【総務人事担当者必読】財形貯蓄制度とは?種類とそれ以外の資産形成支援策を解説

【総務人事担当者必読】財形貯蓄制度とは?種類とそれ以外の資産形成支援策を解説

結婚・住宅購入・定年退職などのライフイベントや退職後の老後生活にはまとまった資金が必要になるため、資産形成は不可欠です。2019年には、”老後2000万円問題” が大きなニュースになりました。今のままでは老後資金が不足する可能性はゼロではなく、資産形成への関心が高まっています。資産形成の選択肢は多岐に渡りますが、企業が従業員の資産形成を支援する方法の1つに財形貯蓄制度があります。

今回は、経営者や総務人事部門の担当者に向けて財形貯蓄制度の基本概要やメリット・デメリット、導入手順などを解説します。

財形貯蓄制度とは

財形貯蓄制度とは

まずは財形貯蓄制度の基本的な仕組みや種類を解説します。財形貯蓄制度とは、勤労者の給与から毎月一定額を天引きして、事業主から金融機関に送金する貯蓄制度です。正式名称は勤労者財産形成貯蓄制度です。毎月の給与から控除(天引)されて自動的に貯蓄にまわるので、意識せず継続的に資産を形成できます。

わかりやすくいえば、財形貯蓄制度は給与の一部を貯めておく貯金箱という認識でもよいです。知らず知らずのうちに貯蓄できる、コツコツと資産を形成できるという特徴から、貯金が苦手な勤労者におすすめの制度です。

財形貯蓄制度は福利厚生の一種

財形貯蓄制度は、事業主が勤労者の資産形成を支援する法定外福利厚生の一種です。もともと財形貯蓄制度は、勤労者の貯蓄や持ち家の取得を促進する勤労者財産形成促進法(1971年制定)に基づいて制定されました。

財形貯蓄制度を導入している事業主に雇用されている勤労者であれば、職種・雇用形態にかかわらず利用できます。加入は任意で、パートや契約社員といった非正規雇用でも、要件を満たせば財形貯蓄制度の利用が可能です。そもそも前提として、財形貯蓄制度は事業主が導入していなければ利用できず、自営業者やフリーランス、法人の役員は利用できません。

以下の項からは、財形貯蓄制度の種類について紹介します。

財形貯蓄制度の種類

財形貯蓄制度の種類

財形貯蓄制度は、貯めた資金の使用目的別に一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の3つの種類に分けられています。

財形貯蓄制度の種類
種類資金の用途対象者積立期間
一般財形貯蓄自由すべての勤労者3年以上
財形年金貯蓄老後の資金満55歳未満の勤労者5年以上
財形住宅貯蓄マイホームの購入やリフォーム5年以上

一般財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄)

一般財形貯蓄は、積立てた資金を幅広い用途に使用できる制度です。

すべての勤労者が加入でき、積立てた資金は結婚や出産などのライフイベント、車の購入など自由に使用できます。貯蓄開始から1年経過すれば自由に払い出せる他、契約数に制限もありません。後述する他の2つの貯蓄と比較をしても、一般財形貯蓄は自由度の高さが特徴の制度です。用途を問わず、とにかくお金を貯めたいという勤労者に適した制度です。

財形年金貯蓄(勤労者財産形成年金貯蓄)

財形年金貯蓄は、老後の資産形成を目的とした制度です。

“財形年金” の名の通り、積立てた資金は満60歳以降に年金として受け取ることができます。制度の利用は満55歳未満の勤労者が対象となり、その特徴から老後の生活資金を充実させたいという勤労者に最適な制度です。

貯蓄金額によっては利子等が非課税となるというメリットがあります。なお、制限なく契約ができる一般財形貯蓄とは異なり、財形年金貯蓄は1人1契約です。

財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)

財形住宅貯蓄は、マイホームの購入資金やリフォーム資金を貯めることを目的とした制度です。

自宅を改修したい、新居を建てる頭金を貯めたいという勤労者に適しています。用途以外は、財形年金貯蓄と似ている制度で、貯蓄金額によって利子等が非課税となる点も同じです。

ちなみに、上記3つの財形貯蓄は併用もできます。これらの財形貯蓄制度は、法改正などに伴い内容が変わる可能性もあります。種類別のより詳しい情報は、厚生労働省のホームページで確認をしてください。

財形貯蓄制度のメリット・デメリット

財形貯蓄制度のメリット・デメリット

財形貯蓄制度の基本情報や種類を紹介できたところで、財形貯蓄制度がもたらすメリット・デメリットを解説します。事業主と勤労者に分けたうえで解説をするので、財形貯蓄制度導入の判断材料として活用ください。

財形貯蓄制度のメリット

財形貯蓄制度のメリット
事業主側のメリット自律性型人材の育成が期待できる
法定外福利厚生の充実により、人材の確保・定着につながる
勤労意欲の向上により、生産性向上が期待できる
勤労者側のメリット給与から自動的に天引きされるので、確実に貯蓄ができる
長期・低金利の住宅ローン(財形持家転換融資)が利用できる
利子等非課税の優遇措置を受けられる*

