iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?企業型確定拠出年金の違いと活用法を解説

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?企業型確定拠出年金の違いと活用法を解説

老後の資産形成を目的とした、自助努力による資産運用の重要性が高まっています。そのような中で注目されているのが個人型確定拠出型年金iDeCo(イデコ)です。今回は個人型確定拠出年金iDeCoについて、概要や加入するメリット・デメリット、事業主に求められる対応などを詳しく解説していきます。

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個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは

個人型確定拠出年金、iDeCo(イデコ)という言葉を聞く機会が増えてきました。
個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)とは、個人が自助努力で資金を積み立て運用する、老後の資産形成を目的とした年金制度です。

これからiDeCoへの加入を検討している方や従業員がiDeCo加入を検討している事業主は、iDeCoの概要をよく理解する必要があります。

まずiDeCoとはどのような年金制度かを理解しましょう。

iDeCoは原則誰でも加入できる

iDeCoには細かい加入条件がなく、最低限の条件を満たせば誰でも加入できる私的な年金です。
最低限の条件は、

 

  • 日本に住んでいること
  • 20歳以上60歳未満であること
  • 国民年金保険料を納めていること

 

以上の3つです。

iDeCo公式サイトでは、簡単な質問に答えるだけで加入資格を調べることができます。

iDeCoの加入概況

掛金を積み立て運用することで資産形成ができるiDeCoですが、実際どのくらいの人が加入しているのでしょうか。

企業年金連合会の統計によると、2022年4月末時点で2,424,294人が加入しています。内訳は、第1号被保険者274,233人、第2号被保険者2,044,730人、第3号被保険者105,331人です。

1年前の2021年3月末時点で加入者合計1,939,044人であり、毎月加入者が増加しています。被保険者の区分ごとにも毎月増加しているため、日本全体でiDeCoの需要が高まってきています。

iDeCoを活用する流れ

iDeCoを活用する流れ

iDeCoという名称は知っていても、仕組みがよく分からないという人も多いでしょう。仕組みを理解できなければ、年金を受け取ることができません。まずは、iDeCoの仕組みについて詳しく解説します。

毎月の掛金を設定する

iDeCoは毎月掛金を積み立てることで、資産をつくっていきます。積み立てる掛金は、月額5,000円から設定可能です。
掛金は変更することができ、職業別に定められた上限金額まで1,000円単位で上乗せすることができます。

iDeCoの職業別掛金上限金額について

iDeCoの掛金の上限金額は、国民年金保険の加入状況(職業別)によって異なっています。
企業勤めの会社員がiDeCoを利用する場合は、勤務先に企業年金などがあるかによっても、限度額が変化するため注意が必要です。
以下の表に、掛金の限度額の違いをまとめています。

区分 月額 年額
第1号被保険者(自営業者など) 68,000円 816,000円
第2号被保険者(会社員) ・企業年金等なし:23,000円 ・企業年金等なし:276,000円
・企業年金等なし、企業型DCに加入:20,000円 ・企業年金等なし、企業型DCに加入:240,000円
・企業型DC以外の企業年金等に加入:12,000円 ・企業型DC以外の企業年金等に加入:144,400円
第2号被保険者(公務員など) 12,000円 144,000円
第3号被保険者(専業主婦・主夫など) 23,000円 276,000円

出典:iDeCoの加入資格等|iDeCo公式サイト(PDF資料)

積み立てた掛金を運用商品で運用する

iDeCoで積み立てた掛金は、60歳以降に受け取ることになりますが、受け取れるお金はそれまでに積み立てた掛金だけではありません。掛金の運用によって得た利益(運用益)も受け取ることができます。

掛金は定期預金や投資信託、保険商品などの運用商品を選択・運用することによって、運用益を生むことが期待できます。

運用益は掛金に加算されるため、運用が上手くいけば掛金よりも多くの資産を受け取ることができるという仕組みです。逆に運用方法によっては、掛金よりも資産が少なくなるリスクもあります。

