慶弔見舞金制度とは?8割以上の企業が導入している慶弔見舞金の種類と相場
法的に実施義務のない法定外福利厚生は、企業が従業員やその家族のために独自に導入をする制度です。
そのひとつである慶弔見舞金制度は、祝い事や不幸に対して企業がお金を支給する制度です。
今回は慶弔見舞金制度について、見舞金の種類や相場、導入メリットなどを詳しく解説していきます。
まずはここから:
目次[非表示]
- 1.慶弔見舞金とは
- 1.1.慶弔見舞金の種類
- 1.2.慶弔見舞金の相場
- 1.3.慶弔見舞金制度を導入している企業は8割以上
- 2.慶弔見舞金制度の導入メリット
- 3.慶弔見舞金支給規定の作成ポイント
- 3.1.ステップ1.支給対象者を決める
- 3.2.ステップ2.支給する慶弔見舞金の種類を選定する
- 3.3.ステップ3.慶弔見舞金の金額を定める
- 3.4.ステップ4.手続きの方法や必要書類を決定・用意する
- 4.慶弔見舞金制度を導入する際の注意点
- 5.まとめ
慶弔見舞金とは
慶弔見舞金とは、従業員や従業員の家族に祝い事や不幸があったときに支払われるお金のことです。
慶弔見舞金には、祝い事や不幸によっていくつかの種類があります。
慶弔見舞金の種類や相場を解説していきます。
慶弔見舞金の種類
慶弔見舞金の種類には、以下のようなものがあります。
種類 |
内容 |
結婚祝い金 |
従業員が結婚した際に支給される |
出産祝い金 |
従業員またはその配偶者が出産したときに支給される |
死亡弔慰金 |
|
傷病見舞金 |
従業員が傷病を理由に休業した場合に支給される |
災害見舞金 |
従業員が災害によって被害を受けたときに支給される |
この他にも、企業独自で以下のような事柄に対して支給している慶弔見舞金もあります。
種類 |
内容 |
就任・昇進祝い金 |
従業員が役職に就任・昇進した際に支給される |
成人祝い金 |
従業員が成人した際に支給される |
創立記念祝い金 |
企業の創立を記念して支給される |
開店・開業祝い金 |
店舗の開店や独立開業に対して支給される |
ペット弔慰金 |
従業員が飼っているペットが死亡したときに支給される |
慶弔見舞金の相場
慶弔見舞金の支給に該当するとき、どのくらいの金額が支給されるのかも気になるところです。
企業が独自に設定できるため金額にばらつきはあるものの、おおまかな相場は以下のようになっています。
種類 |
金額 |
結婚祝い金 |
10,000~30,000円 |
出産祝い金 |
10,000~30,000円 |
死亡弔慰金 |
10,000~100,000円 |
傷病見舞金 |
10,000~30,000円 ※業務上での傷病は金額が高い傾向がある |
災害見舞金 |
20,000~100,000円 |
慶弔見舞金制度を導入している企業は8割以上
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、慶弔見舞金制度を導入している企業は、86.5%を占めています(n=2809社)。
また、46.6%の企業が非正規雇用従業者に対しても慶弔見舞金制度を適用しています。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査
しかし、従業員にとって慶弔見舞金制度はそれほど必要とされていないという事実もあります。
従業員(8,298人)に対して、自分にとって特に必要性が高いと思う制度・施策を聞いたところ、慶弔見舞金制度の必要性が高いと回答した人は14.5%でした(勤務先での制度・施策の有無にかかわらず)。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業における福利厚生施策の実態に関する調査
上位は人間ドック受診の補助(21.8%)、慶弔休暇制度(20.0%)、家賃補助や住宅手当の支給(18.7%)でした。
従業員は、健康や休暇に関する制度・施策の必要性を感じています。
さらに今後は、テレワークや在宅勤務に関する制度・施策が上位に入ってくるでしょう。
法定外福利厚生にかけられる原資には限りがあります。
慶弔見舞金制度を導入している企業は多いですが、その制度がそれほど従業員から求められている制度ではないという事実を踏まえて、制度の検討をするのがよいでしょう。
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参照:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構
慶弔見舞金制度の導入メリット
慶弔見舞金制度を導入することは、企業にとって多くのメリットがあります。
慶弔見舞金制度の導入メリットを3つ紹介します。
メリット1.一定の範囲内の慶弔見舞金は非課税になる
慶弔見舞金は、一定の範囲内の金額であれば福利厚生費として認められます。
法定外福利厚生にかかる福利厚生費は、基本的には非課税扱いです。
支給額が社会通念上で妥当と認められる金額であれば、非課税になります。
紹介した慶弔見舞金の相場などを参考に適切な金額を設定すれば、企業の負担を軽減(節税)しながら慶弔見舞金制度を導入できます。
メリット2.企業と従業員のエンゲージメントを高める
結婚や出産、傷病などに対して企業が従業員に金銭的な補助をすることで、エンゲージメント(つながり・結びつき)を高めることができます。 企業と従業員のエンゲージメントは定着率にも関わります。慶弔見舞金制度をはじめとした法定外福利厚生が手厚く整備されていると労働環境は良くなり、長く活躍してくれる人材が増えていきます。
メリット3.人材採用にプラスの効果をもたらす
