
保養所とは?“持たない”時代の新しい福利厚生のかたち
近年、企業が従業員の健康やモチベーション向上を図るために、さまざまな福利厚生施策を導入するケースが増えています。
そのなかでも、保養所はチームビルディングなど、多角的なメリットがある施策の一つです。
本記事では、自社所有の“ハコモノ型”から“持たない”契約型まで、保養所を巡る最新の動向や導入のポイントを整理します。
目次[非表示]
- 1.保養所とは?福利厚生施設の一種
- 2.福利厚生で使われる保養所の主な4タイプ
- 3.保養所の費用は福利厚生費として計上できる?
- 4.保養所を導入するメリットとは
- 4.1.従業員のリフレッシュ・モチベーション向上
- 4.2.企業・組織のイメージアップ
- 4.3.社員同士のコミュニケーション活性化
- 4.4.福利厚生面の差別化要素
- 5.保養所導入のデメリットと注意点
- 6.変化する福利厚生施設のトレンド
- 7.現代型「持たない保養所」の活用方法
- 7.1.契約保養所の活用
- 7.2.福利厚生代行サービスの導入
- 7.3.保養所以外で注目される福利厚生
- 8.福利厚生代行サービス提供企業4社
- 8.1.リロクラブ 「福利厚生倶楽部」
- 8.2.イーウェル「WELBOX」
- 8.3.ベネフィット・ワン「ベネフィット・ステーション」
- 8.4.リソルライフサポート「ライフサポート倶楽部」
- 9.福利厚生としての保養所まとめ
保養所とは?福利厚生施設の一種
保養所は、企業や団体が従業員のために用意する福利厚生施設のひとつで、主にレジャーや休暇を過ごすために利用されます。
企業が自社で保有・運営する保養所では、社員が手頃な料金で利用できるよう配慮されており、研修や家族旅行など、さまざまな目的で活用できるのが特徴です。
特にリゾート地にある保養所は、自然や温泉を楽しめる環境にあり、都会の喧騒を離れて心身をリフレッシュできる場所として人気です。
また、自社施設を持たずに、借上保養所や会員制リゾートを活用する企業も増えています。これにより、初期投資を抑えつつ、社員の満足度向上につなげることができます。
※福利厚生施設とは、企業が従業員の慰安や健康維持などのために設置・運営・管理をする施設の総称で、保養所のほかに以下のような施設があります。
- 社宅
- 独身寮
- 運動施設
- 社員食堂
- 託児施設 など
♦福利厚生施設については次の記事をご覧ください:福利厚生施設とは?減少傾向にある福利厚生施設の問題点とメリット
福利厚生で使われる保養所の主な4タイプ
保養所には、自社で所有・運営するものから、外部の施設を活用するものまで、いくつかの運営形態があります。
かつては直営保養所が主流でしたが、近年はコストや管理の手間を抑えられることから、契約型や共同利用型の保養所を選ぶ企業が増えています。
どのタイプを採用するかは、運営の自由度、初期費用、維持コスト、そして従業員の規模やニーズによって大きく変わります。
►以下の表は、それぞれの保養所タイプの特徴とメリットをまとめたものです。
保養所の費用は福利厚生費として計上できる?
