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【離職率が高い5つの業界】離職率が高い原因は求職者ニーズとの溝にある

業界(産業)によって異なる離職率。

なぜ、離職率が高い業界とそうでない業界があるのでしょうか。背景には、その業界特有の労働環境や待遇が大きく影響しています。

本記事では、離職率が高い業界の特徴から人材が定着しにくい原因を探り、人材を定着させるためには何が必要なのかのヒントを紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.離職率が高い主な業界。離職率が高くなる原因とは
    1. 1.1.宿泊業、飲食サービス業
    2. 1.2.生活関連サービス業、娯楽業
    3. 1.3.サービス業(他に分類されないもの)
    4. 1.4.教育、学習支援業
    5. 1.5.医療、福祉業
  2. 2.求職者が働く環境を選ぶポイント(人材定着のヒント)
    1. 2.1.ヒント1.成長期待
    2. 2.2.ヒント2.福利厚生・手当
    3. 2.3.ヒント3.労働環境・待遇
    4. 2.4.ヒント4.社風・職場の人間関係
  3. 3.人材を確保・定着させるための第一歩
    1. 3.1.ステップ1.改めて労働環境をチェックする
    2. 3.2.ステップ2.課題を踏まえて適切な対策を考える
  4. 4.従業員エンゲージメントを意識した取り組みを

離職率が高い主な業界。離職率が高くなる原因とは

離職率が高い主な業界。離職率が高くなる原因とは 離職率は企業単位で異なるものの、業界(産業)で分類すると離職率が高い業界と低い業界があることがわかります。 厚生労働省がまとめた「平成30年雇用動向調査結果の概要」によると、平成30年の1年間の離職率は14.6%でした。

これは全業種の平均ですが、主要な産業別のデータをみると、サービス業の離職率の高さが目立ちます。離職率が高い上位5産業のうち、トップ3がサービス業です。

離職率が高い産業上位

  • 1位 宿泊業、飲食サービス業(26.9%)
  • 2位 生活関連サービス業、娯楽業(23.9%)
  • 3位 その他サービス業(19.9%)
  • 4位 教育、学習支援業(16.6%)
  • 5位 医療、福祉(15.5%)

なぜ、特定の業界の離職率が高いのでしょうか。人材が定着しにくい主な業界と、その原因をみていきましょう。

参照:平成30年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省


宿泊業、飲食サービス業

居酒屋やファミリーレストラン、ファストフード店などの飲食サービス業やホテル、旅館などの宿泊業は、離職率が高い業種の代表格です。

先の厚生労働省の調査によると、飲食サービス業および宿泊業の離職率は26.9%と全産業中最も高い水準となっています。この水準は、ほぼ毎年変わっていません。

飲食サービス業や宿泊業は激務の割に、賃金が安いことが離職率の高さにつながっています。宿泊業、飲食サービス業の平均月間現金給与額は全産業中最低の127,644円です。全産業平均が319,442円ですので、全産業平均の半分以下という極めて低い平均賃金です。

参照:19-14 産業別常用労働者1人平均月間現金給与額|総務省統計局

労働の対価としての賃金に不満があると、従業員のモチベーションは低下します。

宿泊業や飲食サービス業は待遇が悪いイメージから慢性的な人手不足に陥っており、労働環境や待遇の改善は業界全体の課題といえるでしょう。

また、この業界特有の長時間労働や不規則な勤務形態が、離職率を高めている原因でもあります。飲食サービス業は深夜営業や24時間営業、年中無休が珍しくなく長時間労働になりがちで、宿泊業は夜勤があるなど勤務形態が不規則です。

さらに、立ち仕事で多く体力を要します。 接客の喜びはあるものの、現実はお客様からのクレーム対応や長時間労働、不規則な勤務形態など心身の負担が大きい仕事なので、理想とのギャップから職を離れる人も見受けられます。


生活関連サービス業、娯楽業

旅行やブライダル、葬儀、美容、クリーニングなどの生活関連サービス業、映画や競馬などの娯楽業の離職率は23.9%です。 生活関連サービス業、娯楽業もハードな労働環境で働かなくてはならないことが多いです。

賃金水準も低く、労働に見合う対価が得られないことでモチベーションが低下し、離職につながっています。

平均月間現金給与額は207,154円で、全産業中下から2番目の低水準です。人を楽しませることや、人生の節目に立ち会えることにやりがいを感じていても、対価としての賃金が伴わなければ人材は定着しにくいことがわかります。


サービス業(他に分類されないもの)

労働派遣会社、ビルメンテナンスや警備、廃棄物処理などのサービス業(他に分類されないもの)の離職率は19.9%です。サービス業は概して、顧客からの要求は高い質を求められ量は多くなっていきます。

