企業の健康管理業務は煩雑。健康診断・健康管理の基礎知識と業務効率化
従業員の健康管理業務ではやるべきことが多く、煩雑になりがちです。そのため健康管理業務をどのように効率化すべきか悩んでいる方は少なくないでしょう。
企業健康診断やその他の健康管理業務における課題は、アウトソーシングで大きく軽減できます。
効率よく業務を進めるため、外部サービスの利用を検討してください。今回はこうした従業員の健康管理に関する基礎知識のほか、業務の負担軽減の方法を紹介します。
健康管理業務について疑問のある方は、ぜひチェックしてください。
■参考記事;健康診断の実施は企業の義務。対象者や検査項目など健康診断の基本を解説!
目次[非表示]
- 1.健康診断の実施は企業の義務
- 2.一般健康診断の基本概要
- 2.1.一般健康診断その1.雇い入れ時の健康診断
- 2.2.一般健康診断その2.定期健康診断
- 2.3.一般健康診断その3.特定業務従事者の健康診断
- 2.4.一般健康診断その4.海外派遣労働者の健康診断
- 2.5.一般健康診断その5.給食従業員の検便
- 2.6.対象となる常時使用する労働者にパート・アルバイトが含まれる?
- 3.企業健康診断関連を業務効率化するには
- 3.1.健康診断業務のアウトソーシング
- 4.企業向け健康管理システムを導入する主なメリット
- 4.1.データの一元管理による業務負担の軽減
- 4.2.課題抽出・スクリーニングの効率化
- 4.3.健康状態の可視化・意識向上
- 5.おすすめの企業向け健康管理システム3選
- 5.1.【健康状態の可視化・意識向上】リロクラブ「Relo健康サポートアプリ」
- 5.2.【業務負担の軽減・効率化】エヌ・エイ・シー 健康管理システム「Be Health」
- 5.3.【業務負担の軽減・効率化】インテージテクノスフィア「すこやかサポート21」
- 6.まとめ
健康診断の実施は企業の義務
企業が従業員に実施をする健康診断は、従業員に対するサービスではなく法律で定められた義務です。 そのため、コストがかかるから、人手が足りないのでといった理由で健康診断を実施しなかったり、必要な診断項目を省いたりすることはできません。
企業が実施する健康診断の詳細を確認する前に、まずは関連する法律と健康診断の主な種類を説明します。
■参考記事;健康診断の実施は企業の義務。対象者や検査項目など健康診断の基本を解説!
健康診断の実施は労働安全衛生法で定められている
企業が実施する健康診断は、労働安全衛生法によって義務付けられています。 事業者が労働者に健康診断を受診させなければいけない旨は、労働安全衛生法の第7章 健康の保持増進のための措置 第66条で規定されています。診断結果については個人結果表を作成し、5年間保管しなくてはなりません。
労働安全衛生法に違反をすると罰則がある
労働安全衛生法には罰則規定があり、事業者が健康診断の実施義務を怠った場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
また、健康診断を受けさせないことにより労働者に健康被害が生じてしまった場合は、損害賠償責任を負うリスクも出てきます。 事業者側には罰則がありますが、労働者本人が健康診断を受けないことによる罰則は特にありません。
ただし、事業者には労働者に対する安全配慮義務があるため、健康診断未受診者に対して受診を促す必要があります。
■参考記事;安全配慮義務とは?働きがいをもてる労働環境の整備でやるべきこと
企業が実施する健康診断には大きく2種類ある
企業が実施する健康診断にはさまざまな種類がありますが、大別すると
- 一般健康診断(一般健診)
- 特殊健康診断(特殊健診)
の2種類に分けられます。
一般健康診断
一般健康診断は、業種や職種にかかわらず実施される一般的な企業健診の総称です。年1回実施される定期健診のほか、海外赴任者向けの健康診断なども含まれます。
特殊健康診断
特殊健康診断は、有害物質を取り扱う特殊業務や危険業務に従事する人のために実施する健康診断です。主に以下のような特定業務が対象となっています。
- 高気圧作業
- 放射線を取り扱う業務
- 特定化学物質を取り扱う業務
- 石綿を取り扱う業務
- 鉛を取り扱う業務
- 四アルキル鉛を取り扱う業務
従業員の健康は経営課題である
これらの健康診断の対象とならない従業員の健康管理については、企業が責任を負う義務はありません。 しかし、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に取り組む健康経営への意識の高まりから、より積極的に全従業員の健康管理を行う企業も増えてきています。
こうした取り組みによって、離職率の低下や生産性の向上をもたらし、業績向上や企業イメージアップが期待できます。
■参考記事;健康経営は、将来に向けた投資。メリットと実践ポイントを詳しく解説
一般健康診断の基本概要
