
部下の育て方に必要なスキルと手法:上司が押さえるべき実践ポイント
部下の育成は、上司としての重要な役割の一つです。
部下の成長を促進するためには、適切な指導方法やコミュニケーションスキルが求められます。
この記事では、部下育成に必要なスキルと手法を解説し、上司が押さえるべき実践ポイントを紹介します。
部下の成長を支援するための具体的な方法や、育成における課題の解決策を学び、効果的な部下育成を実現しましょう。
目次[非表示]
- 1.部下育成の基本
- 1.1.部下育成において重要な心構え
- 1.2.部下育成で直面しやすい課題
- 2.部下を成長させる具体的な方法
- 2.1.部下の「経験・能力・やる気」を的確に把握する
- 2.2.適切に仕事を任せて成長を促す
- 2.3.定期的なフィードバックを実施する
- 2.4.部下を尊重した褒め方と叱り方を意識する
- 3.部下育成を成功に導く環境とは
- 3.1.組織の心理的安全性が高い
- 3.2.組織のビジョンと目的が共有されている
- 3.3.組織間のコミュニケーションが活発になっている
- 3.4.上司も自己研鑽を重ねている
- 4.部下育成でありがちな失敗例と解決策
- 4.1.簡単な仕事ばかり任せてしまう
- 4.2.余裕がなくて感情的に接してしまう
- 4.3.時間がなくて十分な指導ができない
- 5.部下の育成に関係するビジネススキル
- 5.1.リーダーシップ
- 5.2.目標達成力
- 5.3.コミュニケーションスキル
- 6.部下の育成に用いられる手法
- 6.1.OJT
- 6.2.Off-JT
- 6.3.1on1ミーティング
- 6.4.eラーニング
- 6.5.コーチング
- 7.部下の育て方を知って効果的な育成を行おう
部下育成の基本
部下育成の基本は、部下との信頼関係の構築にあります。
部下を尊重し、成長を支援する姿勢が求められます。
部下育成において重要な心構え
部下育成においては、部下を「パートナー」として尊重し、対等な立場で成長を支援する姿勢が大切です。
理由としては、次のようなことが挙げられます。
- 部下の個性を受け入れ、尊重することで、信頼関係が構築されるため。
- 自分の経験や考えを押し付けず、部下の自主性を重んじるようにします。
- 失敗を許容し、学びの場として捉えることで、部下が挑戦しやすい環境を作れます。
- これは部下の成長を促進し、組織全体の発展にもつながります。
部下の育成には時間がかかるものです。
上司は長期的な視点を持ち部下の成長を、焦らないようにしましょう。
部下育成で直面しやすい課題
部下育成は一筋縄ではいかないことが多く、さまざまな課題に直面しがちです。
- よくあるケースとして、部下の性格や成長スピードの違いを理解しきれないことが挙げられます。
- この結果、部下のモチベーション低下や信頼関係の欠如に繋がることが多いです。
- そもそも部下育成の時間が確保できないことを課題に感じている上司も多いです。
- 適切な指導やコミュニケーションができず、もどかしい思いをした経験のある人も多いのではないでしょうか。
これらの課題を踏まえて、次に、具体的な解決策を探っていきます。
部下を成長させる具体的な方法
部下を成長させるためには、個々の特性を理解した上で適切な仕事を任せることが重要です。
ここでは職種に関係なく応用できる具体的な方法を紹介します。
部下の「経験・能力・やる気」を的確に把握する
まずは育成する部下がどのような人なのかを理解しましょう。
そのためには今の部下が持つ要素がどれくらいあるのかを的確に把握します。
- 経験
- 能力
- やる気
そうすることで、部下の特性を理解して、より部下に合った育成が可能になります。
♦あくまで現状を把握するのが目的のため、ほかの部下や過去のあなたと比べて劣っているか優れているかどうかは関係ありません。
どのような育成に力を入れるべきか、どのような接し方なら受け入れてくれそうかなどを考える際の判断材料にします。
部下の理解に努める際は部下との信頼関係を築きながら、オープンなコミュニケーションをとるよう、心がけましょう。
適切に仕事を任せて成長を促す
部下のスキルレベルに応じて、やや難易度の高い仕事を任せることが成長を促すポイントです。
仕事を任せる際は、業務内容だけでなく、次のような背景をしっかり説明しましょう。
- 「期待する成果」
- 「なぜその仕事が重要か」
説明があれば部下は自分が任された役割を理解しやすくなります。
さらに、任せる際は丸投げにするのではなく、こまめに進捗確認を行いましょう。
状況を報告させるのも、部下にとっては良い訓練になります。
もし報告を通して問題が明らかになったら、早期に解決できるようサポートし、仮に失敗しても学びにつなげられるようなサポートが上司には求められます。
