詳細はこちら
参考|職場におけるストレスチェック制度の実施が義務化!労働環境改善に活かす方法とは
有効な取り組み2.産業医との連携
労働者の健康管理を担う産業医や産業保健の専門スタッフとの連携も効果的です。
労働安全衛生法では、労働者が50人以上いる事業場に産業医を選任することが義務づけられていて、50人未満の場合は努力義務となっています。 産業医の主な役割は、健康診断の実施・結果への対処、長時間労働者の面接指導やストレスチェックの実施などです。
病気の診断や薬の処方はせず、適切な医療機関の紹介や休職者の復職判断などにより労働者の心身の健康をサポートします。また、後述する4つのケアをサポートする産業保健スタッフがいると、メンタルヘルスケアが実行しやすくなります。
有効な取り組み3.従業員支援プログラム(EAP)
従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)は、企業のメンタルヘルスケアをサポートするサービスのことです。産業医や産業保健スタッフのように企業に常駐する「内部EAP」に対し、企業と連携して対策を行う外部機関やサービスを「外部EAP」と呼びます。
外部EAPはストレスチェックの実施や復職支援プログラムなどの幅広い専門サービスを提供し、メンタルヘルスケアを推進します。
有効な取り組み4.ストレスマネジメント研修などの教育活動
ストレスマネジメント研修は、小規模事業場でも導入しやすい取り組みです。メンタルヘルスの重要性や基礎知識を労働者および管理監督者に教育し、意識向上やメンタルヘルス不調の予防につなげることができます。
啓蒙はリーフレットやDVDなどの各種媒体でも可能です。また、外部機関・サービスにアウトソーシングするのも効果的です。
メンタルヘルスケアの基本的な「3つの段階」
メンタルヘルスに取り組む際には、次の3つの段階を意識することが重要です。
- 一次予防【未然に防ぐ】
- 二次予防【早期発見】
- 三次予防【職場復帰支援】
「3つの段階」とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、一次予防/二次予防/三次予防に分かれています。各段階の考え方や、段階に応じた取り組みなどは以下の通りです。
メンタルヘルスケアにおける「3つの段階」 | ||
段階 |
具体的な取り組み |
|
一次予防 |
未然に防ぐ |
|
二次予防 |
早期発見 |
|
三次予防 |
職場復帰支援 |
|
一次予防【未然に防ぐ】
ストレスによってメンタルヘルスに不調をきたす前に予防する段階です。労働者が各自で行うストレス緩和ケアのほか、労働環境の改善もこの段階に含まれます。主に、ストレスマネジメント研修やストレスチェック制度の導入などにより、労働者一人ひとりのメンタルヘルスに対する意識を高めていきます。
二次予防【早期発見】
二次予防では、メンタルヘルスに不調があらわれた労働者を早めに発見して適切な措置を行う段階です。本人が不調に気づいたときに自発的に相談できる相談窓口の設置や、産業医との面談機会を設けることなどが主な施策です。メンタルヘルス専門の外部サービスとの連携も効果的です。同僚や管理監督者も異変にいち早く気づき、気兼ねなく相談できる職場風土を目指します。
三次予防【職場復帰支援】
メンタルヘルス不調によって休職した労働者の職場復帰をサポートする段階です。休職による不安や焦りを緩和させるための精神的なフォローや、復帰後に無理をさせないような仕事面のケアなどを行います。三次予防をおろそかにすると再発や離職につながるため、慎重なフォローが求められます。 ここでいう職場復帰支援とは、休業の開始から通常業務への復帰までの流れを明確にして制度化・ルール化したものです。これらの制度やルールが曖昧のままですと、休職者をスムーズな形で職場復帰させられません。3つの段階を把握することとあわせて、厚生労働省のホームページを参考に職場復帰支援について理解を深めておくことをおすすめします。
参考:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省
企業に求められる「4つのケア」
「3つの段階」で教育研修や制度の導入、情報提供、労働環境の改善に加えて、「4つのケア」を継続的かつ計画的に行うことが重要です。
この「4つのケア」とは、厚生労働省が2015年に公表した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(改正)で示されたものですので、以下の概要を参考にポイントを押さえておきましょう。