一般健康診断はすべての企業に義務づけられているので、詳しく説明します。 一般健康診断は5種類あり、必要に応じて対象者を受診させる必要があります。それぞれの内容を確認しましょう。
一般健康診断その1.雇い入れ時の健康診断
企業は常時使用する労働者を新たに雇用する時には健康診断を受けさせなければならず、所定の検査項目は省略できません。 ただし、対象者が3ヶ月以内に医師の診断を受けた項目については、証明できる書類があればその項目に限り省略することが可能です。
一般健康診断その2.定期健康診断
定期健康診断は常時使用する労働者を対象に、企業が1年に1回実施する義務があります。 定期健診についても検査項目が指定されていますが、20歳以上の人の身長やBMI20未満の人の腹囲など、医師が必要ないと判断した項目については省略が可能です。
一般健康診断その3.特定業務従事者の健康診断
深夜業務などの特定労働環境で働く従業員に対して実施する健康診断です。配置転換のタイミングのほか、6ヶ月以内おきに1回、定期健康診断と同じ項目を受ける必要があります。 胸部エックス線検査は1年以内ごとに1回実施すればよいとされています。
一般健康診断その4.海外派遣労働者の健康診断
従業員を6ヶ月以上海外に派遣する場合は、派遣前に所定の健康診断を受けさせなければなりません。 基本的に定期健康診断の項目に準じますが、医師が必要と判断した場合は、血中の尿酸値の検査やB型肝炎ウイルス抗体検査などの項目が追加されます。 なお、海外勤務に6ヶ月以上従事した人が帰国し、国内の業務に就く場合も同様の健康診断が必要です。
一般健康診断その5.給食従業員の検便
社員食堂や付随する炊事場の業務に従事している人に対しては、雇い入れ時や配置転換のタイミングで検便をおこなう必要があります。
対象となる常時使用する労働者にパート・アルバイトが含まれる?
健康診断の対象となる常時使用する労働者は、以下の2つの要件を満たせばパートやアルバイトといった短時間労働者も含まれます。
参考:よくあるご質問|東京労働局
- 期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
- その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
なお、特定業務従事者健診については、6ヶ月以上使用されることが予定され、または更新によって6ヶ月以上使用されている者が対象となっています。
企業健康診断関連を業務効率化するには
企業が実施する健康診断関連の業務は、人的リソースが不足しがちな中小企業にとっては大きな負担としてのしかかってきます。 とはいえ、従業員に対する健康診断は法律で義務付けられているため、業務自体を省くことはできません。そのため、健診関連業務のアウトソーシングが有効です。
健康診断業務のアウトソーシング
企業の人事・総務が担う、健康診断関連の業務は多岐にわたります。
- 医療機関の手配や日程調整
- 従業員への健診告知・受診促進
- 健診結果の記録・保管
- 従業員への健診結果の通知
- 労働基準監督署への報告資料の作成・提出
- 医師による保健指導や面接指導の段取り など
これら本業に直接関係のない業務は、アウトソーシングすることで業務効率化できます。健康診断に関連する業務のアウトソーシングサービスについて、3社を紹介します。
リロクラブ「健康診断代行サービス」
リロクラブの「健康診断代行サービス」は、煩雑になりやすい健康診断の関連業務をまとめてサポートするサービスです。
独自の予約システムや健康診断結果管理システムで管理できるほか、未受診者の催促や労働基準監督署への報告業務などを代行しています。 要望に合わせたカスタマイズが可能で、健康診断関連の業務の効率化が図れ、担当者が通常業務に専念しやすくなります。
iCARE「Carely」
iCAREの「Carely」は、人事労務のための健康診断を効率化するクラウドサービスです。健康診断に関わる以下のような業務を効率化できます。
- 健診クリニックの選定
- 従業員への受診日ヒアリング
- 健診予約
- 受診勧奨
- 労基署報告
- 就業判定
- 健診機関への支払い代行など
iCAREは86%の産業保健業務従事者が推奨する健康管理システムです。心身の包括的な健康管理ができることから、幅広い企業におすすめのシステムといえるでしょう。
またiCAREを実際に導入した企業では、健康管理に関する業務の手間が4分の1程度となりました。現在の担当者に大きな負担がかかっている場合、iCAREを検討してみてください。
ウェルネス・コミュニケーションズ「ネットワーク健診」
ウェルネス・コミュニケーションズの「ネットワーク健診」は、企業・健康保険組合が行う健康診断において、医療機関紹介・予約・精算代行・結果データ一元化まで一括代行します。 全国47都道府県に約1,700の医療機関と業務提携をしており、全国に支社・支店がある企業・健康保険組合の健康診断に対応可能です。
企業向け健康管理システムを導入する主なメリット