費用を福利厚生費として計上する際には、従業員が公平に利用できる体制や税務上の条件を整えることが重要になります。
福利厚生費として認められるためには、全社員が等しく利用できることが大前提です。
利用状況の記録や適正な利用料金の設定など、税務上の要件を満たすように運用ルールを整備しておく必要があります。
もし特定の役職や社員だけが恒常的に利用できるような仕組みだと、福利厚生費としての計上が認められない可能性もあります。
また、施設利用時の自己負担額の設定についても注意が必要です。
過度に利用者の負担を軽減してしまうと、課税対象になるケースも考えられるため、税理士などの専門家と連携して最適な運用方法を検討しておくと安心でしょう。
参考:森田大税理士事務所「効率的な福利厚生費の事例 -損金となるポイントは? 」
保養所を導入するメリットとは
保養所を導入することで、従業員の満足度向上だけでなく、企業の魅力やブランディングにも良い影響を与えます。
従業員のリフレッシュ・モチベーション向上
保養所でまとまった休暇を過ごすことは、心身のストレスを軽減するうえで効果があります。
自然豊かな環境や、日頃のルーティンとは異なる施設での滞在は、新しい刺激をもたらすと同時に気分転換にも最適です。
非日常の環境に身を置くことで普段とは異なる視点を得られ、仕事に対する意欲や創造力が高まるきっかけにもなるでしょう。
たとえば、保養所の温泉やスポーツ施設を利用したレクリエーションを通じて疲労回復を促進し、その後の業務効率が上がったりします。
社内アンケートで「保養所利用後に仕事へのモチベーションが高まった」という声もあり、メンタルヘルス維持の観点からも重要な取り組みといえます。
♦併せて読みたい:メンタルヘルス不調のサインを見極めて、離職も生産性低下も未然に防ぐ方法!
企業・組織のイメージアップ
充実した福利厚生は、企業の社会的信用や認知度向上に直結します。
たとえば、保養所を活用して地域貢献イベントを開催し、地元企業や住民と交流の場を設けることで、社会的責任(CSR)を果たしている企業として評価を高めることも可能です。
また、採用活動の場では応募者が企業の安定性や働きやすさを見極める材料となるため、「保養所がある」という安心感は「社員を大切にする企業」というポジティブな印象を与えます。
特に近年は、若手人材や海外人材が“働く環境の質”を重視する傾向が強まっており、こうしたアピール要素が企業ブランドの差別化につながりやすいのです。
社員同士のコミュニケーション活性化
普段は関わりが少ない部署同士の社員が保養所で共同生活を送ることで、新たな人間関係が育まれます。
同じ目標や楽しみを共有することで、社内コミュニケーションが活性化し、帰社後にも相互理解が深まる効果が期待できます。
たとえば、保養所で開催する合宿形式のワークショップやレクリエーションは、異なる部署のメンバーがチームビルディングを図る絶好の機会となります。
お互いの業務内容を直接聞くことで、部署間の連携や情報共有がスムーズになるだけでなく、横断的なプロジェクトの生産性向上にもつながります。
♦併せて読みたい:社内コミュニケーションとは?活性化させる重要性や成功事例を解説
福利厚生面の差別化要素
同業他社と比べて特別感のある福利厚生を備えていると、社員のエンゲージメント向上に寄与します。
実際、保養所に限らず、「社内カフェテリア」「スポーツジム完備」などがある企業に魅力を感じる求職者は増えており、保養所という特別な空間があることで競合との差を明確に打ち出しやすくなります。
その結果、企業としての魅力を高めるだけでなく、従業員のモチベーション維持にも大きく貢献します。
保養所を使った家族向けのイベントや地域交流を行うことで、社員だけでなく家族の満足度や愛社精神にもプラスの影響が期待できます。
♦併せて読みたい:エンゲージメントとは?企業が今すぐ取り組むべき理由と成功事例
保養所導入のデメリットと注意点
一方で、導入や維持にかかるコスト、社員の利用率などの課題にも注意が必要です。
保養所を運用するには、施設そのものに対する投資や維持管理に伴う固定費が発生します。
リゾート地で大きな施設を保有するほど、清掃や修繕などのメンテナンスも負担が大きくなるため、事前に十分なコスト試算を行うことが大切です。