企業に求められる「4つのケア」 | ||
ケアの種類 |
ケアを担う人 |
概要 |
セルフケア |
個人(労働者自身) |
労働者自身でストレスの予防、対処をする |
ラインによるケア |
管理監督者 |
管理監督者が職場のストレス要因を把握して改善する |
産業保健スタッフ等によるケア |
事業場全体 |
セルフケアおよびラインによるケアの実施をサポートする |
事業場外資源によるケア |
外部 |
外部の機関やサービスを活用する |
セルフケア【個人(労働者)】
セルフケアは労働者自身でストレスを予防し、気づいたときに適切に対処することです。セルフケアは正しい知識がないとうまく対処できないため、事業者は労働者への情報提供や教育研修によりサポートします。
ストレスへの気づきを促すためには、ストレスチェックの実施も有効です。
ラインによるケア【管理監督者】
ラインによるケアは、管理監督者が職場のストレス要因を把握して改善することです。管理監督者は部下である労働者の相談に乗り、必要に応じて労働環境等の改善を行うなどの対応をします。
管理監督者が労働者のケアを担うためには、メンタルヘルス研修などを通じて、監督者自身がメンタルヘルス予防の視点をもつ必要があります。
産業保健スタッフ等によるケア【事業場全体】
産業保健スタッフ等によるケアは、事業場内の産業医や衛生管理者などによる支援です。先に挙げたセルフケアおよびラインによるケアの実施をサポートします。
個々のケースを支援だけではなく、メンタルヘルス関連の教育研修の企画・実施や労働者からの相談等を受けることができる制度や体制を整えることなども行います。
事業場外資源によるケア【外部との連携】
事業場外資源によるケアは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。事業場内での相談を希望しない労働者のケアや、企業が抱えるメンタルヘルスの課題を外部の専門的な知識を有する資源の支援により解決したい場合に効果的です。
「3つの段階」の取り組みと「4つのケア」を継続的かつ計画的に実施できれば、労働者のメンタルヘルス不調を防ぎ、発生時も適切に対処できます。メンタルヘルス不調による休職や離職を防ぐためにも、職場におけるメンタルヘルスケアは欠かせません。
なお、離職防止については以下のページでも紹介しています。離職防止につながる職場環境や労働条件などを詳しく知りたい経営者・総務人事部門の担当者は、こちらをあわせてご覧ください。
離職防止の対策を職場環境、労働条件、人間関係の観点から考える
メンタルヘルスケアを積極的に推進する企業側のメリット
休職や離職に伴う労働力の減少は、一人あたりの業務負担増や利益の減退にも直結します。企業としてメンタルヘルスケアを積極的に推進すると、労働者の休職や離職防止につながるため、企業にとっては大きなメリットになります。その他、メンタルヘルスケアの積極推進は企業に以下のようなメリットをもたらします。
- 採用力の強化
- ハラスメントの防止
- ホワイト企業の認定
採用力の強化
メンタルヘルスケアの実施に積極的に取り組んでいる働きやすい労働環境は、労働者にとって魅力的に映ります。休職や離職の防止とあわせて、メンタルヘルスケアの推進は採用力の強化につなげることも可能です。 企業によってはメンタルヘルスケアに加えて福利厚生制度を充実させ、従業員満足度の向上に取り組むケースも少なくありません。
参考:福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
ハラスメントの防止
メンタルヘルスケアの推進によって労働環境が改善されれば、間接的にハラスメントの防止効果をもたらします。特にパワハラは、その事実を知っているにも関わらず企業が放置・黙認した場合、企業責任を問われることもあります。 パワハラにおけるリスクマネジメントの観点からも、メンタルヘルスケアの実施に積極的に取り組むことをおすすめします。パワハラの基本情報やリスクについては、以下のページもあわせてご覧ください。
参考記事;パワハラとは?パワハラ防止法の施行で知っておきたい定義と行為類型
ホワイト企業の認定
