
エンゲージメントサーベイの基礎から実践まで|導入方法と効果的な活用法
現代のビジネスでは、従業員のエンゲージメントが組織の成功を左右する要素の1つとして注目されています。
そんなエンゲージメントを調査して数値化する取り組みが「エンゲージメントサーベイ」です。
この記事では、エンゲージメントサーベイの実施内容や効果的な活用法を解説します。
自社で導入したい人向けに、エンゲージメントサーベイを導入するステップも含めて取り上げます。
記事を読めば、エンゲージメントサーベイが単に従業員の声を集めるツールではなく、組織変革を後押しする施策であることがきっと理解できるはずです。
►そもそもエンゲージメメントとは?については、次の記事をご参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.エンゲージメントサーベイとは
- 2.エンゲージメントサーベイの目的と重要性
- 3.エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
- 4.従業員のエンゲージメントを高めるメリット
- 4.1.従業員のやる気が高まる
- 4.2.離職防止につながる
- 4.3.組織の生産性が高まる
- 5.エンゲージメントサーベイ導入のステップと活用術
- 5.1.目標設定と測定ポイントの明確化
- 5.2.サーベイツールの選定
- 5.3.調査対象者の明確化
- 5.4.質問フォーマットの設計
- 5.5.エンゲージメントサーベイの実施
- 5.6.結果の分析
- 5.7.分析結果の活用
- 6.エンゲージメントサーベイで用いる具体的な質問例
- 6.1.職場環境に関する質問
- 6.2.上司と同僚との関係性を把握する質問
- 6.3.キャリア進展と成長機会に関する質問
- 6.4.業務負担とストレスレベルに関する質問
- 7.エンゲージメントサーベイで組織の課題を明らかにしよう
エンゲージメントサーベイとは
エンゲージメントサーベイとは、従業員の仕事や職場に対するエンゲージメントを測定する調査です。
従業員があらかじめ用意した質問に答えると、仕事への意欲や組織への愛着心などを数値化できます。
エンゲージメントサーベイは、従業員の満足度だけでなく、組織に対する貢献意欲や帰属意識なども調査できます。
そのため、職場環境や組織文化を改善するための重要な情報を収集する手法として広く用いられています。
エンゲージメントサーベイの目的と重要性
エンゲージメントサーベイの目的は、従業員のエンゲージメントを可視化することです。
調査を通じて得られたデータは「エンゲージメントスコア」と呼ばれ、組織の健全性を表現しています。
測定したスコアを参考にして、企業や組織は具体的な改善アクションを考えます。
エンゲージメントサーベイの重要性は、職場環境の問題点や改善点を特定できる点にあります。
つまりエンゲージメントサーベイの結果は、組織を改善するための貴重なヒントとも言い換えられるのです。
ヒントを基に考えた改善策を実施することで、離職率の低下や生産性の向上といった企業の重要な目標達成が実現できます。
特に、従業員の不満が蓄積されている組織においては、エンゲージメントサーベイによって現状の問題が可視化できるので、早い段階から対策を講じることも可能です。
さらに、エンゲージメントサーベイは従業員との対話のきっかけにもなります。
調査結果を共有し、改善策を一緒に考えることで、従業員の意見を尊重する組織文化を醸成できます。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査は、似たような目的で行われることが多いですが、調査する内容には明確な違いがあります。
-
エンゲージメントサーベイ:
従業員の将来的な貢献意欲の有無や組織との結びつきの強さなどを調査します。
具体的には、仕事への熱意、組織の目標への共感、自発的な改善行動の意欲などを測定します。
こうした要素は、従業員の長期的な定着率や生産性に大きく影響を与えるため、組織の持続的な成長を考える上で重要な指標となります。
-
従業員満足度調査は、現在の満足度を主に調査します。
給与や福利厚生、職場環境、上司との関係など、現在の待遇や仕事の内容に対する満足度を測ります。
これらの要素は従業員の日々の業務遂行に影響を与えるため、短期的な課題解決には有効です。
そして、組織の状況や目的に応じて、これら2つの調査を適切に使い分けることも可能です。
両方の調査を組み合わせて実施することで、組織の現状と将来の可能性を多角的に分析できるからです。
従業員のエンゲージメントを高めるメリット
ここまでエンゲージメントサーベイの基本的な情報を解説してきました。
そもそも、従業員のエンゲージメントを高めると、具体的にはどのような良い点があるのでしょうか。
