【5分で理解】健康経営とは|メリットや認定制度まで徹底解説
健康経営を導入して自社のワークライフバランスを整備したいものの、課題を感じている人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、健康経営についてメリットや認定制度、導入するべき企業の特徴なども徹底解説します。
ぜひ健康経営を理解・導入して、自社のワークライフバランスを最適化しましょう。
目次[非表示]
- 1.健康経営とは
- 2.健康経営が注目される背景
- 2.1.高齢化による人手不足の深刻化
- 2.2.退職年齢の引き上げ義務化
- 2.3.健康状態が企業業績へ直結する
- 3.健康経営を導入する企業メリット
- 3.1.労働生産性の向上
- 3.2.疾病手当の負担減少
- 3.3.経営上のリスク回避
- 3.4.各種認定制度によるインセンティブ獲得
- 4.健康経営を導入した企業のデメリット
- 4.1.中長期的な目線が必要
- 4.2.導入コストや管理コストがかかる
- 4.3.平等で公平な施策が必要
- 5.健康経営を導入するべき企業の4つの特徴
- 5.1.離職率が高い企業
- 5.2.休職者の割合が多い企業
- 5.3.残業・休日出勤が慢性化している企業
- 5.4.人材確保に苦戦している企業
- 6.健康経営の各種認定制度
- 7.健康経営の具体的な施策3選
- 7.1.健康診断や保健指導の実施
- 7.2.ワークライフバランスの正常化
- 7.3.食事や運動習慣の正常化
- 8.健康経営を導入してメリットを最大化しよう
健康経営とは
健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営課題としてとらえて積極的に改善に取り組む施策のことです。従業員の健康を増進することは、生産性の向上や組織の活性化が期待できます。
本来は健康管理は個人で管理するものと思われがちでしたが、従業員の健康は仕事のパフォーマンスやモチベーションに大きく関連するものだと明らかになったことで、昨今は健康経営が単なるコストではなく先行投資としても意味合いを帯びてきています。
健康経営が注目される背景
本章では、健康経営が注目される背景を詳しく紹介します。
主な背景は以下の3つです。
- 高齢化による人手不足の深刻化
- 退職年齢の引き上げ義務化
- 健康状態が企業業績へ直結する
それぞれ解説します。
高齢化による人手不足の深刻化
1つめは、高齢化による人手不足の深刻化です。下記の図は、総務省が公表した1950年から2023年までの高齢者の人口の割合と推移を表したグラフです。
参照:統計からみた我が国の高齢者|総務省統計局
上記からもわかるように、年々高齢者の人口は増え続けています。2022年から2023年では横ばいに推移していますが、それでも高齢者の割合は各段に増えていることが理解できるでしょう。
また、下記は経済産業省が発表した、2060年の高齢者の進展と推計をあらわしたグラフです。
参照:健康経営の推進について|経済産業省 ヘルスケア産業課
日本は突出して高齢化が進んでおり、超が3つもつく「超超超高齢化社会」になっていると予測されています。また、65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合の高齢化率は38.1%にまで上昇するとの予測もあるのです。
高齢者が増えたことで、労働人口は減少し人手不足の事業所が多く増えています。すでに莫大な数の働き手が消失しているといえるでしょう。
そのため、従業員の健康を守り、長く安定的に労働に従事してもらうためにも、健康経営の取り組みはかかせません。
退職年齢の引き上げ義務化
2つめは、退職年齢の引き上げ義務化の点です。2025年4月から「高年齢者雇用安定法」が改正され、すべての企業で65歳定年制が義務化される見通しです。
そのため、高年齢層でも健康で快適に働ける職場環境の整備が急務といえるでしょう。
参照:高年齢者雇用安定法 改正の概要|厚生労働省
健康状態が企業業績へ直結する
最後の背景は、健康状態が企業の業績へ直結する点です。
慶應義塾大学の研究では、健康状態を適切に管理し保てば生産性やパフォーマンス向上が認められるという結果が出ています。
また、医療費が減少してから企業パフォーマンスが改善するまでには1年程度のラグを要することも本研究で確認されました。
参照:健康と労働生産性の関係に関する労働経済学的研究|慶應義塾大学 山本勲、早稲田大学 黒田祥子
そのため、健康経営の効果を実感するには中長期的な目線が必要なため、事業所内が完全に高齢化する前に、または定年年齢の引き上げが施行される前に、しっかりと健康経営の礎を築いておく必要があります。
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/20851
健康経営を導入する企業メリット
本章では、健康経営を導入すると企業が得られるメリットについて解説します。
主なメリットは以下の4つです。
- 労働生産性の向上
- 疾病手当の負担減少
- 経営上のリスク回避