* 財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円まで非課税。保険商品の場合は385万円まで非課税(超過分の運用益は課税される)
* なお、一般財形貯蓄は非課税の優遇措置がありません

財形貯蓄制度がもつ事業主側のメリットを挙げれば、自律型人材の育成や人材の確保・定着などがあります。勤労者側にもメリットがありますが、この後に解説するデメリットとあわせて考えると、財形貯蓄制度の利用メリットはあまりないです。

財形貯蓄制度のデメリット

事業主側には特にデメリットはありませんが、制度を利用する勤労者にはデメリットがあります。財形貯蓄制度のデメリットは以下の2つです。

  • 利率が高くない
  • 金融商品によっては元本割れのリスクがある

近年、国内市場は低金利の状況が続いているため、財形貯蓄制度を利用して金融機関に預けたとしても利息はほとんどつきません(財形貯蓄の金利は0.01%程度)。そのため、財形貯蓄制度はお金が貯められるものの、運用益は期待できません。また、低金利が続く日本では、利子等非課税のメリットをあまり実感できません。

なお、給与やボーナスから控除(天引)されたお金の預け先は、銀行や保険会社・証券会社があります。その場合、財形保険や投資信託などの金融商品も選択できるようになりますが、中には元本割れのリスクがある商品もあります。

財形貯蓄制度を利用する際の注意点

財形貯蓄制度には、いくつかの注意点があります。

例えば、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は利子等非課税措置がありますが、目的外の引き出しを行った場合は、その恩恵を受けられません。目的外で引き出してしまうと、利子に対して通常通り課税され、さらに過去5年間までさかのぼって利子が利子所得として課税対象になります。

また、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄には利子等非課税措置がある一方、一般財形貯蓄は税金の優遇措置がそもそもありません。

転職した場合

財形貯蓄制度がある企業を退職してから2年以内に財形貯蓄制度を導入している企業に転職した場合は、財形貯蓄を継続できます。しかし、転職先企業に財形貯蓄制度がない場合や、2年以内に継続手続きができなかった場合は、解約することになります。

解約となると、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の引き出しは目的外の引き出し扱いになるため、利子等非課税の優遇措置は受けられず、かつ過去5年分の利子が課税対象になります。

これらのデメリットや注意点は、財形貯蓄制度を利用する勤労者が気をつけるべきポイントとなりますが、制度導入と併せて事業主側からもアナウンスしておく必要があります。

財形貯蓄制度以外の選択肢も検討する

人材の流動性が高まりつつある現代において、その企業に長く在籍しなければ恩恵を受けられない制度や転職をしてしまったらリセットされる制度は、従業員から歓迎されません。1971年に制定された法に基づいている財形貯蓄制度は、今の時代の資産形成手段として時代に合わないところが多いです。

実際、一般・年金・住宅をあわせた財形貯蓄の延べ契約件数は、減少し続けています。2021年3月末の財形貯蓄の延べ契約件数は、704万件でした。1990年3月末の1,955万件をピークに30年以上連続で減少しています。今後も減少トレンドは変わりません。

あわせて貯蓄残高も20年連続で減少しており、2021年3月末の残高は15.64兆円でした。このような減少は、財形貯蓄制度に対するニーズの薄れといえます。

財形貯蓄制度を検討する企業であれば、どのような契約形態の従業員にも使いやすい短期的な報奨制度など財形貯蓄制度以外の選択肢を検討してもよいでしょう。

財形貯蓄制度以外の資産形成手段

財形貯蓄制度以外の資産形成手段

資産形成の手段は、多様化が進んでいます。財形貯蓄制度だけでなく、退職金制度やiDeCo、つみたてNISAなど様々な資産形成のやり方があります。

財形貯蓄制度と退職金制度の違い

  • 財形貯蓄制度:給与の一部を資産形成にまわす制度
  • 退職金制度:従業員の退職後の生活などを事業主が任意で支援する制度

勤労者を支援する、資産形成に役立つ制度という特徴は、財形貯蓄制度と退職金制度に共通します。

ですが、給与の一部を控除(天引)する財形貯蓄制度に対し、退職金制度の多く(退職一時金制度や中退共)は給与から控除しません。一般的な退職金制度は、退職金原資を事業主が自前で準備するか外部に積立て、勤労者の退職後にお金を支給します。