ここからは従業員のエンゲージメントが高まると得られるメリットを詳しく解説します。
►株式会社イトーキさまは、エンゲージメントスコア向上を通じて、離職率や業績、採用への影響を及ぼしました。次の記事で詳細を紹介しています。
従業員のやる気が高まる
従業員のエンゲージメントを高めることで、従業員のモチベーションが向上します。
エンゲージメントが高い従業員は、自分に任せられている仕事がどのように組織貢献しているかを理解していることが多いです。
したがって、自ら積極的に業務に取り組む意欲が高い傾向にあります。
単に与えられた仕事をこなすだけでなく、業務の改善や効率化、新しいアイデアの提案など、自発的な行動を取るようになります。
加えて、意欲的な従業員が増えることで、職場全体の雰囲気や士気が向上します。
ポジティブな態度は周囲にも伝染するため、チーム全体のパフォーマンスが向上し、協力的で活気のある職場環境が形成されます。
離職防止につながる
エンゲージメントが高いと、従業員は自分が組織の一員であるという実感を持ちやすくなります。
組織への帰属意識が高まっているため、従業員の長期的な定着が期待できます。
エンゲージメントの高い従業員は、組織の目標や価値観に共感し、自身のキャリアを組織と共に成長させたいと考える傾向があります。
実際に、リンクアンドモチベーションの研究機関(モチベーションエンジニアリング研究所)と、慶應義塾大学ビジネス・スクールの岩本研究室が、2019年9月24日に発表した研究結果では、エンゲージメントスコアの向上にあわせて、退職率が低くなる傾向がみられることが分かりました。
参考:「エンゲージメントと退職率の関係」に関する研究結果を公開
組織の生産性が高まる
エンゲージメントの向上は、チームワークや個々のパフォーマンス向上に直結し、組織全体の生産性を大きく高めます。
エンゲージメントが高い従業員は、自身の役割と組織の目標を明確に理解していて、その目標達成に向けて努力をする傾向にあります。
加えて、従業員同士が自然に協力し合う雰囲気があるため、業務効率も上がりやすいです。
エンゲージメントの高い従業員は、自身の業務だけでなく、組織全体の成功にも関心が高いため、建設的な提案や改善活動を自発的に行います。
実際に、厚生労働省の調査に於いて、エンゲージメントと生産性には正の相関がみられ、エンゲージメントスコアが上がるほどに、生産性が上がることが証明されています。
参考:厚生労働省「ワーク・エンゲイジメントと企業の労働生産性について 」
エンゲージメントサーベイ導入のステップと活用術
ここからは、エンゲージメントサーベイを導入するための具体的なステップと、その活用方法について詳しく解説します。
各ステップを実行することで、自社の組織でエンゲージメントサーベイが実施できるようになるでしょう。
目標設定と測定ポイントの明確化
エンゲージメントサーベイの実施でまず重要なのは、目的を明確にし、期待される成果や測定すべきポイントを定義することです。
組織の現状や課題に基づいて、次のような具体的な目標を設定します。
- 「離職率の低下」
- 「生産性の向上」
- 「組織文化の改善」
サーベイ結果を活用する具体的な計画や施策を事前に設計することで、調査の精度と実効性を高めることができます。
例えば、次のような具体的なアクションプランを想定しておくと良いでしょう。
- 「結果に基づいて部門ごとの改善計画を立案する」
- 「エンゲージメントスコアを人事評価の一部に組み込む」など、
サーベイツールの選定
エンゲージメントサーベイを実施する際は、多くの場合、専用のツールを利用します。
これらのツールは、調査の設計から実施、結果の分析まで、一連のプロセスを効率的に管理できます。
ツールの選定は、エンゲージメントサーベイ実施の成功に影響するため、慎重に検討しましょう。
各ツールには特徴があるため、自社の目標や測定ポイントに適したものを選ぶことが重要です。
例えば、次の様なツールによって提供される機能は異なります。
- 質問のカスタマイズ性
- リアルタイムでの結果表示
- 詳細な分析機能など、
【ツールを選定する際に考慮したいポイント】
- 費用:初期導入コストや運用コストが予算内に収まるか
- 機能:必要な調査や分析が可能か、カスタマイズの自由度はどの程度か
- 操作性:管理者や回答者にとって使いやすいインターフェースか
- 匿名性:回答者の個人情報を適切に保護できるか
►リロクラブでも安価で、独自設問が可能なツールをご提供させて頂いております。
調査対象者の明確化
エンゲージメントサーベイを実施する対象を選びます。
-
全従業員を対象に行うのか
全社的な組織改革を目指す場合は全従業員を対象
-
一部の組織を対象にするのか
特定の部門の課題解決を目指す場合はその部門の従業員に絞るなど、目的に応じて適切に対象を絞り込みましょう。
対象者を絞る際は、調査内容が現場に即したものとなるよう配慮することも重要です。