給付金を受け取る

iDeCo(イデコ)の給付金受け取りは60歳以降と定められていますが、加入時期や加入者の事情によって受け取る時期や方法が異なるため注意が必要です。
まずは、一括受け取りと分割受け取りの違いです。

60歳以降に一括または分割で受け取れる

iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降に一括または分割で受け取ることができます。

一括で受け取る場合は、一時金として一括で受給します。分割で受け取りたい場合は、年金扱いとして5年以上20年以下の範囲で、分割で支払われるという仕組みです。

一括と分割を組み合わせる方法もあります。一部を一時金として受け取り、残りを年金として分割で受け取っていくことも可能です。
受給できる年齢は、iDeCoの加入期間によって異なります。加入期間ごとの受給可能年齢は以下です。

iDeCo加入期間 受給可能年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1ヶ月以上2年未満 65歳

【例外】60歳前に受け取れる

原則60歳までは資産を引き出せないiDeCoですが、加入者の事情によっては60歳未満の受け取りが認められることがあります。障害給付金・死亡一時金・脱退一時金という3つの給付方法を確認していきましょう。

【障害給付金】
iDeCo加入者が70歳に到達するまでに傷病などにより障害状態になってしまった場合、障害給付金として受給することができます。通常の受給と同じく、一括または分割、複合型から選び、受け取ることが可能です。

【死亡一時金】
iDeCo加入者が亡くなった場合、死亡一時金として遺族が受給できます。iDeCoを利用していた機関に加入者等死亡届や死亡診断書などを提出し、受理されると指定された受取人に支給されます。

【脱退一時金】
一定の要件を満たすことで、iDeCoを脱退し、脱退一時金として資産を引き出すことも可能です。
脱退一時金を請求するためには、以下5つの要件をすべて満たさなければなりません。

  • 国民年金の第1号被保険者のうち、国民年金保険料の全額免除または一部免除、もしくは納付猶予を受けている方
  • 確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
  • 通算拠出期間が3年以下、または個人別管理資産が25万円以下であること
  • 最後に企業型確定拠出年金または個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から2年以内であること
  • 企業型確定拠出年金の資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと

iDeCo(イデコ)のメリット

iDeCo(イデコ)のメリット

iDeCo(イデコ)には、いくつかの加入メリットがあります。税制面や運用利益などのメリットを3つ紹介します。

掛金は全額所得控除になる

iDeCoの掛金は全額所得控除されるため、所得税や住民税の軽減につながります。60歳以降の受け取り時にも税制優遇があり、一括受け取りは退職所得控除、分割受け取りは公的年金等控除の対象となります。

所得税・住民税に関する軽減効果については、ご本人の課税所得・掛金額によって異なります。

運用益は非課税

iDeCoで得た運用益は課税対象にならないのも大きなメリットです。通常の資産運用では運用益に対して約20%の税金が発生しますが、iDeCoであれば税金が一切かかりません。

投資信託や預金によって運用益や利息が出た場合は、通常20.315%の税金が差し引かれます。iDeCoの非課税というメリットは、ぜひ押さえておきたいポイントです。

受け取り時は一定額まで「非課税」

iDeCoは、受け取りにおいても、一定額まで非課税です。例えば30年間掛金を支払った人が一時金を受け取る場合、退職所得控除が受けられるため1,500万円までは税金がかかりません。
年金として受け取ったとしても、公的年金等控除の対象となります。

iDeCoの受け取りは、原則60歳から始まります。受け取り方は、「年金」「一時金」「年金と一時金の組み合わせ」の3通りがあります。

iDeCo(イデコ)のデメリット

iDeCo(イデコ)のデメリット

iDeCo(イデコ)は税制優遇を受けながら資産運用ができる魅力的な制度ですが、デメリットも存在します。あらかじめデメリットを理解した上で、検討をすることが大切です。デメリットを4つ紹介します。

原則60歳まで引き出せない

iDeCoで積み立てた資産は、原則60歳まで引き出すことができません。「急な出費があるため、iDeCoから引き出そう」「積み立て途中だが、解約して現金化しよう」といった使い方はできないため注意が必要です。

