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マタハラとは?定義から具体例、法律まで徹底解説!

近年、職場における妊娠・出産を理由にしたハラスメントが社会問題として深刻化しています。妊娠や育児は女性にとって大きなライフイベントであると同時に、働く環境においても重要な局面を迎えます。しかし、依然として多くの職場で女性が妊娠や出産を理由に不当な扱いを受けており、これが女性労働者のキャリアや心身の健康に良くない影響を与えている状況です。
 
この記事では、マタハラの定義から、その原因や背景、法律的な対策、そして企業が実施すべき具体的な対策についてまで詳しく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.マタハラとは?
    1. 1.1.マタハラの定義
    2. 1.2.パタハラとの違い
    3. 1.3.パワハラとの違い
  2. 2.マタハラの具体例
    1. 2.1.キャリアに影響を及ぼす嫌がらせ
    2. 2.2.精神的・身体的負担をもたらす嫌がらせ
  3. 3.マタハラに対する法律
    1. 3.1.男女雇用機会均等法の概要と適用範囲
    2. 3.2.育児・介護休業法で保障される権利
    3. 3.3.労働基準法によるマタハラ防止策
  4. 4.マタハラが起きる原因と背景
    1. 4.1.妊娠や出産、育児への理解不足
    2. 4.2.仕事と育児の両立が難しい職場環境
  5. 5.マタハラを防止するための企業の取り組み
    1. 5.1.ハラスメント防止を目的とした社内研修の実施
    2. 5.2.ハラスメントリスクの把握と実態調査
    3. 5.3.相談窓口の設置
    4. 5.4.コミュニケーションを深める取り組みとエンゲージメントの向上
  6. 6.マタハラについて正しく理解しよう

マタハラとは?

マタハラは女性労働者の権利を侵害する重大なハラスメントであり、企業や社会全体での理解と対策が求められています。まずは、マタハラの定義と、パタハラやパワハラとの違いについて詳しく説明します。

マタハラの定義

マタハラとは、マタニティー・ハラスメントの略で、妊娠・出産・育児に関する女性労働者に対する嫌がらせや不当な扱い、つまり職場でのいじめのようなものです。
具体的には、妊娠を理由に仕事を減らされたり、昇進の機会を奪われたり、育児休暇中の女性に対して復帰を急かされたりすることが挙げられます。
 
マタハラは、妊娠や出産という女性特有の経験を理由とするため、女性労働者の尊厳を傷つけ、精神的な負担も大きくするのです。また、マタハラは個人の問題だけでなく、企業の社会的な責任として捉えられています。
 
マタハラが起こる原因としては、上司や同僚の意識が低いケースや、企業がマタハラ防止に関する制度を十分に設けていないことなどが挙げられます。妊娠・出産・育児は、女性の人生において重要な時期であり、安心して働ける環境を整えることが、企業には求められています。


パタハラとの違い

パタハラ(パタニティ・ハラスメント)は、父親が育児休業や子育てに関わるのを理由に、職場で不当な扱いを受けることを指します。男性が育児休暇を取得したら、「やる気がない」と評価されたり、仕事から外されたりしたら、これはパタハラに該当します。
 
マタハラと同様に、パタハラも育児を理由としたハラスメントである点は共通しています。しかしパタハラは「父親も育児に積極的に関わるべきだ」という新しい価値観と、従来の「育児は母親の役割」という古い価値観がぶつかることで起こりやすいのが特徴です。
 
また、社会全体が「男性は仕事を最優先にすべき」という期待を抱いていることや、育児をする父親を珍しがったり批判したりする風潮が、パタハラが起こる背景にあります。まず、父親がもっと育児に関わる環境を作ることや、職場で育児休業を取りやすくする工夫が必要です。

パワハラとの違い

パワハラ(パワーハラスメント)は、職場において地位や権力を背景にした嫌がらせやいじめ行為を指します。これには、持続的な暴言や過度な業務量を押し付けるなど、精神的・身体的に圧迫をかける行為が含まれます。
 
マタハラやパタハラは、妊娠や育児といった特定の状況に関連するものですが、パワハラはこれらとは異なり、職場内での権力関係を利用して嫌がらせや不当な扱いを行うのが特徴です。


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マタハラの具体例

マタハラには、大きく分けてキャリアに影響を及ぼすものと、精神的・身体的負担をもたらすものの2種類があります。この見出しでは、それぞれの具体的な事例とその影響について解説します。