- 各種認定制度によるインセンティブ獲得
それぞれ解説します。
労働生産性の向上
健康経営を導入することで、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント向上につながる点です。
実際に体調が良いことで従業員の集中力が高まったり、パフォーマンス向上が見込める研究結果も出ています。
疾病手当の負担減少
2つめのメリットは、疾病手当の負担が少なくなる点です。
従業員が健康に働くことで、退職者の高齢者医療費負担の軽減や、疾病による長期休暇の取得率の低減につながります。
経営上のリスク回避
3つめは、経営上のリスクを回避できる点です。
例えば、健康問題による損出(長期休暇や長期入院など)が最小限になれば、経営的な損失のリスク回避ができます。
また、企業の社会的評価が向上することにより優秀な人材の流出を軽減、新規雇用のしやすさに繋がったり労務負担が軽減したりなども期待できるでしょう。
各種認定制度によるインセンティブ獲得
4つめは、各種認定制度によるインセンティブを獲得できる点です。
認定制度には下記のようなものがあります。
- 健康経営優良法人などの認定ロゴマークの使用許可
- 各自治体のホームページや広報誌での企業名の掲載
- 公共調達・公共事業の入札時の加点制度(一部の地域限定)
- 自治体・金融機関による金利優遇(一部の地域限定)
- 保険会社による保険料割引
認定制度を獲得できれば、企業価値のより一層の向上にもつながるでしょう。
また、認定制度を取得するためには補助金の活用もおすすめです。
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/20861
健康経営を導入した企業のデメリット
本章では、健康経営を導入する際の企業デメリットを紹介します。
問題点は以下の3つです。
- 中長期的な目線が必要
- 導入コストや管理コストがかかる
- 平等で公平な施策が必要
それぞれ解説します。
中長期的な目線が必要
1つめは、中長期的な目線や施策が必要である点です。
慶應義塾大学の研究結果にもあるように、健康経営を導入してから効果が実感できるようになるまでには、最長で1年程度の期間が必要です。
そのため、施策導入後すぐに効果は実感できないかもしれません。
中長期的にわたって施策を運用・実施していく必要があります。
導入コストや管理コストがかかる
2つめは、導入コストや管理コストがかかる点です。
例えば、従業員の健康データを収集・管理するためのツールの導入や人材、外部の医師や産業医との面談、データ分析を専門家に頼むなどさまざまなコストがかかります。
導入するためには、何かと経費がかかることを押さえておきましょう。
平等で公平な施策が必要
最後の問題点は、平等で公平な施策でなければならない点です。
特定の従業員のみにメリットや恩恵がある制度だと、それ以外の従業員から不満の声が上がるでしょう。
例えば、メタボ予備軍の従業員がダイエットに成功したのでインセンティブを与えるような施策は、もともと健康的な従業員には平等な施策とはいえないでしょう。
できるだけ全員が平等に活用できる施策であることが重要です。
健康経営を導入するべき企業の4つの特徴
本章では、健康経営を導入するべき企業の特徴を紹介します。
主な特徴は以下の4つです。
- 離職率が高い企業
- 休職者の割合が多い企業
- 残業・休日出勤が慢性化している企業
- 人材確保に苦戦している企業
それぞれ解説します。
離職率が高い企業
1つめは、離職率が高い企業が当てはまります。
離職率の原因はさまざまですが、重労働による身体への負荷や人間関係のストレスなどが要因となっている可能性が高いです。
そのため、離職率が高い企業では積極的に健康経営を取り入れましょう。
休職者の割合が多い企業
2つめは、休職者の割合が多い企業です。
近年では、メンタルヘルス不調による休職者が増えているため、健康経営の取り組みを始めるのがおすすめです。
下記は過去1年間にメンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業した労働者や退職した労働者がいた事業所を計測した表です。
参照:令和4年「労働安全衛星調査(実態調査)」の概況|厚生労働省
ここからわかるように、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者や退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%で、昨年よりも3.2%上昇しています。
またすべての項目で、前年よりも数値が上昇した結果となりました。
身体的な健康はもちろんですが、精神的な健康を守るためにも、健康経営の取り組みや考え方は必要だといえるでしょう。
残業・休日出勤が慢性化している企業
3つめは、残業や休日出勤が常態化して慢性化している企業です。
長時間労働は脳血管疾患や心疾患、うつ病などの精神的な病気を発症する要因の1つになります。
従業員の健康を守り、効率的な業務を遂行するためにも健康経営が大切です。
人材確保に苦戦している企業