要件を満たせば脱退一時金を申請できたり、積み立てをストップしたりできますが、基本的には60歳まで積み立て続けなければなりません。

加入時期によっては60歳から受け取れない

iDeCoの給付金は、60歳になれば必ず受給できるとは限りません。

先の加入期間ごとの受給可能年齢で触れているように、加入時期によっては受け取り開始が61~65歳になることもあります。50歳以降に加入した方は、何歳に受け取ることができるかをあらかじめ把握しておきましょう。

運用次第では資産減少のリスクがある

運用する商品や運用配分は、加入者自身で選択します。加入者には運用選択の自由がありますが、運用責任も加入者にあります。運用の結果によっては、資産減少(元本割れ)を起こすリスクがあります。

加入や運用に手数料がかかる

iDeCoの積み立てに使用する口座は、金融機関で専用口座を開設する必要があります。開設手数料は2,829円で、維持手数料は金融機関によって毎月数百円かかります。

【デメリット対策】企業型確定拠出年金と併用するのもおすすめ

【デメリット対策】企業型確定拠出年金と併用するのもおすすめ

iDeCoのデメリットの対策として、企業型確定拠出年金を併用する方法があります。併用によって、受給する年金を増やせるためです。ただし、併用するためには勤務先が下記の条件を満たす必要があります。

  • 企業型確定拠出年金を導入している会社に勤めていること
  • 勤めている企業がiDeCoとの併用を認めていること

この条件のうち、企業による承認は2022年10月から緩和され、規約の定めがない場合でもiDeCoに加入できるようになります。

企業型確定拠出年金については、以下の記事で詳しく解説しています。

企業型確定拠出年金とは?よくわかるメリット・デメリットや他の企業年金との違い

企業がiDeCoとの併用を認めていなかった場合の対応

もしも勤めている企業がiDeCoとの併用を認めていなかった場合、iDeCoは転職した場合に限り、年金資産として企業型に移換できます。

新たな勤務先において「資産移換依頼書」を受け取り、必要事項を記入して提出すれば移換可能です。自分で行う手続きは以上で、書類提出後は移換元と受け入れ先とで移換処理が進められます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型確定拠出年金の違い

iDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型確定拠出年金の違い

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自助努力で成り立つ制度です。対して、企業型確定拠出年金は福利厚生であり、根本的な目的が異なります。

この他にも、iDeCoと企業型確定拠出年金にはさまざまな違いがあるため、確認していきましょう。

加入対象者

まず、企業型確定拠出年金の対象者は、厚生年金被保険者です。原則として70歳未満の会社員や私学教職員が対象となります。

一方、iDeCoに加入できるのは国民年金の被保険者です。2016年の法改正により、国民年金第3号被保険者(60歳未満の専業主婦また専業主夫)も対象になったため、基本的に公的年金制度の被保険者であれば誰でも加入できるようになりました。

掛金の限度(拠出限度額)

企業型確定拠出年金の拠出限度額は、月額55,000円もしくは月額27,500円(企業年金を併用している場合)です。

一方、iDeCoは国民年金の加入区分によって拠出限度額が異なります。それぞれの拠出限度額は以下の通りです。

  • 第1号被保険者(自営業者やその家族):月額68,000円
  • 第2号被保険者(企業年金がない場合):月額23,000円
  • 第2号被保険者(企業型確定拠出年金のみに加入している場合):月額20,000円
  • 第2号被保険者(iDeCoと企業型確定拠出年金に加入している場合):月額12,000円
  • 第2号被保険者(iDeCoのみに加入している場合):月額12,000円
  • 第2号被保険者(公務員):月額12,000円
  • 第3号被保険者(専業主婦・夫):月額23,000円
  • 国民保険任意加入被保険者:月額68,000円

積立期間

iDeCoの積立期間は、原則として、厚生年金もしくは国民年金の被保険者になった年齢から65歳までとなっています。
企業型確定拠出年金の場合は、原則、厚生年金被保険者になった年齢から70歳までです。