キャリアに影響を及ぼす嫌がらせ

マタハラの中でも、キャリアに直接的な悪影響を与えるケースは深刻です。例えば、妊娠を報告したことで「業務の引き継ぎや人員調整などの負担が増える」と判断され、昇進や昇格の対象から外される事例があります。これまでの実績が正しく評価されず、妊娠や出産を理由に昇進の候補から外されたり、昇給が見送られたりすることで、自分のキャリア発展が突然ストップしてしまうのです。こうしたことが起きると、妊娠を報告した従業員によっては働く意欲が大きく削がれてしまいます。
 
また、仕事を休んでいる間は役職や部署の変更は行わないものの、育児休業から復帰したタイミングで不本意な配置転換や降格が行われる場合もあります。これらの処遇は、これまで積み重ねてきたキャリアを大きく後退させるだけでなく、職場での自信や信頼感を損ね、長期的なキャリア形成にも悪影響を与えかねません。

精神的・身体的負担をもたらす嫌がらせ

妊娠中の女性に対する心ない発言や差別的な行動もマタハラに該当します。たとえ発言した側に悪意がなかったとしても、こうした嫌がらせを受けた従業員は、精神的なダメージを受けています
例えば、「お腹が出てきたからもう仕事できないね」といった安易な発言や、妊娠中の女性に対する過剰な業務制限などは、ほかの社員と比べて不公平であると感じる可能性があります。
 
また、長時間労働の強要や、妊娠中に配慮が必要な身体的な状況を考慮しない業務指示は、精神的なストレスだけでなく、身体的な負担も増大させ、流産や早産のリスクを高める可能性も懸念されます。このような嫌がらせは、女性労働者の心身に深刻なダメージを与え、安心して働く環境を奪う行為です。


マタハラに対する法律

職場における妊娠・出産を理由とした差別や不当な扱いであるマタハラは、法律で厳しく禁止されています。マタハラが起きず、安心して働ける組織を目指すには、関連する法律の知識を深めることも大切です。
ここでは、マタハラ防止に関連する主な法律である男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働基準法の概要について解説します。

男女雇用機会均等法の概要と適用範囲

男女雇用機会均等法では、妊娠や出産を理由に解雇や不利益な処遇を行うことを禁止しています。さらに、妊娠や出産に関連して女性従業員の労働環境が不当な影響を受けないよう、企業が行うべき環境整備についても定めています。
具体的には妊娠や出産をした従業員がいる際は、適切に業務分担を見直すこと、こうした従業員が自身の体調に応じて働けるようサポートすることなどです。
 
男女雇用機会均等法では、妊娠中または出産後の健康管理の一環で、保健指導や妊産婦健診を受診できる時間を確保することを義務付けています。具体的には、妊娠23週までは4週に1回、妊娠24週から35週までは2週に1回、妊娠36週から出産までは1週に1回です。

育児・介護休業法で保障される権利

育児・介護休業法は、働く親が育児休業を取る権利を保障しています。育児休業は、子どもが1歳になるまで取得することが可能です。加えて、育児中の親をサポートするために、短時間勤務制度も設けられています。これは、親が育児と仕事を両立させるよう、3歳未満の子どもを持つ親の労働時間を短縮できる制度です。
 
ちなみにですが、企業によっては、育児と仕事の両立をさらにサポートするために、フレックスタイム制度やテレワーク制度など、柔軟な働き方を提供している場合もあります。例えば、育児休業後にフルタイムでの勤務が難しい場合でも、時短勤務やフレックス勤務を利用することで、家庭の状況に応じた働き方が可能となり、仕事と家庭のバランスを取りやすくなります


労働基準法によるマタハラ防止策

労働基準法では産前、産後の女性労働者に関する取り扱いについて、以下のような定めがあります。労働基準法は、マタハラを防止するための重要な法的枠組みであり、企業はこの法律に基づいて適切な措置を講じ、従業員を保護する責任があります。



  1. 時間外労働・休日労働・深夜業の制限
    時間外労働・休日労働の制限:妊娠中および出産後1年以内の女性労働者が請求した場合、時間外労働や休日労働をさせてはなりません
    深夜業の制限:妊娠中および出産後1年以内の女性労働者が請求した場合、午後10時から午前5時までの深夜業をさせてはなりません。