ここでいうホワイト企業とは労働者が働きやすい企業のことで、法令違反企業を指すブラック企業と対をなす企業のことです。労働環境が良好な企業は、「一般財団法人 日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)」より、ホワイト企業として認定を受けられます。ホワイト企業認定は企業PRにも活用でき、採用力の強化とあわせて企業価値の向上や投資家へのイメージアップにも貢献します。 注意点として、ホワイト企業認定はメンタルヘルスケアを積極的に推進しているという点だけでは認定を受けられません。認定には「ビジネスモデル」「労働法遵守」など複数の評価指標を満たす必要があります。 このホワイト企業の認定方法や取得のメリット、ホワイト企業を目指す方法について、詳しくはこちらをあわせてご覧ください。
メンタルヘルスケアの具体的な取り組み例
メンタルヘルスケアを行う際に、「具体的にどのような取り組みを実施するべきか」を悩んでいる方もいるでしょう。 次のメンタルヘルスケアの具体的な取り組み例を参考に、自社で実践すべき施策を考案してください。
- メンタルヘルスに関するノウハウを教育する
- ラインケアを強化する
- ストレスチェックを強化する
- コミュニケーションを活性化させる
- メンタルヘルス対策専門の部署を設立する
それぞれの取り組み例を解説するため、自社の課題を解消するメンタルヘルスケアの施策を実践しましょう。
メンタルヘルスに関するノウハウ教育する
まずメンタルヘルスケアを実践するために、従業員がメンタルヘルスに関するノウハウを理解しておく必要があります。
従業員がメンタルヘルスの重要性を理解して、健康維持・増進に積極的な姿勢でなければ、効果的なメンタルヘルスケアを実現できません。まずは経営層や人事部・総務部などの健康管理担当者が、メンタルヘルスに関するノウハウを習熟して組織内に共有しましょう。 組織全体でメンタルヘルスケアに取り組む風土を構築して、メンタルヘルスセミナーの開催や相談窓口の設置など、メンタルヘルスを予防する施策が必要です。メンタルヘルスケアを行うためには、組織全体がメンタルヘルスに関する知識・ノウハウを学ぶための教育環境が求められます。
ラインケアを強化する
メンタルヘルスケアの具体的な取り組み例として、ラインケアの強化がおすすめです。 ラインケアとは、課長や部長など管理職ポジションの人材が、部下である従業員の健康管理に取り組むメンタルヘルス対策です。
管理職ポジションの人材が部下の健康管理を実践すれば、組織全体のメンタルヘルスケアへつながります。 しかしラインケアは知識とノウハウがなければ、従業員のストレス耐性を適切に把握できず、メンタルヘルスケアが失敗してしまう可能性があります。ラインケアを強化するために、外部から専門の講師にアウトソーシングして、ラインケアセミナーを開催しましょう。 ラインケアを実践できる人材を増やすことで、組織全体のメンタルヘルスケアを実現できます。
ストレスチェックを強化する
メンタルヘルスケアの具体的な取り組み例として、ストレスチェックを強化しましょう。メンタルヘルスを予防するためには、ストレス・精神疾患を早期発見・対策することが大切です。
ストレスチェックツールを導入して、定期的にストレスチェックを実践すれば、従業員がかかえるストレスを早期発見できます。 ストレスチェックの内容としては、以下のような項目を確認しておきましょう。
- 仕事内容
- 労働環境
- 睡眠時間
- 食欲
- プライベートの問題
- 人間関係
ストレスの要因を分析して対策案を講じることが、メンタルヘルスケアにつながります。通常はストレスチェックを行う周期は年に1度ですが、半年に1度実践して従業員が抱える問題を可視化しましょう。
コミュニケーションを活性化させる
メンタルヘルスケアの具体的な取り組みとして、コミュニケーションを活性化させることが大切です。コミュニケーション不足の環境では、従業員が抱える悩みに気づけずメンタルヘルスを予防できません。
特にテレワークで働く従業員は、コミュニケーション不足に陥りやすく、ラインケアがしにくい傾向があります。テレワークで働く従業員とのコミュニケーションを活性化させるために、コミュニケーションツールの導入や定期的なミーティング・相談会を開催しましょう。
メンタルヘルス対策専門の部署を設立する
メンタルヘルスケアに取り組む際は、メンタルヘルス対策専門の部署を設立することをおすすめします。メンタルヘルス対策専門の部署とは、従業員の相談窓口となる部署を指します。 ストレスや悩みを抱えた従業員が相談できる窓口があれば、メンタルヘルスを事前に予防可能です。