ただし、加入事業所の取り扱いによって異なるため注意しましょう。

掛金に関する税制優遇

前章でも触れたように、iDeCoは、全額所得控除できるメリットがあります。

また、iDeCo+(イデコプラス)では、企業年金の事業主が社員の老後をサポートするために、iDeCoに加入している社員が拠出している掛金にプラスして、掛金を拠出できる制度です。
この場合、事業主が拠出した掛金は全額損金算入することができます。

企業型確定拠出年金は事業主掛金が非課税です。加入者掛金については、全額所得控除の対象となります。

掛金と社会保険料との関係

iDeCoの場合、基本的に加入者個人が所得から掛金を拠出するため、会社員であれば社会保険料がすでに控除された状態の手取りから拠出することになります。

一方、企業型確定拠出年金は、事業主掛金と加入者掛金で社会保険料との関係が異なるのが特徴です。まず、事業主掛金は給与から拠出するわけではありません。

福利厚生の一部であり会社として拠出するため、社会保険料の算定基礎の対象外です。加入者掛金については、iDeCoと同じように加入者が手取り所得から拠出します。

運用商品

iDeCoは、運営管理機関によって選定された運用商品の中から、自由な組み合わせを選ぶことができます。運用する際は自分で方針を定めて選ばなければなりません。そのため、定期的に運用状況をチェックして、必要があれば変更することもあります。

一方、企業型確定拠出年金の場合は、勤務先が委託した運営管理機関によって選定された運用商品から選ぶのが特徴です。

運営にかかる費用の負担

iDeCoは、個人で加入する私的年金制度です。そのため、運営にかかる費用の負担も個人で負担する必要があります。

一方、企業型確定拠出年金は福利厚生であり、費用を負担するのは企業側です。運用は加入者である社員が行います。

確定拠出年金の併用に関わる事業主に必要な対応

確定拠出年金の併用に関わる事業主に必要な対応

iDeCo(イデコ)は、企業年金や企業型確定拠出年金などに加入している会社員でも加入することができます。そこで、事業主は従業員がスムーズにiDeCoを利用できるように整備をしなければなりません。

従業員のiDeCo加入に伴って事業主には、いくつかの対応が求められます。主な対応は、以下です。

事業所の登録

会社員がiDeCoを利用する場合、年に1回、勤務先に対して加入者の資格の有無の確認が行われます。そのため、加入者の情報から勤務先が分かるように、事業所の登録が必要です。

事業所の登録は、事業所において初めてのiDeCo加入者が出た際に行います。「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書 (K-101A)」に事業主と加入者(従業員)が必要事項を記入し提出することによって、国民年金基金連合会に事業所が登録されます。

加入時に必要な事務

iDeCoに加入する際、従業員は事業主に対して事業主証明書を提出します。事業主は必要事項を記入し、従業員に渡さなければいけません。記入が遅れるとスムーズに加入できなくなるため、すばやい事務手続きが必要です。

従業員の希望に合わせて掛金の納付が必要になる

加入者である従業員は、個人で掛金を振り込むだけでなく、事業主振込を選択することができます。従業員が事業主振込を選んだ場合は、事業主が掛金を国民年金基金連合会に納付する必要があります。

希望に合わせて納付できる体制づくりや、責任をもって納付することが事業主に求められます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)との併用

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)をすでに実施している事業主の場合、企業型DCに加えて個人型のiDeCoの加入を希望する従業員が出た際に、併用できるかどうかが問題になってきます。

結論、事業主が企業型DCとiDeCoの併用を認めることを規約に規定すれば、併用することが可能です。

さらに2022年10月からは、法改正により企業型DC加入者がiDeCoに加入しやすくなります。労使合意に基づく規約の定めや事業主掛金に上限引き下げがなくても、原則iDeCoに加入できるようになります。

ただ、従業員自身が企業型DCの掛金を追加できるマッチング拠出を採用している事業主では、iDeCoとの併用はできません。

事業主側でマッチング拠出を採用するのか、企業型DCとiDeCoの併用を推奨するのかを検討し、正確に従業員に周知する必要があります。

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