しかし、賃金の水準は低いです。サービス業(他に分類されないもの)の平均月間現金給与額は257,661円で、全産業中下から3番目の低水準です。

つまり、離職率の高い産業上位3つは、平均月間現金給与額の低いワースト3産業ということです。

多くのサービス業は接客を主とし、業務上で感情のコントロールや表現が不可欠な感情労働という非常にストレスが多い仕事でありながら、対価としての賃金がどの産業よりも低いという現実があります。まずは、この待遇が変わらなければ離職率が改善することは困難でしょう。


■参考記事;感情労働とは?ストレスを溜めない従業員に導くケア方法


教育、学習支援業

学校や学習塾、英会話スクール、教材開発販売などの教育、学習支援業の離職率は16.6%です。教育業界のなかでも、特に塾の先生など学習指導をおこなう人は労働時間が長く、勤務形態が不規則なので人材が定着しにくい傾向があります。

1万人残業調査では、11時間以上残業をしている比率が最も高い産業が教育、学習支援業(56.5%)で、平均残業時間は31.6時間でした。教育業界は、常態化している長時間労働が離職率を高めている原因のひとつです。

参照:1万人残業調査|fabcross for エンジニア


学校の先生は安定した優良職業のイメージがありますが、保護者対応や部活動の指導など、学習指導以外の業務も非常に多く実際は激務です。そのことがストレスとなり、離職を招くことも多いです。


医療、福祉業

医師や看護師、介護士などの医療、福祉業の離職率は15.5%です。社会貢献度が高いものの、どの仕事も重労働で責任が重いため、心身の負担はとても大きいです。

特に、介護職は賃金水準の低さも社会問題となっています。女性の割合が高い看護師は、出産・育児などのライフイベントを機に離職する人も多いようです。 ここまで、離職率が高い5つの業界を紹介しました。いずれも労働条件、待遇の悪さが原因で離職にいたることが多く、「仕事のやりがい」だけでは長続きしないことをあらわしています。

また、どの業界も人手不足が問題となっており、今いる従業員の負担が増大しています。そのまま放置をしておくと、さらなる人材不足(離職)を招きます。それでは、どのようにすれば離職を少しでも抑えて人材が定着するのか。求職者が働く環境を選ぶポイントをヒントに解決の糸口をみていきます。

▼業界問わず、日本企業の離職率の平均を見てみるには次の記事もご参照ください。

  日本企業の離職率の平均は?離職率を高める労働環境の特徴と離職理由 株式会社リロクラブ


求職者が働く環境を選ぶポイント(人材定着のヒント)

求職者が働く環境を選ぶポイント 仕事を探している人が働く環境を選ぶときに重視するポイントを紹介します。求職者全体ではありませんが、民間企業への就職が確定している大学生を対象にした「就職プロセス調査」(2018年 リクルートキャリア)の「就職先を確定する際に決め手になった項目」を紹介します。

参照:就活生、入社予定企業の決め手は?|リクルートキャリア


決め手になった項目の上位は、大きく5つの項目に分類できます。

  • 成長期待
    • 自らの成長が期待できる(47.1%)
  • 福利厚生・手当
    • 福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している(37.8%)
  • 労働環境・待遇
    • 希望する地域で働ける(37.0%) 年収が高い(18.4%)
  • 社風・職場の人間関係
    • 会社・団体で働く人が自分に合っている(27.5%) 会社・団体の理念やビジョンが共感できる(22.2%)
  • 安定・成長性
    • 会社や業界の安定性がある(29.5%) 会社や業界の成長性がある(20.2%)

安定・成長性は変化が激しい近年では外的要因が多大に影響するため、完全に企業側でコントロールはできません。しかしそれ以外は、企業の取り組みでコントロールができます。以下、決め手になった項目(安定・成長性以外)に人材定着のヒントがあります。


ヒント1.成長期待

そもそも、自分の興味があること、やりたいことをやっていく中で自ら成長ができる仕事なのかが重視されます。「思っていた仕事内容と違った」「毎日雑務ばかり」など、求職者の理想(成長期待)と仕事内容にミスマッチがあると早期離職につながりやすいです。

また、離職率が高い業界では目標となるべき上司や先輩が離職によりコロコロと変わるため、自分が成長した先のロールモデルをみつけることは困難です。 離職率の高い業界のなかには、働き手が思い描く理想(成長期待)とは異なる働き方が求められることもあるので、採用時はミスマッチに注意が必要です。


ヒント2.福利厚生・手当

近年は若年層を中心に「働き方」についての価値観が変わってきています。以前は、プライベートを犠牲にして仕事に打ち込む働き方が当たり前のような時代でしたが、今はワーク・ライフ・バランスを重視している人が多いです。

企業側もワーク・ライフ・バランスを推進するために福利厚生や休暇制度、手当を充実させています。求職者は、こうした福利厚生や手当が充実している企業=従業員を大切にしている企業として評価をします。 こうした価値観の変化に対応できておらず、長時間労働が当たり前、休暇が取得しづらい環境で福利厚生が整っていない企業は、求職者から敬遠されます。


■参考記事;福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!