  2. 軽易業務への転換
    妊娠中の女性労働者が請求した場合、事業主はその者を他の軽易な業務に転換しなければなりません

参考:職場における セクシュアルハラスメント対策や 妊娠 ・ 出産 ・ 育児休業 ・ 介護休業等に 関するハラスメント対策は 事業主の義務です!!|厚生労働省

参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内|厚生労働省


マタハラが起きる原因と背景

マタハラが発生する背景には、大きく分けて2つの要因が考えられます。1つは、妊娠や出産、育児に対する深い誤解や認識不足であり、もう1つは、仕事と育児の両立が困難な職場環境です。ここでは、マタハラが起きる原因と背景を、2つの側面から掘り下げていきます。

妊娠や出産、育児への理解不足


マタハラが職場において発生する背景には、妊娠、出産、育児に対する深い誤解や認識不足が横たわっています。長らく「女性が家庭を守る」という価値観が根強く残る中で、職場における妊娠や出産は、業務に支障をきたすもの、あるいは個人の問題と捉えられがちでした。こういった認識が定着している組織はマタハラが起きやすいと言えます。「妊娠は自己責任だから会社に迷惑をかけている」といった意識を持っている従業員もいるかもしれません。
 
さらに、妊娠や出産に関する正しい知識が不足していることも、マタハラの原因の1つです。妊娠や出産が女性に与える身体的・精神的な負担の大きさを完全に理解していないため、「少しぐらい我慢すればできる」といった安易な考えで無理な仕事を強いたり、体調不良を訴える女性を責めたりするケースも少なくありません。
 
例えば、妊娠中の女性がどのような身体的変化を経験し、どのような配慮が必要なのか、育児休業や産前産後休業制度についてどの程度知っているかなど、従業員間の理解度には大きな差があることも多いです。こうした知識不足が妊娠中の女性に対する不当な扱いへとつながるのです。

仕事と育児の両立が難しい職場環境


マタハラが職場において発生する背景には、仕事と育児の両立が困難な職場環境も深く関わっています。長時間に及ぶ残業や休日出勤が当たり前となっている企業では、妊娠や出産、育児によってどうしても勤務時間を調整したいという女性労働者に対して、周囲から理解を得にくい状況が生じます。
「皆がやっているのだから、あなたも頑張らなければいけない」といった圧力や、「社員として働いているのだから、大事なときは仕事を優先すべき」といった固定観念が根強く残る職場では、女性労働者は孤立感を抱きやすく、マタハラのターゲットになりやすいです。
 
また、柔軟な働き方、例えば時短勤務やテレワークといった制度が整っていなかったり、制度があっても利用しにくい雰囲気であったりする場合も、マタハラにつながる可能性が高まります。育児中の女性が安心して働けるような環境が整っていないため、仕事と育児の両立に苦しみ、結果として職場を離れる選択を余儀なくされるケースも少なくありません。

マタハラを防止するための企業の取り組み

企業は、従業員が安心して働ける環境を提供する責任があります。特に、妊娠・出産を経験する女性に対しては、適切な配慮とサポートが求められます。マタハラ防止は、単なる法的な義務ではなく、企業が担う社会的な責任の1つでもあります。ここでは、企業がマタハラ防止に取り組むための具体的な施策を紹介します。


1. ハラスメント防止を目的とした社内研修の実施
2. ハラスメントリスクの把握と実態調査
3. 相談窓口の設置
4. コミュニケーションを深める取り組みとエンゲージメントの向上



ハラスメント防止を目的とした社内研修の実施

マタハラ防止に向けて、企業は全従業員を対象としたハラスメント防止教育プログラムの実施が不可欠です。このプログラムでは、まずマタハラとは何か、具体的にどのような行為がマタハラに該当するのか説明したうえで、妊娠中や産後の女性に対する差別的な言動、育児休業取得者に対する不当な扱い、仕事と育児の両立を妨げる行為など、様々なケースを具体的に示します。こうした説明は全て、従業員がマタハラを正しく認識できるようにするために行います。
 
ハラスメント防止教育プログラムは全従業員向けと解説しましたが、管理職向けの研修を別に行うのも有効です。管理職向けの研修では、対象となる従業員への適切なサポートの重要性について説明します。管理職が率先してハラスメントのない職場環境作りに取り組むことは、組織全体の意識改革を促進します。
 
また、研修内容を単なる知識説明にとどめるのではなく、ロールプレイングやグループワークを取り入れて、より実践的な学びができるようにしましょう。受講者が主体的に参加し、ハラスメントに関する自分の考えや行動を振り返る機会を設ければ、より深い理解につながります。
 
研修の実施を通して従業員一人ひとりが、マタハラ防止の重要性を認識し、自らの行動に責任を持てば、より安全で働きやすい職場環境の実現が期待できるでしょう。

ハラスメントリスクの把握と実態調査

マタハラを防ぎ、安心して働ける職場環境を作るためには、まず自社全体や組織の現状を正確に把握することが大切です。現状の把握には、ハラスメントリスクの把握と実態調査を定期的に実施することが欠かせません。
 