例えば、営業部門と技術部門では、エンゲージメントに影響を与える要因が異なるため、それぞれの部門に適した質問の設計が求められます。
♦ちなみにですが、調査の際は回答の匿名性を確保するのが原則です。
匿名性が確保されていないと、従業員がありのままの答えを書いてくれない可能性が高くなります。
►ストレスチェック目的での調査対象についての分類は次の記事をご覧ください。
質問フォーマットの設計
エンゲージメントサーベイの質問フォーマットは、次の分類があります。
- 主に定量的データを収集するための選択肢質問
- より具体的な回答が集められる自由回答形式
これらの質問は目的に応じて適切に使い分けます。
選択肢質問は、エンゲージメントの度合いを数値化し、全体的な傾向や部門間の比較を容易にします。
Q:「あなたは自分の仕事にやりがいを感じていますか?」
A:「1: 全くそう思わない」から「5: 非常にそう思う」までの5段階で回答を求めるのが選択的質問です。
一方、自由回答形式は、選択肢では捉えきれない具体的な意見や提案を収集するのに適しています。
Q「今の職場環境を改善するために、あなたは何ができると思いますか?」といったような質問が自由回答形式の例です。
質問を設計する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- なるべくシンプルで回答しやすい形式にする
- 曖昧な表現や専門用語を避け、誰もが理解しやすい言葉を使用する
- 1つの質問で複数のことを答えないといけない質問は避ける
- 特定の答えに誘導するような質問を避ける
- 組織の現状や課題に即した質問を含める
質問を設計したら、内容が目的に沿ったものであることを確認します。
また、無駄な質問がないか確かめ、回答者が負担に感じない質問数かどうかも確かめましょう。
一般的に、15分から20分程度で回答できる量が理想的とされています。
エンゲージメントサーベイの実施
選定したツールを使用し、計画に沿って調査を実施します。
エンゲージメントサーベイを実施する前に、従業員へサーベイの目的や回答方法を周知しておくことで、従業員の理解と協力を得やすくなります。
調査を実施する際は回答期限を設定しましょう。
従業員の中には回答することを忘れてしまう人もいますので、ときおりリマインドを行うようにします。
また、回答率を上げるための工夫として、以下のような方法が効果的です:
- 調査の重要性を伝える
- 回答時間の確保を公式に認める
(例:業務時間内の15分を回答時間として設定) - 部門ごとの回答率を公開し、健全な競争意識を促す
- 回答者した人に小さな謝礼を用意する
結果の分析
収集した回答データを集計し、組織全体や部門別の傾向を把握します。
単純な数値の集計だけでなく、深い洞察を得るための多角的な分析が重要になってきます
- まず、エンゲージメントスコアや特定の課題に基づき、改善が必要な領域を特定します。
例えば、「キャリアを考える機会の有無」に関する質問のスコアが低い場合、その領域に焦点を当てた改善策を検討する必要があります。 -
部門間や職位間の比較分析も有効です。
これにより、特定の部門や階層に特有の課題を把握できます。 - また、前回の調査結果との比較を行うことで、改善の進捗や新たな課題の発生を確認できます。
- 分析結果を基に、経営層や従業員に共有するためのレポートを作成します。
このレポートでは、主要な発見事項、改善が必要な領域、具体的なアクションプランの提案などを含めます。
視覚的にわかりやすいグラフや図表を活用し、誰もが理解しやすい形式で情報を提示することが重要です。
分析結果の活用
分析で特定された課題や改善ポイントを基に、実行可能なアクションプランを作成します。
優先度の高い課題から着手し、具体的な施策を展開しましょう。
計画した施策を実施する際は、従業員の意見を取り入れながら進めることが重要です。
従業員の調査結果が改善施策につながっていることが伝われば、次回以降のエンゲージメントサーベイの実施への意欲を高められるでしょう。
►次の資料では、本記事で紹介したサーベイ導入に関して、8ステップに分けて詳細を纏めていますので、併せてご覧ください。
エンゲージメントサーベイで用いる具体的な質問例
エンゲージメントサーベイの成功は、適切な質問設計にかかっています。
的確な質問は従業員のエンゲージメントを多角的に測定し、組織の課題を明らかにするのに役立ちます。
反対に要点を押さえていない質問では回答も不確実なものになりやすいです。
ここからは、効果的なサーベイを実施するための具体的な質問例を、カテゴリー別に紹介します。
職場環境に関する質問
職場環境に関する質問は、従業員が職場の物理的環境や精神的な快適さをどのように感じているかを把握するために重要です。
