健康経営

安全配慮義務とは?従業員と職場の安全性を高めるためにすべきこと

貴社では十分に安全配慮義務が果たされていますか?ここでは、安全配慮義務の概要とその必要性、企業が使用者として安全配慮義務を果たすために取るべき措置や、具体的な施策の例を紹介します。また、日本国内とは異なる種類のストレスに晒される海外勤務者に対する安全配慮についても触れていきます。企業と従業員のリスク回避の一環としてお役立てください。

2018年03月13日更新

RELO編集部

安全配慮義務とは?

安全配慮義務
安全配慮義務は、企業が負う義務です。その義務とは、従業員が安全で健康に働けるように配慮することです。労働契約法の第5条に定められ、2008年3月に正式に施行されるようになりました。

<労働契約法の第5条 条文>
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

使用者としての安全配慮義務を怠ったことで、労働者に損害が生じてしまった場合、安全配慮義務違反となります。過去には安全配慮義務違反によって、損害賠償が発生している判例もあります。

<安全配慮義務違反となる視点>

  1. 事業者が予見できた可能性があったかどうか(予見可能性)
  2. 事業者が回避できた可能性があったかどうか(結果回避性)

また、企業の安全や健康というと、工場や建設・工事現場などの危険作業や有害物質に対するものをイメージされる方も多いと思います。厚生労働省は、条文の文言にある「生命、身体などの安全」には、心(メンタル)の安全や健康も含まれると通達しています。

安全配慮義務の必要性

安全配慮義務
安全配慮義務の規定は、陸上自衛隊事件(最高裁判決昭和50年2月25日)や川義事件(最高裁昭和59年4月10日)の判例をきっかけにして考え方が確立し、明文化されたものです。いずれも自衛隊員や従業員が職務中に死亡事故が起きてしまった判例です。

安全配慮義務の規定を存在させ、使用者が対策を講じることで、未然に防げる労使双方の損害があります。危険や事故はない(ゼロ)が最高の成果のため、防げた事象や損害を把握するのは難しいのではないでしょうか。言い換えると、安全や健康の措置の必要性も意識しなければ見えにくいものでもあります。

ですから、労働契約法、労働安全衛生法の中に規定を定める働きかけは有効と思われます。企業の規模、形態、事業内容によって講じるべき措置はそれぞれに異なり、多岐にわたることもあり、その分、事業所ごとに強い意識が求められます。安全配慮義務があるからこそ、事業を俯瞰する機会となり、回避や防止措置が必要なものごとに気づける確率も高められるのではないでしょうか。

安全配慮義務を果たすための施策例

健康診断
労働安全衛生法などの労働安全衛生法関係法令では、企業が安全配慮義務を果たすために取るべき措置が規定されています。考えられる施策例を交えながらご紹介します。

安全装置を設置する

事故やケガの発生する可能性のある場所には、適切な安全装置を設置しなければなりません。安全装置には機械的なものだけでなく、覆いや囲いなど安全確保に有効なものとされています。また、それらの整備や点検も必要です。

安全衛生管理体制を整える

企業の規模に合わせて、安全衛生管理体制を整える必要があります。
たとえば、職場で従業員の健康に悪影響が出ないよう作業環境管理を行なう衛生管理者や安全衛生推進者の設置。主に現場での作業管理を行なう作業主任者、作業責任者も必要となるでしょう。健康管理を行なう産業医、産業保健指導担当者などの配置の有効性も高まっています。

安全衛生教育の実施

新規従業員や配置換えをした従業員には、速やかに安全衛生に関する教育を行なわなければなりません。従業員が従事する仕事に関する取扱い事項を十分に伝達します。実務の手順だけでなく、危険防止策や万が一事故が発生した際の対処法の教育も必要です。

健康診断を実施する

事業者は1年に1回、従業員に健康診断を受けさせる義務があります。深夜業務を含む有害業務に携わる従業員に対しては、配置転換時および半年に1回の健康診断が必要とされています。

メンタルヘルス対策を実施する

過度な労働や人間関係でストレス過剰になる労働者が増えています。従業員のメンタルヘルス対策は、現代企業の大きな課題のひとつといえるでしょう。

防止策としては、個々の従業員に対するメンタルヘルス教育や研修の実施、情報提供などがあります。また、企業全体の職場環境、業務フローを見直し、従業員が働きやすいように改善策をとることも有効です。そのためのアンケートを実施している企業もあります。2015年にストレス度を把握するためのストレスチェックの実施は義務化されました。

いつでも相談できる社内カウンセラーを設置することも有効でしょう。

人間関係の改善やパワハラの撲滅

従業員の精神面の安全や健康を考えるとき、職場の人間関係や上下関係の在り方にも配慮する必要があります。

人間誰しも好き嫌いはあるにせよ、組織の一員として最低限の雰囲気向上のための行動は遂行すべきことです。挨拶、笑顔、時間厳守などを企業側のルールと定めることで人間関係が円滑化した企業もあります。まるで幼児教育のようですが、基本的な要素が欠けることが人間関係にもたらす悪影響は大きいことの裏返しでもあります。

また、パワハラや差別も以前より顕在化するようになりました。これらの問題の発端が、加害者の故意ではないことも多いです。どんなことがパワハラや差別にあたるのかを、研修や教育を通じて従業員に認識させることも防止策となるでしょう。パワハラを許さないという姿勢を事業者として発信することも大切です。

労働時間の管理

長時間労働をさせないという国の規制も、年々厳格化しています。まずは、従業員の勤怠管理での実態把握が欠かせません。その上で、使用者として従業員の労働が法定労働時間を超えないような措置や対策を講じていく必要があります。

残業する際には、上司への申請と承認を必須としたり、朝型勤務の推奨、勤務時間内に集中時間を設けるなどの各社の工夫が見られます。

海外勤務者に関する安全配慮義務

海外赴任
グローバル展開をする企業は、海外に従業員を送り出す際にも、従業員の安全と健康への配慮を徹底しなければなりません。日本とは異なる生活環境に身を置く従業員のために取るべき措置は国内のそれとは大きく異なるものもあります。企業が現地の治安、衛生、生活情報を詳しく把握しておくことは言うまでもないでしょう。

治安への配慮

テロや暴動が起こる危険性のある地域で働く従業員には、ボディガードをつける、常に安全な車を手配するなどして、従業員に安心して業務に取り組める環境を提供すべきでしょう。

海外赴任前に予防接種をさせる

発展途上国やアフリカ諸国などでは、感染症に対する警戒が欠かせません。
従業員が事前情報を得ていても得ていなくても、企業は予防接種を受けさせる義務があります。また、企業側が、医療アシスタンスサービスなどの充実した医療機関を選定するというのも一策です。

健康や安全に関する研修

実際に現地で生活をする従業員に対して、健康や安全に関する研修を行なうことも大切です。上記の治安情報、感染の可能性なども含め従業員に認識させておくことが重要になってきます。従業員への意識づけによって回避できるリスク幅は大きいものです。

生活環境が変わることへの不安、現地生活に入ってからのストレスをできるかぎり軽減するためにも研修・教育を徹底することをおすすめします。

メンタルサポート

生活環境や職場環境の違いに加えて、その上にのしかかる任務遂行のプレッシャーも発生します。海外勤務者でメンタルの不調を訴える人は少なくありません。
精神的にタフな人材を選定することを前提としている企業がほとんどかと思いますが、赴任中のサポートも欠かせません。産業医などと連携して、電話、メールなどで相談できるプロセスを構築しておくことも一策でしょう。

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