従業員の健康管理は企業の健康経営に欠かせない要素であるため、多くの企業が積極的に取り組んでいます。 思うように取り組みができないという悩みを抱えている企業では、専門企業のリソースを活用することが有効な手段となる例が多くあります。
専門企業のリソースを活用すること、すなわちアウトソーシングによって、次のような課題を解決ができます。
データの一元管理による業務負担の軽減
健康管理システムの導入により、従業員の健康に関する各種データを一元管理できるところが大きなメリットです。従業員の健康関連情報がシステム化されていない企業では、健康診断や保健指導などのデータをExcelで管理し、印刷・保管しているところがいまだに多いです。
複数のExcelファイルの管理や紙での管理は煩雑になりがちですが、健康管理システムを利用すれば、従業員の健康関連の情報をデジタルデータで一括して管理できるようになります。 従業員の健康に関するデータを一元で管理できるシステムやサービスを活用すれば、各種事務作業やデータ管理作業などの負担軽減が可能になります。
また、デジタルデータで一元管理ができれば検索や情報へのアクセスなどが容易になり、効率的な管理が可能です。さらに、ペーパーレス化にも役立ちます。
課題抽出・スクリーニングの効率化
健康管理システムで従業員の健康に関するデータを一元管理できるようになれば、集計作業の手間が省け、部門ごとの傾向や課題をスムーズに抽出できるようになります。 また、保健指導が必要な従業員のスクリーニングも簡単にでき、フォロー業務の効率化が図れます。
健康状態の可視化・意識向上
健康管理システムを導入すると、従業員一人ひとりの健康状態や生活習慣が可視化できます。 健康意識があまり高くない人でも、自分の心身の状態を継続的にデータで客観視できるようになれば、自身の健康に対する向き合い方が変わってくるはずです。
おすすめの企業向け健康管理システム3選
では、実際にどのような企業向け健康管理システムがあるのでしょうか。最後におすすめのサービスを3つ紹介します。
【健康状態の可視化・意識向上】リロクラブ「Relo健康サポートアプリ」
健康経営の第一歩に適しているのが、スマートフォンで手軽に健康管理ができる「Relo健康サポートアプリ」です。
<特徴>
- 専属AIアシスタントによる3,000万通り以上の健康アドバイス機能
- 在宅勤務によって増えてきている運動不足を解消する動画を配信
- スマホのカメラで撮影した食事を総合評価し、食生活の適切なアドバイスがもらえる
- 歩数やBMI値をチーム間で競い合えるランキングイベント機能
従業員一人ひとりが楽しく健康管理できるようになり、健康状態や生活習慣の見える化で健康意識の向上が期待できます。
【業務負担の軽減・効率化】エヌ・エイ・シー 健康管理システム「Be Health」
ヘルスケアシステム開発のパイオニアでもあるエヌ・エイ・シーが、シンプル機能で煩雑な健診データ管理をサポートしてくれます。
<特徴>
- オンプレミス版とプライベートクラウド版から選べる
- 健診結果を経年で閲覧できる
- 健診機関ごとに異なる基準値を、人間ドック学会の基準値に統一して自動判定
- リスクレベルを考慮した過重労働管理機能
- 必要に応じてカスタマイズ機能を追加可能
わかりやすい操作性により、健康診断関連業務に携わる人の負担を軽減します。
【業務負担の軽減・効率化】インテージテクノスフィア「すこやかサポート21」
「すこやかサポート21」はさまざまな健康データを一元管理、見える化するクラウド型健康管理システムです。
<特徴>
- 事業場でバラバラになりがちな業務歴管理を一元化・効率化できる
- 全社の傾向把握や会社別・組織別の比較によって健康経営を評価できる
- 健康診断、残業、ストレス、休業など各種健康管理データの一元管理が可能
- 一般健診の労基署報告だけでなく、特殊健診の労基署報告にも対応
産業医監修のもと画面を作成しており、特に産業保健スタッフには使いやすいと好評です。
まとめ
健康経営への意識の高まりから、従業員の健康管理は重要視されています。 労働安全衛生法によって義務付けられている企業の健康診断は、大きく2種類です。
- 一般健康診断(一般健診)
- 特殊健康診断(特殊健診)
一般健康診断(一般健診)は次の5つの種類に分かれます。
- 雇い入れ時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
そして、企業向け健康管理システムを導入する主なメリットは3つです。
- データの一元管理による業務負担の軽減
- 課題抽出・スクリーニングの効率化
- 健康状態の可視化・意識向上
従業員の健康は企業にとって重要ですが、従業員それぞれの抱えている健康課題を企業が把握することは非常に難しいです。健康管理システムやAI(Artificial Intelligence:人工知能)の力を借り、従業員の健康に関する各種データを効率的に、かつ効果的に管理しましょう。