これらの質問を通じて、職場の安全性、設備、働きやすさに関する従業員の認識を把握できます。
【具体的な質問例】
- 「あなたの職場環境は快適ですか?」
- 「オフィスの設備や備品は業務を円滑に行うのに十分ですか?」
- 「職場のノイズレベルは適切だと感じますか?」
- 「職場の安全対策は十分だと思いますか?」
- 「リモートワークの環境は整っていますか?」(実施している場合のみ)
これらの質問からは職場環境の改善点を特定することが可能です。
従業員が働く環境を向上させるための具体的なアクションにつなげることができます。
上司と同僚との関係性を把握する質問
上司との信頼関係や、同僚とのチームワークについて従業員がどう感じているかを確認することは、職場の人間関係や組織文化を理解する上で重要です。
【具体的な質問例】
- 「あなたは上司からのフィードバックが十分だと感じていますか?」
- 「同僚との協力関係に満足していますか?」
- 「上司はあなたの意見や提案を真剣に聞いてくれますか?」
- 「チーム内でのコミュニケーションは円滑だと感じますか?」
- 「困ったときに同僚からサポートを得られると感じますか?」
組織内の人間関係は、従業員のモチベーションやパフォーマンスに直接影響を与えます。
従業員が愛着を持ってもらえる組織を作るためにも、こうした要素の把握は重要と言えるでしょう。
キャリア進展と成長機会に関する質問
従業員が組織内でのキャリア進展や成長機会に満足しているかを調査することは、長期的な人材定着と育成の観点から非常に重要です。
これらの質問は、従業員の将来的な展望や組織へのコミットメントを理解するのに役立ちます。
【具体的な質問例】
- 「会社はあなたのキャリア成長を支援していますか?」
- 「必要なスキルを向上させるための研修機会が提供されていますか?」
- 「あなたの役割において、新しいことを学ぶ機会がありますか?」
- 「昇進・昇格の基準は公平だと感じますか?」
- 「自分の強みを活かせる機会が十分にありますか?」
これらの質問を通じて、組織のキャリア開発プログラムの効果や、従業員の成長ニーズを把握できます。
結果に基づいて、研修プログラムの拡充やキャリアパスの明確化など、具体的な施策を立案することが可能です。
業務負担とストレスレベルに関する質問
従業員の業務量が適切か、ストレスを感じていないかを把握することは、健全な職場環境を維持するほか、燃え尽き症候群(バーンアウト)などを防ぐために極めて重要です。
【具体的な質問例】
- 「あなたの業務量は適切だと感じていますか?」
- 「業務によるストレスを常に感じていますか?」
- 「仕事とプライベートのバランスを取れていますか?」
- 「締め切りのプレッシャーは適度だと感じますか?」
- 「休暇を取得しやすい環境だと思いますか?」
これらの質問を通じて、従業員の健康と生産性に影響を与える可能性のある問題を特定できます。
調査結果に基づいて、業務プロセスの見直し、ストレス管理のワークショップの実施、柔軟な勤務制度の導入など、具体的な対策を講じることが可能となります。
►ストレスチェックは、義務化が進むほど、重要な要素となっています。次の記事も併せて読み、法令を抑えてエンゲージメントサーベイで対応することもオススメいたします。
エンゲージメントサーベイで組織の課題を明らかにしよう
エンゲージメントサーベイは、組織の健康状態を把握し、改善するための強力なツールです。
従業員の声を聞き、組織の課題を明確化し、効果的な改善策を考えるための判断材料にすることができます。
エンゲージメントサーベイを実施する際は、自社の状況に合わせてツールの導入や質問の設計を行うことが重要です。
加えて「なぜエンゲージメントサーベイを実施するのか」という目的を明らかにしておきましょう。
エンゲージメントサーベイは、単なる調査ツールではなく、組織変革の起点となる重要な取り組みです。
従業員の声に耳を傾け、データに基づいた意思決定を行うことで、より強固で魅力的な組織づくりを実現できるでしょう。
そしてエンゲージメントサーベイは一度きりの施策ではなく、継続的な組織施策の一部として行うことが大切です。
エンゲージメントサーベイを定期的に実施することで、組織の変化や従業員の意識の推移を継続的に追跡できます。
これにより、施策の効果を測定し、PDCAサイクルを回すことが可能となり、より効果的な組織づくりにつながります。
また、サーベイ結果を従業員と共有し、改善のプロセスに巻き込んでいけば、組織全体の当事者意識と協力体制を高めることも可能です。
働きやすさが重視される今、従業員がどれだけエンゲージメントを持ってくれるかは組織づくりをする上で大切になっています。
ぜひエンゲージメントサーベイを良い組織づくりに役立ててみてください。
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