さらに利用者が偏ってしまう場合、福利厚生としての公平性の観点から不満が生まれやすい点にも配慮する必要があります。
また、保養所を管理する担当部署が予約システムや運営体制を整備できていないと、混乱や利用率の低下を招く恐れがあります。
利用手続きをシンプルにし、多くの社員が気軽に活用できる工夫を行うなど、運用面における改善策もあわせて検討しておくことが効果的でしょう。
変化する福利厚生施設のトレンド
景気の変動や社会情勢の変化に伴い、保養所をめぐる企業の考え方は時代とともに変遷しています。
近年では社員の多様なライフスタイルに合わせた柔軟な制度や、外部リソースの活用が主流となり、企業が自社で大規模な施設を抱える意味合いは変化し続けています。
高度経済成長期は「ハコモノ型」保養所が主流
この時代は経済的な余裕もあり、企業がこぞって自社名義の保養所を建設し社員に開放していました。
豪華なレジャー設備が整った保養所は企業文化を示す一端として機能し、採用や社内イベントの場としても大きな役割を担っていたのです。
割安料金で利用できることから、従業員の家族旅行などに人気があり、企業にとっても保養所を保有することは一種のステータスでもありました。
ヒト重視の流れで保養所は減少へ
バブル崩壊以降、人件費や教育投資を優先する考え方が強まり、不採算の保養施設を売却する企業が多く見られました。
代わりに借上や契約型など柔軟な保養所利用が重視されるようになり、限られた予算を“便利に使える福利厚生”に振り向ける流れが加速しています。
健康保険組合を例にとると、2000年度末に直営の保養所等を所有する健康保険組合は682組合あったのに対し、2018年度末の調査では279組合(403組合減)と半分以下に減っています。
直営保養所の施設数も減っています。
2000年度末に1,581ヶ所あった健康保険組合の直営保養所は、2018年度末には284ヶ所(1,297ヶ所減)まで減っています。
健保の財政悪化が進んでいることもあり、保有資産である直営保養所は減少(廃止・売却)しています。
参照:第22回医療経済実態調査 (保険者調査) 報告 令和元年 実施(PDF資料)|厚生労働省
保養所は「なくてもいい福利厚生」とさえ思われている
企業が保有する保養所は数が限られているため、場所が限定されてしまいます。
場所が限定される保養所は、旅行先を自由に決めたい従業員のニーズを満たせないため、従業員には「なくてもいい福利厚生」と思われています。
古いデータではありますが、転職サイト大手エン・ジャパンが、女性819名に実施したアンケート(2013年)において、「なくてもいい福利厚生」について聞いたところ、1位社員旅行、2位運動施設・保養所という結果でした。
企業にとって、保有負担が大きいわりには従業員から支持されない保養所は"不要"といっても過言ではありません。
しかし、企業の福利厚生の充実を考えるうえで、保養所という選択肢はもうないのでしょうか。
ここからは、現代に最適化された保養所のご提案をさせていただきます。
参照:女性の職場環境調査「福利厚生について」を発表|エン・ジャパン(en Japan)
現代型「持たない保養所」の活用方法
かつて企業や労働組合が保有していた保養所の多くは、直営型で、維持管理コストが大きな負担となっていました。
バブル崩壊後、経営の効率化が進む中で、企業の福利厚生も「自前で持つ」から「外部サービスを使う」方向へとシフトしています。
一方で、「家族旅行を手頃に楽しみたい」「余暇を充実させたい」といった従業員のニーズは変わりません。
そのニーズに応える手段として注目されているのが、“持たない保養所”、つまり外部リソースを活用するスタイルです。
契約保養所の活用
人会員制度のある保養施設では、全国各地のリゾートや宿泊施設が利用可能です。
出張や旅行、家族レジャーなど、従業員の多様なニーズに応える選択肢が豊富にあります。
以下は、主な法人会員制リゾート運営企業です:
施設のタイプは、リゾートホテルや温泉旅館、高級外資系ホテルまで多種多様。
テニスコートやゴルフ場、ペットと泊まれる宿などもあり、ライフスタイルに合わせた旅行が楽しめます。
また、会議室を備えた施設なら、研修や社内イベントにも対応できます。