メンタルヘルスケアに取り組む際は、健康経営を促進してメンタルヘルス部署を設立すれば、より高精度なケアを実現できます。 さらに、外部から専門のカウンセラーを雇えば、メンタルヘルス対策専門の部署がより充実した組織になるでしょう。
メンタルヘルスケアを充実させている企業の好事例5選
メンタルヘルスケアを実践する際は、すでにメンタルヘルスケアを充実させている他社の成功事例を参考に施策を考案しましょう。 メンタルヘルスケアを充実させている企業の好事例は、次の5つです。
- 三菱電線工業株式会社
- ヤフー株式会社
- 株式会社八天堂
- ダイハツ工業株式会社
- 株式会社ベネッセコーポレーション
それぞれの施策を参考に、自社で取り組むべきメンタルヘルスケアを検討しましょう。
三菱電線工業株式会社
三菱電線工業株式会社は、メンタルヘルスケアとして以下の取り組みを行っています。
- ストレスチェックの強化
- コミュニケーション推進活動の実践
- 従業員参加型ワークショップによる意見交換
まず従業員のメンタルヘルスを把握するため、ストレスチェックを強化しました。ストレスチェックで得たデータをもとにメンタルヘルス対策を実施し、不定期で行っていたセルフケア研修とラインケア研修を年に1度実施しています。
さらに健康経営を推進する際に「コミュニケーション推進活動」を重点的に行い、従業員間のコミュニケーション不足を解消しました。 グループワークを通じて従業員がコミュニケーションを活性化させる「従業員参加型ワークショップ」を開催し、エンゲージメント向上と独創性の強化を行っています。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、メンタルヘルスケアの取り組みとして以下の内容を実践しました。
- グッドコンディション推進室の設立
- 週1回開催される「1on1」ミーティング
- 職場復帰支援プログラムの充実
まずヤフー株式会社は、前社長の「コンディションを整える」というキーワードをもとに、健康推進センターを「グッドコンディション推進室」に改名しました。
従業員のコンディションを整える相談窓口として、病気や体調不良だけでなく悩みやストレスを相談を受けています。産業医9名・保健師など看護職6名が勤務しており、専門知識をもった従業員がメンタルヘルスケアを実践しています。 さらに上司と部下の1on1を週に1度開催して、ラインケアを強化しました。 また、休職中の従業員を復帰させる取り組みとして「職場復帰支援プログラム」を実施しており、できるだけ多くの上司が積極的に参加するようになっています。
株式会社八天堂
株式会社八天堂は、メンタルヘルスケアの施策として次のような取り組みを行っています。
- ストレスチェックを徹底した健康経営
- 臨床心理士に相談できるケア環境の充実
従業員の健康管理・健康意識の促進を行い、メンタルヘルスの兆候にできるだけ早く気づけるようラインケアを強化しました。 仕事に悩みがある従業員や離職を検討している従業員に、上長がマンツーマンで話し合いを行います。本人の希望があれば、連携している病院の臨床心理士と相談できる機会を設けて、メンタルヘルスケアを実施しています。
ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業株式会社が実施したメンタルヘルスケアの取り組みは次のとおりです。
- 一次予防に注力したストレスチェック
- 報告会と各部署へのフィードバックの実施
ダイハツ工業株式会社では、常勤職の臨床心理士が3名在籍していましたが、メンタルヘルスの二次・三次予防を重点的に行ってきました。しかし一次予防に注力する方向性へシフトチェンジを行い、ストレスチェックを開催しました。
ポイントとして、集団分析結果の数値に引っ張られすぎないよう意識し、部署ごと・個々に必要な改善・施策を考案していることがあります。 ストレスチェックで得た結果を報告会で共有し、各部署へのフィードバックを行うことで、組織全体でメンタルヘルスケアに取り組む風土を構築しました。
株式会社ベネッセコーポレーション 東京本部
株式会社ベネッセコーポレーション 東京本部は、メンタルヘルスケアとして次の施策を実施しています。
- 産業保健と人事労務による相談窓口に設置
- 職場復帰に向けた上司との相談会の実施
株式会社ベネッセコーポレーション 東京本部は、産業保健と人事労務がそれぞれの立場からチームで対応する相談窓口を設置しました。東京本部を含む全国9箇所の従業員6,000人を対象とした大規模な相談窓口です。