また、退職金制度は多様化がすすんでおり、いくつかの種類が存在しています。詳しくはこちらをあわせてご覧ください。

退職金制度の種類と金額の相場。多様化が進む退職金制度

財形貯蓄制度とiDeCo、つみたてNISAの違い

財形貯蓄制度iDeCo(個人型確定拠出年金)つみたてNISA(少額投資非課税制度)
主な目的目的に合わせた資産形成(教育・住宅・老後など)老後資金老後や急な出費に備えた、中長期の資産形成
対象者(任意加入)一般財形:すべての勤労者*
年金・住宅貯蓄:満55歳未満の勤労者*
* 事業主が財形貯蓄制度を導入している前提
20歳以上60歳未満20歳以上
投資限度額限度額なし(貯蓄商品によっては制限あり)年間最大81.6万円
(国民年金保険の加入状況による)
年間最大40万円
積立時の所得控除なし積立額が全額所得控除されるなし
運用時の税制優遇措置

一般財形貯蓄は優遇措置な運用益は全額非課税運用益は全額非課税(最大20年間)
年金と住宅をあわせて元利合計550万円まで利子等は非課税
保険商品の場合は、385万円まで非課税(超過分の運用益は課税)
運用できる金融商品定期預金、保険商品、投資信託など定期預金、保険商品、投資信託など国の基準を満たした株式投資信託とETF

iDeCoとつみたてNISAのどちらも、財形貯蓄制度と同じく資産形成を目的とする制度で任意加入という点に変わりありません。ですが、加入できる対象者や税制の優遇措置などは、制度ごとに異なります。個人型確定拠出年金のiDeCoについて、詳しくはこちらをあわせてご覧ください。

個人型確定拠出年金iDeCoとは?広がりをみせる老後の資産形成年金

企業が従業員の資産形成を支援する方法に正解はなく、幅広い選択肢の中で自社の規模や従業員にフィットした制度の導入を検討することが大事です。検討した結果、財形貯蓄制度を導入しないという選択も当然あります。

財形貯蓄制度を導入する手順

財形貯蓄制度を導入する手順

いろいろ検討した結果、財形貯蓄制度を導入する場合には、以下のような手続きが必要です。

  1. 金融機関の選定・取り決め
  2. 労使協定の締結・社内規定の作成
  3. 従業員への説明・募集

手続き1.金融機関の選定・取り決め

まず、取扱金融機関を選定します。財形貯蓄制度をスムーズに運営するため、自社と金融機関で事務分担について取り決めておきます。

手続き2.労使協定の締結・社内規定の作成

従業員の給与の一部を控除(天引)する場合、労使間で書面による協定を締結しなければなりません。そのため、財形貯蓄制度を実施する際は、労使間で給与天引きについての労使協定を結びます。

また、財形貯蓄制度の対象者や取扱金融機関、実施期間などを定めた社内規定を整備する必要もあります。

手続き3.従業員への説明・募集

従業員に財形貯蓄制度に関する説明会を実施し、利用希望者を募集します。希望者には申込書を配布して記入・提出してもらい、取扱金融機関に提出します。これで、契約締結となります。

手続きの1〜3が完了すれば、財形貯蓄制度の運用がスタートします。以上が基本的な流れです。

なお、厚生労働省が所管する勤労者退職金共済機構が、財形貯蓄制度を導入するフローチャートを公開しています。財形貯蓄制度を導入する際の参考になります。

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まとめ

財形貯蓄制度まとめ

今回は、財形貯蓄制度の基本概要やメリット・デメリット、財形貯蓄制度以外の資産形成手段などを詳しく解説しました。大まかなまとめとしては、以下の通りです。

  • 財形貯蓄制度は、給与の一部を貯めておく貯金箱
  • 財形貯蓄制度は一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の3つの種類に分かれる
  • 財形貯蓄制度は、人材の確保や税制優遇など事業主と勤労者の両方にメリットがある
  • ただし、財形貯蓄制度以外にも資産形成の手段はある(退職金制度やiDeCo、つみたてNISAなど)
  • 財形貯蓄制度の導入には、金融機関の選定や労使協定の締結・社内規定の作成などが必須

財形貯蓄制度はお金の管理が苦手な人にとっては、ぴったりな制度です。また、利子等非課税の優遇措置や住宅ローン融資を利用できるといったメリットがあります。しかし、資産形成の選択肢は多岐に渡ります。財形貯蓄制度の他にも、企業型確定拠出年金やiDeCo、つみたてNISA、貯蓄型保険などさまざまです。

そうなると、必ずしも財形貯蓄制度だけが最適な資産形成の手段ではありません。あらゆる選択肢が出てきて従業員の人生設計が多様になっている時代においては、企業は柔軟性と機敏性をもって資産形成の支援策を変える必要があります。

従業員の老後資金を左右する退職金制度も多様化しています。一般財形貯蓄は配当金等に税金がかかりますが、退職金制度のひとつである企業型確定拠出年金(企業型DC)であれば、運用収益は非課税です。企業はこのような企業型確定拠出年金も含めて、財形貯蓄制度以外の選択肢も検討して資産形成の支援策を選ぶ時代になってきています。

付加価値を生み、事業を継続させるのは “ヒト” です。その “ヒト” の資産形成を支援するために企業として何ができるのかを真剣に考えることが、最終的には組織の生産性向上につながります。

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