アンケート調査は、従業員の意見を直接聞き、職場環境を把握するための有効な手段です。匿名性を保障することで、従業員が率直な意見を述べやすくなり、潜在的な問題を早期に発見できます。アンケート項目には、ハラスメントの経験や目撃情報、職場環境への満足度、相談窓口の利用状況など、多角的な視点からの情報収集が必要です。
 
定期的な調査は、意識の変化や新たな問題を早期に発見するために重要です。また、ハラスメントに関する相談件数や内容を分析し、問題の傾向を把握することも大切になってきます。
定期的な実態調査は、一度きりの取り組みではなく、継続的な改善を促進するための重要なプロセスです。企業は従業員の声を反映し、多様な働き方を尊重する文化を築くことで、安心して働ける職場環境を実現できるでしょう。
 
また、アンケートに加えて面談を実施すれば、より詳細な情報を得られます。ただし、センシティブな話題になることが予想されるので、話の聞き方や得られた情報の管理には十分配慮するようにしましょう。

相談窓口の設置

マタハラを防止し、従業員が安心して働ける職場を作るためには、まず相談窓口を設置することが不可欠です。もし専用の窓口がない場合は、早急に設けるようにしましょう。
企業は内部に専任の相談窓口を設け、従業員が気軽に問題を相談できる環境を整えなければなりません。窓口は、従業員が不安なく利用できるように、プライバシーを厳守する体制を作り、専門の担当者が迅速かつ適切に対応できるようにすることが大切です。また、匿名で相談できる仕組みを導入すれば、従業員はリスクを感じず、自分の声を届けやすくなります。
 
さらに、企業内で解決が難しい場合に備えて、外部の相談機関との提携も重要です。外部機関では、法的なサポートや第三者の視点から問題を見てもらえて、社内での対応だけでは限界がある問題にも対応が可能となります。こうした外部の専門家と連携することで、従業員はより手厚い支援を受けられるようになるでしょう。
 
企業が相談窓口を設け、従業員が実際に問題を相談しやすくするための環境を整えることは、マタハラを防ぐための第一歩です。そして、企業全体で従業員の安心と信頼を守るための文化が育まれ、より働きやすい環境が実現します。

コミュニケーションを深める取り組みとエンゲージメントの向上

マタハラを防止するためには、職場でのコミュニケーションを深め、従業員同士の信頼関係を強化することが大切です。信頼関係が深まると、互いに配慮した言動が自然と促され、配慮に欠けた発言が出にくくなります
 
コミュニケーションを活発にするためには、従業員間の理解を深めるための取り組みを企業が主体になって進めると良いです。例えば、チーム活動や社内イベントを通じて、業務外での交流を増やしてみましょう。こうした活動は、あまり接点の多くない従業員同士が理解を深めるきっかけになります。


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さらに、上司と部下が信頼関係を築くためには、定期的な対話の機会を設けることも1つの手段です。1on1ミーティングやカジュアルな会話の場を通じて、上司は部下の思いや悩みを理解し、部下は安心して自分の意見を伝えやすくなります。こうしたコミュニケーションを重ねることで、上司と部下の関係がより良好になり、職場全体のエンゲージメントも向上するでしょう。1on1ミーティングで話す内容はマタハラやそのほかのハラスメントに関係するものである必要はありません。もしものとき、すぐ相談をしてもらえるような関係性を築いていくことが、1on1ミーティングの主な目的です。
 
これらの取り組みを積極的に行えば、職場内での相互理解が深まり、マタハラの予防につながります。信頼関係を基盤にした職場環境が形成されることで、従業員が安心して働ける環境の実現が期待できます。



マタハラについて正しく理解しよう

マタハラを防止するためには、企業の取り組みが非常に重要です。
従業員一人ひとりが安心して働ける職場環境を実現するためには、マタハラに対する深い理解と、実効性のある制度の導入が必要不可欠といえるでしょう。企業は、妊娠・出産に関連する法的義務を守るだけでなく、柔軟で支援的な職場文化を作り上げることが求められています。
​​​​​​​職場内での意識改革やハラスメント防止教育を徹底し、労働者が育児と仕事を両立させながら、自分らしいキャリアを築ける環境を提供することこそ、企業の社会的責任であり、持続可能な組織作りにおいて大切だと言えるでしょう。

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