慶弔見舞金制度などの福利厚生の充実は、企業のイメージや採用活動にも深く影響します。
法定外の福利厚生が充実しているほど、従業員を大切にしているという企業イメージがつきやすくなります。
従業員を大切にしているという企業イメージは、企業の採用活動においてプラスの効果をもたらします。
求職者が就職先を選ぶ際に重視する点は、給与や仕事内容だけではありません。
福利厚生の充実(働きやすさや待遇、従業員を大切にしているか)も重視しています。
そのようなことから、慶弔見舞金制度などの福利厚生の充実は企業の採用活動を有利にします。
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慶弔見舞金支給規定の作成ポイント
慶弔見舞金の支給に関する取り決めを慶弔見舞金支給規定といいます。
この規定の作成義務はありませんが、ない場合は企業と従業員で行き違いが発生する可能性があるので注意が必要です。
どのように慶弔見舞金支給規定を作成するのかを4つのステップで解説します。
ステップ1.支給対象者を決める
まず、慶弔見舞金を誰に支給するのか対象者を決めます。
具体的には、雇用形態や勤続年数などの条件を設定していきます。
正規の従業員だけに適用するのか、それとも非正規従業員を含むすべての従業員を適用するのか具体的な条件を明記します。
ステップ2.支給する慶弔見舞金の種類を選定する
支給対象者が決まったら、どのタイミングで支給するのか、それと慶弔見舞金の種類を選定します。
一般的な慶弔見舞金は、結婚祝い金、出産祝い金、死亡弔慰金、傷病見舞金、災害見舞金の5つです。
ステップ3.慶弔見舞金の金額を定める
慶弔見舞金の種類に応じて、金額を定めます。
先に紹介した相場を参考に、課税対象にならない範囲(常識の範囲内)で金額を決定します。
死亡弔慰金や傷病見舞金は、業務上か業務外かで企業の責任が異なるので、金額に差をつけるのが一般的です。
勤続年数や役職で金額に差をつける場合もありますが、あまりおすすめはしません。
慶事も弔事も人によって差はありません。
差をつけてしまうと、従業員のモチベーションに悪影響を与える可能性があります。
また、支給額の差が従業員間トラブルを引き起こす可能性もあります。
それと、役員に対して高額な慶弔見舞金を支給した場合は、役員賞与に認定される可能性があります。
役員賞与は、課税対象です。
このような理由から、支給額に差をつけることはあまりおすすめしません。
ステップ4.手続きの方法や必要書類を決定・用意する
最後に、手続きの方法を定め、手続きに使用する必要書類などを用意します。
手続き方法や必要書類があらかじめ決まっていれば、従業員が支給条件に当てはまった際に、トラブルが起きることなくスムーズに申請できます。
慶弔見舞金制度を導入する際の注意点
慶弔見舞金制度を導入するにあたって、いくつかの注意点があります。
支給するための準備や支給額設定などには注意が必要です。
以下、3つの注意点をあらかじめおさえておきましょう。
注意点1.支給するための原資を確保しておく
慶弔見舞金は従業員の生活を支えるためのお金ですが、企業にとっては出費になります。
そのため、慶弔見舞金制度を導入したにも関わらず、支払い原資がなければ経営が傾いてしまうかもしれません。
支給のための資金を確保しておくことと、高額になりすぎないように注意が必要です。
注意点2.高額な支給額を設定すると課税対象になる
慶弔見舞金が高額の場合、福利厚生費として認められず課税対象(給与扱い)になる可能性があります。
非課税の福利厚生費として計上するためには、「社会通念上、妥当な範囲の金額」でなければなりません。
慶弔見舞金の相場などを参考にして、妥当な範囲の支給額を超えない注意が必要です。
注意点3.慶弔見舞金支給規定を必ず作成しておく
慶弔見舞金支給規定は作成を義務づけられているわけではありません。
ただし、規定がないことでトラブルが起きたり、問題の解決が遅れたりする可能性があります。
トラブルや問題解決の長期化は、従業員に不信感を与えます。
既に制度があり規定がない企業も、慶弔見舞金支給規定を作っておくことをおすすめします。
まとめ
8割以上の企業が導入をしている慶弔見舞金制度。慶弔見舞金の代表的な種類は5種類。
- 結婚祝い金
- 出産祝い金
- 死亡弔慰金
- 傷病見舞金
- 災害見舞金
それぞれの支給額相場は、以下。
- 結婚祝い金 10,000~30,000円
- 出産祝い金 10,000~30,000円
- 死亡弔慰金 10,000~100,000円
- 傷病見舞金 10,000~30,000円
- 災害見舞金 20,000~100,000円
慶弔見舞金制度のメリットは3つ。
- 一定の範囲内の慶弔見舞金は非課税になる
- 企業と従業員のエンゲージメントを高める
- 人材採用にプラスの効果をもたらす
慶弔見舞金制度を導入する際の注意点は3つ。
- 支給するための原資を確保しておく
- 高額な支給額を設定すると課税対象になる
- 慶弔見舞金支給規定を必ず作成しておく
新型コロナウイルス感染拡大を機に、様々な手当が見直されています。
在宅勤務が増えたことで通勤手当は実費精算へ、かわりに在宅勤務手当の新設が各社で検討されています。
そのような世の中にあって、慶弔見舞金制度も見直しが必要かもしれません。
従業員の慶事を祝うことや不幸をお見舞いすることは大事なことです。
しかし、従業員は慶弔時には見舞金よりも休暇制度のほうが必要性が高いと思っています(企業における福利厚生施策の実態に関する調査より)。
時代とともに福利厚生のあり方は変わっていきます。
企業は従業員のために制度のあり方、導入を検討しましょう。