定期的なフィードバックを実施する
定期的なフィードバックは、部下の成長を促進するために不可欠です。
成果やプロセスに対して、具体的なフィードバックを行えば、部下は自身でPDCAサイクルを回しやすくなります。
フィードバックでは次の両方を伝えることが重要です。
- ポジティブな点
- 改善点
これにより、部下は自分の強みと改善すべき点を理解し、成長につなげることができます。
また、フィードバックの頻度も重要です。
大きなプロジェクトの節目だけでなく、日常的な業務の場でもこまめにフィードバックをするよう心がけましょう。
部下を尊重した褒め方と叱り方を意識する
部下を尊重した褒め方と叱り方を意識することは、信頼関係の構築につながります。
- 褒める際:具体的な行動に着目し、部下が自信を持てるようにします。
単に「よくやった」というだけでなく、「〇〇の点で工夫が見られ、効果的だった」など、具体的な行動を褒めることで、部下は何が評価されたのかを明確に理解できます。
- 叱る際:感情的にならず、改善点を淡々と伝えることが大切です。
「なぜそのような結果になったのか」を一緒に分析し、今後の改善策を考えるプロセスを共有します。
これにより、部下は叱責ではなく、成長の機会として捉えることができます。
♦くれぐれも部下を支配しようとする意識を持たないように注意しましょう。
部下を尊重し、対等なパートナーとして接することが、信頼関係の構築と効果的な育成につながります。
部下育成を成功に導く環境とは
ここからは、部下育成を成功に導く環境について詳しく解説します。
部下の周囲の環境が仕事への取り組み方の形成につながっていきます。
組織の心理的安全性が高い
部下育成を成功させるためには、組織の心理的安全性を高めることが重要です。
♦心理的安全性とは、チーム内で自分の意見や考えを自由に表現しても、否定されたり非難されたりしない状態を指します。
心理的安全性を高めるために、上司は部下の発言を否定せず、ポジティブな対応を心がけることが大切です。
例えば、「その意見は面白い視点ですね。もう少し詳しく聞かせてくれませんか?」といったように、発言をまずは受け入れるようにします。
こういった反応を繰り返していくことで、部下も安心して自由に発言ができるようになっていくのです。
加えて、チーム全体で支え合う文化を醸成することも重要です。
失敗を個人の責任にせず、チーム全体で学びの機会として捉える姿勢が心理的安全性を高めます。
組織内の心理的安全性が高まれば、部下は自信を持って新しいアイデアを提案したり、困難な課題に挑戦したりすることができます。
こうした環境で仕事に取り組む部下は、結果として成長のスピードも速くなっていくことでしょう。
組織のビジョンと目的が共有されている
部下育成を効果的に進めるには、組織のビジョンと目的を明確にし、それを部下と共有することが重要です。
ビジョンと目的が共有されていれば、部下は自分の仕事の意義を理解し、より主体的に業務に取り組むようになります。
まずは組織の長期的な目標やそれを達成するための戦略を部下に説明します。
その上で、部下一人ひとりの役割がどのようにビジョンの実現に貢献するのかを明確にしましょう。
►ビジョン浸透の方法については、次の資料にて、まとめておりますので、併せてご覧ください。
組織間のコミュニケーションが活発になっている
組織間の活発なコミュニケーションも部下の育成には不可欠です。
ちょっとした相談や質問がしやすい雰囲気を作ることも育成において大切な要素です。
活発なコミュニケーションは、問題の早期発見や解決、新しいアイデアの創出にもつながります。
これにより、部下の成長が加速し、組織全体の生産性も向上します。
- 部下が気軽に話しかけられるように、まずは上司やチームのメンバーから話しかけるようにしましょう。
「何でも相談して良い」という文化を浸透させるために、上司が積極的に声をかけることが大切です。
「最近、何か困っていることはありませんか?」といった声かけを定期的に行うようにしましょう。
- 意図的に雑談ができる場を設けて、堅苦しくならないコミュニケーションを促すのも効果的です。
部下も初めは緊張するかもしれませんが、次第に自分のことを話してくれるようになるでしょう。
►併せてご参考ください:社内コミュニケーションを活性化させる方法!事例やメリットも解説
上司も自己研鑽を重ねている
部下育成の成功には、上司自身の継続的な自己研鑽も欠かせません。
上司が学び続ける姿勢を示すことは、部下にも良い影響を与えます。
「上司も常に成長している」という姿勢は、部下の学習意欲を刺激します。
自己研鑽の方法としては、次のような方法が重要な学びの機会となりえるでしょう。
- 書籍や専門誌の購読
- セミナーやワークショップへの参加