4つめは、人材確保に苦戦している企業や人材流出が多い企業です。
健康経営の取り組みは、企業の採用活動を強化して人材流出を抑える働きがあります。
健康経営に積極的に取り組む企業としてアピールすることで従業員はもちろん、求職者に対するイメージアップにつながるでしょう。
健康経営の各種認定制度
本章では、健康経営に関連する各種認定制度を3つ紹介します。
- 健康経営優良法人
- 健康宣言事業
- 健康経営銘柄
それぞれ解説します。
健康経営優良法人
「健康経営優良法人認定制度」とは、健康経営に取り組む優良な大企業・中小企業・その他法人を認定・顕彰(けんしょう)する公的制度です。
従業員や求職者、関係企業や金融機関などから評価を受けることができる環境を整備することを目的に、2016年度に経済産業省が創設しました。
健康経営有料法人に認定されると、下記の図のような認定書を企業サイトや名刺など、さまざまな媒体に使用することが可能です。
参照:「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!|経済産業省
健康宣言事業
「健康宣言事業」とは各保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が実施している制度です。
取り組み内容は、健康宣言をおこなう企業の健康づくりを支援し保険加入者の健康を増進させることを目的としています。
たとえば東京の協会けんぽでは「健康企業宣言」の名称で呼ばれ、愛知では「健康宣言」、大阪は「健康経営」の名称で呼ばれています。
健康経営銘柄
「健康経営銘柄」は、優れた健康経営に取り組んでいる上場企業を、経済産業省と東京証券取引所が選定し、認定する制度です。
下記の内容に取り組めているかチェックし評価が下されます。
- 健康経営が経営理念・方針に位置づけられているか
- 健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか
- 健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか
- 健康経営の取り組みを評価し、改善に取り組んでいるか
- 法令を遵守しているか
参照:健康経営銘柄|経済産業省
健康経営の具体的な施策3選
本記事では、健康経営の具体的な施策を紹介します。
主な取り組みは以下の3つです。
- 健康診断や保健指導の実施
- ワークライフバランスの正常化
- 食事や運動習慣の正常化
それぞれ見ていきましょう。
健康診断や保健指導の実施
まずは健康診断や保健指導の実施をすることです。
健康経営優良法人の認定を目指す場合は受診率の向上はほぼ必須の項目のため、認定を目指す企業は押さえておきましょう。
厚生労働省の労働者健康状況調査によれば、健康診断の実施率は従業員500人以上の事業所では100%に達するものの、規模が小さくなるほど実施率は低下し、従業員10~20人の事業所では89.4%と9割に満たないのが現状です。
出典:平成24年 労働者健康状況調査|厚生労働省
受診率が低い理由では「時間の確保が難しい」「予約や通院が面倒」などの意見が多数を占めるようです。
しかし、定期健康診断の実施はもともと法律で定められた義務のため、受診率が低迷している場合は、まずはこの問題点の改善を進めましょう。
ワークライフバランスの正常化
2つめの施策は、ワークワイフバランスの正常化を図る施策実施です。
例えば、有給休暇の取得推進やテレワーク勤務の導入、育児・介護などの私生活と仕事を両立しやすい体制の構築がかかせせません。
例えば、下記のような施策を導入するのがおすすめです。
- 残業を事前申告制にする
- 勤務時間を正確に記録するシステムを導入する
- 育児や介護など短時間勤務制度や週3日勤務制度を導入する
- ノー残業デーを導入する
- 勤務間インターバル制度を導入する
自社で取り入れやすい施策を選んで、導入を進めましょう。
食事や運動習慣の正常化
最後は、食事や運動習慣を習慣化できるような施策の導入です。
株式会社日経リサーチの調査によると、各社が健康経営に取り組む中で食事改善や食事の提供を行っていると回答したのは約半数の50.6%に上ります。
そのうち健康経営の評価が高い上位企業では、食事サポートをしている企業は84.6%と高い割合で実施しています。
また、従業員の健康づくりをサポートするために、運動クラブ活動のサポートや、スポーツクラブとの提携などもおすすめの施策の1つです。
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/20872
健康経営を導入してメリットを最大化しよう
健康経営とは従業員の健康を企業が適切に管理することによって、企業の生産性を向上させ組織力を高める施策のことです。
健康経営を進めることで生産性向上はもちろん、疾病手当の負担減少や経営上のリスク回避にもつながるため、多くのメリットを得られるでしょう。
また、認定企業に認定されれば、より一層の企業価値向上にもつながります。ぜひ自社にあった健康経営を導入して、企業メリットを最大化させましょう。