法人会員型は施設の運営を外部に委ねられるため、直営保養所に比べて管理負担が少なく、人的リソースも割く必要がありません。
福利厚生代行サービスの導入
もう一つの選択肢が、福利厚生代行サービスの活用です。
法人会員として契約することで、従業員は全国の提携施設を割引価格で利用できます。
利用可能な施設は、リゾートホテル・旅館・ペンションだけでなく、レジャー施設やフィットネスクラブなども含まれ、数万件規模に及ぶこともあります。
多様なメニューにより、従業員一人ひとりのニーズに柔軟に対応できる点が大きな魅力です。
「自社で持たない」「負担を抑えながら満足度を高めたい」といった企業にとって、有力な選択肢となります。
保養所以外で注目される福利厚生
最近では、保養所に代わる新たな福利厚生にも注目が集まっています。
たとえば:
- テレワーク環境整備への補助
- 在宅勤務手当の充実
- オンライン学習支援(受講費補助、eラーニング導入など)
- 従業員の健康支援 など
新型コロナの影響をきっかけに、働く場所や時間の自由度を高める支援が広がりつつあります。
保養所のような“休息”とは異なりますが、働く環境やスキルアップを支えることで、従業員の満足度や企業の魅力向上に貢献しています。
福利厚生代行サービスでは、これらの福利厚生も併せて対応できるいる点が保養所と比較して大きなメリットとなります。
♦より詳細なトレンドについては次の記事をご覧ください:福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
おすすめの福利厚生代行サービス企業を4社紹介します。
福利厚生代行サービス提供企業4社
リロクラブ 「福利厚生倶楽部」
福利厚生パッケージサービス「福利厚生倶楽部」を提供しているリロクラブ。
導入社数は23,500団体を超え、業界No.1のシェアを誇る福利厚生代行サービスです。
地域によるサービス格差をなくすため事業拠点を全国にもち、地域に密着したサービス開拓をしています。
全国10エリアで会報誌を発行しており、業界No.1の情報量を誇ります。
また、従業員数100名未満の企業が占める割合は全体の77.8%と、中小企業の利用が多いのも特徴です。
♦サービス概要資料については以下よりダウンロードください。
イーウェル「WELBOX」

福利厚生パッケージサービス「WELBOX」を提供しているイーウェル。
近年の健康経営推進ニーズにあわせて、健康経営の支援に注力しています。
2014年4月に産業医科大学と共同で「コラボヘルス研究会」を発足し、健康経営推進のための継続的な取り組みを行っています。
詳細はこちら:イーウェルとは?福利厚生サービスの特徴や評判、導入事例を紹介
ベネフィット・ワン「ベネフィット・ステーション」

福利厚生パッケージサービス「ベネフィット・ステーション」を提供しているベネフィット・ワン。
ベネフィット・ステーションの詳細はこちら:ベネフィット・ワンとは?代表的なサービスや導入メリットを徹底解説
リソルライフサポート「ライフサポート倶楽部」
福利厚生パッケージサービス「ライフサポート倶楽部」を提供しているリソルライフサポート。
リソルグループ直営の健康増進施設「リソル生命の森」や同グループが運営するゴルフ場を利用することができます。
業界で唯一、入会金が不要です。
♦その他にも、福利厚生代行サービスを提供している企業はいますので、次の記事もご覧ください。
福利厚生としての保養所まとめ
今や、企業が保養所を保有せずとも、従業員に保養所の価値を提供できる時代です。
「ハコモノ」の福利厚生が主流であった時代の象徴的存在だった保養所は、保有から「保有しない」が一般的になっています。
また、働き方も変わっています。
テレワークの普及により、時間と空間から解放された働き方が可能になっています。
移動時間からの解放、特定の場所に出社をしない空間からの解放。
これらの解放により、地方のサテライトオフィスで仕事をして、終業後にサテライトオフィス近くの保養所に宿泊をして休日を迎えるといった働き方もできるようになります。
使いづらい施設や利用されない施設を保有していても、意味はありません。
本当の意味で従業員のためになる保養所の提供が求められています。
時代に合った福利厚生の一環としての保養所を検討し、従業員のエンゲージメント向上につなげましょう。