- 他社の成功事例の研究
- 部下との対話を通じて得られる気づき
部下育成でありがちな失敗例と解決策
ここからは、部下育成でよく見られる失敗例とその解決策について解説します。
こうした失敗を認識し、適切な対応を学ぶことで、より効果的な部下育成が可能になります。
具体的な事例を理解して、部下育成のスキルアップにつなげましょう。
簡単な仕事ばかり任せてしまう
失敗したときのリスクを恐れて簡単な仕事ばかり任せてしまうのは、部下育成でよくやってしまいがちな失敗です。
上司側は良かれと思ってやっているのかもしれませんが、結果的に成長機会を奪っていることになります。
また仕事に張り合いがなくなり、部下がモチベーションを失う可能性も高いです。
こうした問題が起きるのは、部下の現在のスキルがどれくらいなのかを把握できていないことが主な原因です。
- 部下のスキルを確かめ、そこから徐々に難易度の高い仕事を任せていきましょう。
- 進捗を確認しつつ適切なサポートを提供することも重要。
新しい挑戦に不安を感じる部下もいるため、上司がバックアップする姿勢を示すことで、安心して取り組める環境を作ります。
余裕がなくて感情的に接してしまう
部下育成は常にうまくいくとは限りません。
むしろ思うように進まなくてやきもきすることのほうが多いのではないでしょうか。
とはいえ、部下に対して感情をぶつけるような振る舞いは避けなくてはなりません。
感情的に接してしまうと、部下との信頼関係を損ねる可能性があります。
萎縮した部下が自由な発想や積極的な行動を控えるようになるかもしれません。
部下に対しては冷静にコミュニケーションを取るよう努めましょう。
感情ではなく事実に基づいた指導を行うことが重要です。
例えば、「なぜこんなミスをするんだ!」ではなく、「この部分でミスが起きているようなので、原因を一緒に考えてみましょう」といったように接します。
感情的になりそうな時は、一度深呼吸をして冷静さを取り戻すといった工夫も効果的です。
時間がなくて十分な指導ができない
あまりにも感情的になってしまうことが続く場合は、そもそも育成を行うための時間的余裕がないのかもしれません。
♦実際に、HRzineが調査したアンケート結果で、約65%の指導者が時間に余裕がないと回答しています。(参考情報:9割の企業がOJTに「課題がある」と回答、「指導側に余裕(時間)がない」が最多 )
そういうときは、スケジュール管理や業務分担を見直すことも大切です。
自身の業務を整理し、部下育成に充てる時間を確保しましょう。
時間がなくて十分な指導ができないと、部下が適切なサポートを受けられず、成長が遅れることがあります。
とはいえ、育成業務の時間短縮はあまり現実的ではないので、別の業務の効率化に着手するのがおすすめです。
定型業務の自動化やマニュアル化を進め、指導に充てる時間を確保しましょう。
状況によっては、同じ組織の同僚に協力を頼むのも1つの方法です。
特定の業務のみ指導を代わってもらうなど、組織全体で育成に取り組んでみましょう。
決して一人で抱える必要はありません。
部下の育成に関係するビジネススキル
効果的な部下育成には、上司自身が特定のビジネススキルを磨くことが重要です。
ここでは、部下育成に密接に関わる主要なビジネススキルについて解説します。
これらのスキルを向上させることで、より効果的な部下育成が可能になり、組織全体の成長につながります。
リーダーシップ
リーダーシップは、部下を導き、方向性を示すスキルです。
育成する部下との信頼関係を築くために大切になってきます。
リーダーシップがあれば状況に応じて適切な判断を下し、自ら率先して行動して、部下の信頼を得ることができます。
リーダーシップスキルを向上させるには、次のような学習が有効です。
- 自己啓発
- 研修への参加
- 他のリーダーからの学び
常に自己改善の姿勢を持ち、部下からのフィードバックも積極的に取り入れることで、より効果的なリーダーシップを発揮できるようになります。
目標達成力
部下育成において、目標達成力は重要なビジネススキルです。
明確な目標設定と戦略を立てる能力が求められます。
目標達成力があれば部下と一緒に目標に向けて進むことができます。
部下育成の場合、自分の目標だけでなく部下の目標も一緒に達成するよう伴走するスキルも大切です。
したがって進捗管理とフィードバックも目標達成力の重要な要素になってきます。
定期的に部下の目標進捗を確認し、必要に応じて軌道修正も行いましょう。
コミュニケーションスキル
効果的なコミュニケーションは部下との信頼を構築するのに役立ちます。
日々のコミュニケーションが良好に行われていれば、部下のモチベーションも維持しやすくなります。
部下育成においては、積極的傾聴(アクティブリスニング)のスキルが重要です。