ヒント3.労働環境・待遇

給与面や労働条件も求職者が気にするポイントです。本人にとって魅力的に思える仕事であっても、賃金が見合わなければモチベーションが下がってしまうので、待遇面に難がある企業は人材が集まりにくいでしょう。

また、女性は全国転勤を好まず、自分が好きな場所で働けるという安定を求める人が多いです。男女別で決め手になった項目の違いをみると、女性は「希望する地域で働ける」が46.4%で最も高いです。従業員の働き方の希望にある程度柔軟に対応できない労働環境は、求職者から敬遠されます。


ヒント4.社風・職場の人間関係

求職者は、職場ではいい人間関係を築きたいと考えています。実は前職を辞めた理由の上位が「職場の人間関係が好ましくなかった」という調査結果があります。

男性は、定年・契約期間の満了とその他の理由を除くと3番目の退職理由(7.7%)、女性は2番目の退職理由(11.8%)が職場の人間関係の悪化でした。

参照:平成30年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省

昨今の労働者は、合わない社風や人間がいても無理してそこで働き続けることはしません。どんなにやりがいがあって厚待遇の仕事でも、社風や職場の人間関係に問題がありそうだと感じられてしまっては、人材確保が困難になります。


人材を確保・定着させるための第一歩

人材を確保・定着させるための第一歩 離職率が高い業界の特徴と求職者のニーズには溝(ギャップ)があり、そのことが離職率の高さ・定着率の悪さの原因になっているのかもしれません。そのうえで、離職率が高い業界であっても人材を確保・定着させるためにはどうすればよいのでしょうか。


ステップ1.改めて労働環境をチェックする

離職防止の対策を考える前に実施しておきたいのが、現状をくまなくチェックすることです。適正な労務管理が行なわれているか、職場の人間関係・雰囲気に問題がないかなど、従業員にアンケートやヒアリングを実施して洗い出します。

待遇面に関しても、同じ業界や他の企業で定着率のよい企業と比較してみてください。中小企業が大企業並みの待遇を用意することは現実的に無理だとしても、知っておくことは重要です。


ステップ2.課題を踏まえて適切な対策を考える

改めて労働実態や従業員の意識をチェックしてみると、これまであまり顕在化されていなかった課題もみえてくるはずです。それらの課題を整理し、適切な対策を検討します。

「こういう業界だから労働環境が悪いのは仕方ない」と諦めるのは簡単です。しかし、働きやすい職場づくりに取り組めば他社と差別化ができ、採用時のアピールポイントにもなります。「離職率が高い業界にありながら、この企業は働きやすそう」という企業イメージを作ることができれば人材が集まりやすくなりますし、人材定着にもつながるはずです。

まずは経営側が従業員をコストと考えずに資産と考え、エンゲージメント(企業と従業員とのつながり、結びつき)を強めるという視点をもつことが大切です。その考えのあらわれとして、福利厚生サービスを導入するのも一案です。


従業員エンゲージメントを意識した取り組みを

離職率が高い業界は、労働環境や待遇が悪いことが業界標準かのようになっています。この常識を変える意識を経営側がもたないかぎり、離職率は改善されません。働きにくい環境を放置し、現場の従業員に負担がのしかかったままだと、いつまでたっても人材は定着しません。

反対に、ワーク・ライフ・バランスや多様な働き方に配慮し、働きやすい労働環境が整っている企業であれば人材確保がしやすくなります。人材が長く定着すれば、スキルやノウハウが蓄積されて企業の成長につながり、さらなる人材育成にも役立つはずです。

企業にとって、従業員は事業成長に不可欠な資産です。従業員がいきいきと働ける職場づくりができれば、離職率が高い業界であってもエンゲージメントを強め、労働生産性を高めることはできます。離職者の多さに課題を感じる場合は、まずは従業員をコストと考えずに結びつきを意識した取り組みを検討しましょう。


 
RELO総務人事タイムズ編集部
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RELO総務人事タイムス編集部です。 本メディアは、「福利厚生倶楽部」の株式会社リロクラブが運営しています。 「福利厚生倶楽部」の契約社数は19,200社、会員数710万人という規模で、業界シェアNo.1を誇ります。 従業員満足を追求する人事や総務、経営者の皆様にとって少しでも有益になる情報を発信していきます。

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