産業医や顧問弁護士・社労士に相談できる体制を整えて、メンタルヘルス研修を毎年実施しています。 さらに休職する従業員には、産業保健スタッフが面談をして独自にまとめた「傷病休暇取得の手引き」を手渡しで説明する徹底ぶりです。 休職期間中は、相談デスクが休職者との窓口となり月に1度は状況確認を行う取り組みです。さらに、職場復帰の際は相談デスクとの面談、産業医との面談・トレーニングの実施、最後に上司と直接面談を行うよう体制を整えました。
テレワークにおけるメンタルヘルスケア
最後に、テレワークにおけるメンタルヘルスケアについて紹介します。
■参考記事;テレワークの採用で生産性の向上を。テレワークの導入効果
テレワークの問題点
在宅勤務やサテライトオフィス勤務などのテレワークは、労働者の勤務状況を把握しづらいという問題点があります。
そのため「4つのケア」のうちのひとつであるラインによるケアが難しく、どうしても上司(管理監督者)が部下の「いつもと違う」様子に気付きづらくなります。
そのため、知らぬ間に部下がメンタルヘルス不調に陥ることもあります。 また、仕事のオン/オフの切り替えが難しくなるテレワークでは、テレワークが長時間労働を引き起こす可能性があります。それでは、メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防が円滑に行えません。
おまけに、テレワークは労働者が運動不足になりやすく、不眠をはじめとする睡眠障害や自律神経失調症などを引き起こすといった問題点もあります。
テレワークにおける具体的なメンタルヘルスケア
テレワークにおける具体的なメンタルヘルスケアとしては、離れていてもコミュニケーションがとれるウェブ会議ツールやコミュニケーションツールの導入がおすすめです。
ICTの活用によって、テレワーク中でも意思疎通をはかりやすくなれば、メンタルヘルス不調を発見・予防がしやすくなります。 勤怠管理システムの導入も欠かせません。テレワーク中の勤務時間をシステムで適切に管理できるようになれば、労働者の働きすぎを防止しやすくなります。労働者の運動不足問題には、健康管理ができて適度な運動を助長する健康サポートアプリの導入も効果的です。
参考記事;健康経営は、将来に向けた投資。メリットと実践ポイントを詳しく解説
テレワークの導入や制度の改善については、厚生労働省のホームページを参考にしてください。厚生労働省では、テレワークを適切に導入するガイドラインが公開されているため、テレワーク中のメンタルヘルスやセキュリティ対策などを整えることができます。
参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
まとめ
今回は、企業で推進すべき具体的なメンタルヘルスケアについて詳しく解説しました。大まかなまとめとしては、以下の通りです。
- 労働者の心の健康づくり実施にあたっては、一次・二次・三次予防を円滑に行う必要がある
-
一次から三次の予防とあわせて、「4つのケア」を継続的かつ計画的に行うことが重要である
- セルフケア
- ラインによるケア
- 産業保健スタッフ等によるケア
- 事業場外資源によるケア
- メンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に実施できれば、労働者のメンタルヘルス不調を防ぎやすくなる
- メンタルヘルスケアで労働者の心の健康状態がよくなれば、組織全体の活力や生産性に好影響をもたらす
- メンタルヘルスケアを推進すると、離職防止や採用力の強化、ハラスメントの防止などのメリットを得やすくなる
- メンタルヘルスケアは、テレワーク中の労働者にも必要
健全な組織運営と切り離せない労働者のメンタルヘルスケア。労働者のメンタルヘルス不調は、仕事の質・生産性、ひいては業績にまで影響を与えるため、早めの対策が必須です。
健康経営は、労働者の身体の健康保持増進だけにとどまりません。労働者の心の健康状態(メンタルヘルス)を健全に保つことも重要です。メンタルヘルスケアには基本があります。義務化されたストレスチェックの実施は、ストレスへの気づきや予防策、職場環境等の分析・対策に効果的な「基本」です。
まずは基本を徹底することで労働者一人ひとりの心の健康を考えることが、健康経営の第一歩です。労働者の健全な肉体と健全な精神という土台を作って、健全な組織運営・生産性の高い組織を目指しましょう。
■メンタルヘルスケアに関するサービスをお探しの方は、下記リンクをご参照ください。
「メンタルヘルスケアサービス」詳細はこちら