iDeCo(個人型確定拠出年金)をよく耳にするようになりました。資産運用の多様化によって、社会のニーズは高まっているようです。今回は、このiDeCoについて、その概要、対象となるための条件、掛金や限度額について確認します。また、企業が掛金を負担し、従業員自身が年金資産の運用を行う企業型の確定拠出年金(企業型DC)についてもあわせて説明します。企業型DCを企業が導入するメリットとデメリット、ルールについても解説していますので参考にしてみてください。

iDeCoとは?

iDeCo
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことです。毎月一定の金額(掛金)を、自分で運用しながら積み立てることができることが特徴のひとつです。運用は、金融機関の投資信託や定期預金などで行っていきます。20歳以上60歳未満の人が加入することができ、原則として60歳以降(加入期間10年以上)に受け取れる仕組みとなっています。

国民年金や厚生年金と組み合わせて、先行きの不安な老後の資金づくりとして活用できます。

制度創設の背景

iDeCoの制度が導入された背景には以下のようなことが挙げられます。企業にとっては、財務面だけでなく人事面においても関連する背景があるようです。

公的年金の状況の変化

少子高齢化の影響により、年金をおさめる世代層の負担が増加しています。給付水準の引き下げや年金の支給開始年齢の引き上げも行われており、ますます自分自身で老後の資金を用意する必要性が高まっています。

企業の退職金制度の変化

低金利が長期化していることで、従業員からの年金保険料では退職金をまかなえない企業が増加しています。企業の年金積立金不足が企業の評価にも影響してきています。

雇用に関する変化

終身雇用ができない、もしくはあてにされない雇用環境になってきています。働き方の多様化や人材流動の活発化によって、退職金や企業年金のあり方を見直す必要性が高まっています。

2018年1月に制度が改正

iDeCo
iDeCoは2001年から開始され、2017年1月にiDeCoの加入対象枠の拡大で利用者が増加しています。その後、2018年にも随時内容が見直され、改正が行われています。

従来の制度内容と改正内容

従来のiDeCoでは、掛金(拠出額)は月ごとに支払うものとされていました。掛金の下限は5,000円で、月額(年総計額)ともに限度が設定されていました。

2018年1月の改正では、拠出方法の年単位化が可能になっています。複数月分をまとめて支払うことも、1年分を支払ってしまうこともできます。支払い月は、年内であれば、自由に事前設定することができるということです。

これにより毎月の拠出が難しくても、加入者はボーナス月に一括で支払うなど自分のキャッシュフローに合わせて支払うことが可能になりました。

iDeCoの掛金の上限

iDeCoの掛金は職業などによって、それぞれ上限額が決められています。会社員や公務員については、勤務先の制度の状況によって上限額が変わってきます。

第1号被保険者
自営業者、学生、フリーランス月68,000円(年間81.6万円)

第2号被保険者
公務員月12,000円(年間14.4万円)
企業年金なし月23,000円(年間27.6万円)
企業年金(確定給付型)あり月12,000円(年間14.4万円)
企業型DCのみ実施している月20,000円(年間24万円)

第3号被保険者
専業主婦など月23,000円(年間27.6万円)

確定拠出年金の種類

iDeCo
ここで一旦、確定拠出年金の種類に関して整理をしておきます。確定拠出年金には、個人型と企業型という2つの種類があります。それぞれについて説明します。

個人型

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分の意思で加入し、契約する金融機関もその運用商品の選択も自分で行います。拠出金の支払いも全額自己負担で、自分の口座から引き落とされます。

iDeCoの加入対象者は以下の通りです。2017年1月の改正で、新たに第3号被保険者も対象となっています。

第1号被保険者自営業者、学生、フリーランスで国民年金加入者
第2号被保険者サラリーマン、公務員で厚生年金加入者
第3号被保険者上記、第2号被保険者の扶養に入っている20~60歳の主婦など

企業型

企業型確定拠出年金は、企業型DC(以下、企業DC)とも呼ばれます。企業型DCは、企業に勤務している人が対象のものです。企業が企業型DCを退職金制度として導入している場合に加入できます。