部下の話を真剣に聞き、その背景にある感情や考えを理解しようとする姿勢が求められます。
部下も「自分の話を真剣に聞いてくれた」と思える経験を重ねれば、徐々に上司のことを信頼してくれるようになるでしょう。
また、コミュニケーションスキルは必ずしも会話のみにとどまりません。
非言語コミュニケーションと呼ばれる表情や態度、声のトーンなどはメッセージの伝わり方に影響します。
温和な表情や優しい声のトーンを心がけることで、より良好な関係を構築できます。
部下の意見を尊重し、建設的な対話を促進することも重要です。
「あなたの意見はとても興味深いですね。どのようにすれば実現できると思いますか?」といった質問を通じて、部下の主体性を引き出し、創造的な問題解決を促すことができます。
コミュニケーションスキルを磨くことで、部下との信頼関係が深まり、より効果的な育成が可能になります。
部下の育成に用いられる手法
部下の育成には、以下のような手法が用いられます。
- OJT
- Off-JT
- 1on1ミーティング
- eラーニング
- コーチング
それぞれの手法の特徴を理解し、効果的に活用しましょう。
OJT
OJT(On-the-Job Training)は、実際の業務を通じてスキルを習得させる育成手法です。
この方法は、仕事のやり方を実践形式で学ぶため、次のような利点があります。
- 現場で活躍できるためのスキルを養いやすい
- 上司が近くでサポートしやすい、部下が困難に直面した際に、即座にアドバイスできるのがOJTの良い点です。
また、OJTを効果的に実施するためには、計画的なアプローチが重要になってきます。
現場で働きながら学習を行うため、計画を立てないと行き当たりばったりの指導になりがちです。
計画的な指導を実行して、次のようなPDCAサイクルを回していきましょう。
- まず、習得すべきスキルや知識を明確にし、段階的な学習計画を立てます。
- 次に、適切な業務を割り当てます。
- そして業務が一段落したらフィードバックを実施しましょう。
振り返りの場が成長を促します。
Off-JT
Off-JT(Off-the-Job Training)は、研修やセミナーなど、通常の業務外で育成を図る手法のことを指します。
Off-JTの利点は、業務から離れた環境で集中的に学習できることです。
専門の講師がいて座学形式やワーク形式で学ぶことが多いので、日常業務の中では学習が難しい視点や知識を効率的に習得できます。
Off-JTとOJTの主な違いは、学習環境と方法にあります。
OJTが実際の業務の中で学ぶのに対し、Off-JTは業務から離れた環境で学習します。
Off-JTとOJTを適切に組み合わせることで、バランスの取れた育成が可能になります。
1on1ミーティング
1on1ミーティングは、部下と1対1で面談を行い、現在の状況把握や課題解決を行う手法です。
上司と部下の信頼関係を深め、成長を促す効果があります。
また、1on1ではキャリア開発や目標設定について話し合うことも多いです。
上司と部下の2人で実施する特性から、部下のフィードバックを行う場としても用いられます。
1on1ミーティングは定期的に行うことが理想です。
継続して実施すれば部下の成長度合いを把握しやすくなります。
ミーティングを行う際は先述した傾聴の姿勢を忘れないようにしましょう。
eラーニング
eラーニングは、オンラインでの学習プログラムを活用する手法です。
時間と場所の制約がほとんどないので、いつでもどこでも学習が可能になります。
部下育成に多くの時間を割けない場合や、組織内に育成のノウハウが少ないときにおすすめの手法です。
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コーチング
コーチングは、質問や対話を通じて、部下自身に気づきを促し、自発的な行動を引き出す手法です。
コーチングでは、上司が答えを教えるのではなく、部下が自分の力で考え、成長するプロセスを重視します。
部下の潜在能力を引き出し、問題の自己解決力を育成するのに効果があります。
コーチングは部下から考えを引き出す必要があるため、互いの信頼関係が大切になります。
部下の意見や考えを批判せず、受け止める姿勢を忘れないようにしましょう。
部下の育て方を知って効果的な育成を行おう
部下育成において特に大切なことは、次の3つです。
- 「信頼関係の構築」
- 「成長機会の提供」
- 「心理的安全性の確保」
上司として、部下を尊重して適切な指導とサポートを行い、部下の成長を促しましょう。
そして部下育成は一朝一夕にはいかないため、長期的な視点を持ち、部下と共に成長する姿勢が大切です。
この記事で紹介したポイントを実践し、効果的な部下育成を目指していきましょう。