企業型DCは、企業が掛金を毎月積み立て(拠出し)ます。その上で、従業員が掛金を上乗せできる場合もあります。契約金融機関は企業が選択し、その中にある商品を従業員が選択し、運用します。

マッチング拠出制度

マッチング拠出制度とは、企業型DCに従業員が掛金を上乗せすることのできる制度です。従業員は、上限を超えない範囲で上乗せできます。

個人型(iDeCo)と企業型DCは併用できる?

iDeCoと企業DCを併用することは可能です。以下の2つの条件を満たしておく必要があります。

  1. 勤務している企業が企業型DCを導入している
  2. 勤務している企業が規約で企業型DCとiDeCoの併用を認めていること

2.については、2017年1月に制度改正前までは認められていないはずです。改正により企業の年金規約が変更されているかどうかの確認が必要となります。

ただ、上限額があるため、掛金の総額が増えるわけではありません。したがって、企業が上限まで出してくれる場合は、iDeCoの加入は不可となります。また、マッチング拠出制度を導入している場合にも併用は不可です。併用した場合、手間が増えるという点は否めません。

企業にとっての企業型DC導入のメリット・デメリット

iDeCo
では、企業が企業型DCを導入するメリットとデメリットを確認しましょう。

メリット

メリットは以下のようなものです。

退職金の支払い(退職給付債務)の心配がなくなる

確定拠出年金は、企業会計で企業が支払い責務を負う債務(退職給付債務)に計上されません。また、業績悪化、倒産などでも退職金の債務は発生しません。経営上のリスクが解消できることになります。万が一、企業側で負担できなくなっても確定拠出年金の権利は個人独立型のため、切り替えて継続していくことができるのです。

社会保険料の軽減が見込める

掛金は、従業員の給与額からの天引きとなります。給与手取りが下がれば社会保険料が減るため、企業の社会保険料の負担軽減が見込めます。

全員加入の義務はないので選択制にすることができる

確定拠出年金は全従業員の加入を求めておらず、選択制にすることができます。加入時期や掛金も自由に決められ、従業員それぞれのライフプランや老後の資金への考え方を尊重できます。

年金資金は個別に分別管理・保護されて持ち運ぶことができる(加入者メリット)

転職する場合にも、年金資金として次の企業に持ち運べる資産となります。つまり従業員にとってのリスクが減らせるわけです。一種の福利厚生であり、採用でも有利なアピール要素となるでしょう。

デメリット

企業型DCの導入や切り替えでは、システムの変更など導入のコストがかかることが考えられます。担当者の教育、また従業員自身で年金資産を運用するため、従業員への説明も必要になってくるでしょう。

企業型DCを導入した場合に従業員に加入を強制できる?

企業型DCは、従業員全員に強制的に加入させることもできます。ただ、加入するかしないかを従業員が選べる選択制を取り入れている企業もあります。選択しない従業員に対しては、代替となる対応が必要です。

企業型DCの導入方法

iDeCo
では、企業型DCの導入方法について、導入、準備、実施のステップでご説明します。

導入の検討

1.企業の現状把握・制度導入の必要性の検討

企業の現状と将来的な見通しなどを踏まえ、企業型DC導入の必要性と意義を検討します。

2.導入効果を検証し、導入方針を策定

対象者検討、現行制度との調整、拠出金の検討などを行います。

3.労使の合意

企業の制度として導入するためには、まず労働組合か、労働者代表との合意が必要です。導入することへの合意だけでなく、制度の内容についても同意を得ることが大切です。

導入の準備

4.企業型年金規約を策定し、厚生労働省へ申請

企業の運営機関から、厚生労働省に手続き申請を行います。

5.資産運用機関と商品の選定

企業が利用する金融機関と、その商品を選定します。

実施

6.従業員への周知・資産運用教育

労使合意の上で策定された企業型年金規約が、厚生労働省の承認を受けたことを周知します。同時に、制度内容はもちろん、資産運用に関する知識教育を行うことも求められています。導入時だけでなく、継続して講習会などを行いましょう。

7.導入・運営開始

企業型DCを導入し、実施していきます。