労使協定の種類と届出義務|知らなかったでは済まされない基礎知識と罰則
労使協定とは事業所内での労働者の規則や、労働環境に関わるとても大事な協定です。就業規則に労働基準法に基づいた労使協定をプラスすることによって、法定義務の免除や免罰の効果を発生させられます。
今回は、労働者の労働環境を管理する上で非常に重要な労使協定について解説していきます。
目次[非表示]
- 1.労使協定とは
- 1.1.就業規則とは
- 2.労使協定の種類
- 2.1.届出が必要な労使協定
- 2.2.届出が不要な労使協定
- 3.労使協定違反の罰則
- 3.1.36協定違反
- 4.まとめ
労使協定とは
労使協定とは、労働者と使用者間で取り交わされる約束事を書面契約した協定のことです。労使協定には様々な種類があり、代表的な協定に時間外、休日労働に関する協定届(通称:36協定)があります。
36協定は時間外や休日労働に関する協定届のことで、労働基準法第36条に関する労使協定を結ぶことから ”36(サブロク)” 協定と呼ばれています。
基本的に使用者は、労働基準法を元に就業規則や社内ルールを定めます。
しかし、労働基準法を元にした規則にも限界があり、例外の規則を設けることもあります。
そうした例外的な規則を労働者と使用者の間で締結し、労使協定の締結と就業規則の規定を併せて行うことで、法的義務の免除や免罰の効果があります。
就業規則とは
事業所での労働条件を決定したものを就業規則といいます。
労働基準法を順守した就業規則を作成し、使用者が労働者に知らせることで、就業規則は効力を発揮します。
また、常時10人以上の労働者を雇用している事業所は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。
就業規則は事業所における基本ルールです。まずは労働者が基本ルールを守るように様々な方法で、周知し組織としてのまとまりを高めることが必要です。
その上で、労働者側と使用者側が協力し合えるよう、努力しましょう。 組織としてまとまり労働者と使用者が協力することで、労働者の労働意欲が向上し、残業や休日出勤の削減につながります。結果的に労働基準法の範囲内の時間で1日の業務を終了させることにつながります。
労使協定の種類
労使協定には様々な種類があり、それぞれが労働基準法に関連したものです。
また労使協定には労働基準監督署に届出が必要なものと不要なものがあります。
届出が必要な労使協定
-
労働者の貯蓄金の管理に関する労使協定
- 労働基準法 第18条に関連
-
1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定*
- * ただし、1ヶ月単位の変形時間労働時間制について就業規則で定めた場合、すでに労働基準監督署に提出していることになりますので、届出は不要です。
- 労働基準法 第32条の2に関連
-
1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
- 労働基準法 第32条の4に関連
-
1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
- 労働基準法 第32条の5に関連
-
時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)
- 労働基準法 第36条に関連
-
事業所外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
- 労働基準法 第38条の2に関連
-
専門業務型裁量労働制に関する労使協定
- 労働基準法 第38条の3に関連
また、事業所外労働のみなし労働時間制について、設定する勤務時間が法定労働時間内の場合については、届出の義務はありません。
参考:作成支援ツール(36協定届、1年単位の変形労働時間制に関する書面)について|厚生労働省
届出が不要な労使協定
-
賃金から法定控除以外の控除を行う場合
- 労働基準法 第24条に関連
-
フレックスタイム制に関する労使協定(清算期間が1ヶ月を超えない場合)
- 労働基準法 第32条の3に関連
-
休憩の一斉付与の例外
- 労働基準法 第34条に関連
-
年次有給休暇の時間単位での付与
- 労働基準法 第39条に関連
-
年次有給休暇の計画的付与
- 労働基準法 第39条に関連
-
年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合
- 労働基準法 第39条に関連
-
育児休業、看護休暇及び介護休業が出来ない者の範囲
- 育児・介護休業法 第6条/12条に関連
労使協定では労働に関する様々な取り決めがなされています。
労働基準法に適合する内容であるかどうかを確認したうえで、適切な内容の協定を結び、労働基準監督署への届出を忘れないようにしましょう。
▼有給に関する基本については、次の記事をご参考にしてください。
労使協定違反の罰則
労使協定に違反すると罰則が科せられます。
今回は労使協定の代表的な例として、時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)についてみていきましょう。
36協定違反
労働基準法では基本的に、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超える労働は認められていません。
法定労働時間を超える場合には36協定を労働者と使用者で締結し、届出を出す義務があります。 届出を忘れたり、時間外労働時間の上限を超えたりして36協定違反をすると、罰則が科されることがあります。労働基準監督署に注意を促されるだけですむ場合もあり、いきなり罰則を科されることは稀です。
しかし罰則を科されると、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」など軽くはありませんので、36協定違反にならないように気をつけましょう。
時間外労働・休日労働の限度
無制限に時間外労働や休日労働ができるわけではありません。
時間外労働の限度は「労働時間の延長の限度等に関する基準」により、基本的に1ヶ月に45時間、1年間では360時間が限度とされています。
一時的に限度時間におさまらない月がある場合には、36協定を締結する際に特別条項として明記しておけば、いくらかは限度時間を超えることが可能です。
改正労働基準法による36協定の変更点
2019年4月1日施行の改正労働基準法において、法定労働時間などを定めた労働基準法第36条が変更となっています。
改正労働基準法においては、改正前までは上限がなかった特別条項で定める超過勤務時間に上限が設けられました。通常の勤務形態の場合、
- 1ヶ月の法定労働時間を超える時間外労働は100時間未満
- 1年の法定労働時間を超える時間外労働は720時間以下
- 2~6ヶ月間の平均時間外労働時間が80時間以下
と、具体的な数値が示されています。
また、この特別条項を適用して時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年間6回までとなっています。
■参考記事;36協定と残業、法定休日労働の深い関係。36協定違反となるケースや懲罰
まとめ
就業規則とは、事業所での労働条件を決定したもの。
労使協定とは、労働者と使用者間で取り交わされる約束事を書面契約した協定のこと。
就業規則等と併せて労使協定を締結することで、労働基準法、育児介護休業法等で定められた所定の事項について、法定義務の免除や免罰の効果を発生させられる。
所轄の労働基準監督署長へ届出が必要な労使協定
- 労働者の貯蓄金の管理に関する労使協定
-
1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定*
* 就業規則で定めた場合は、届出不要 - 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
- 時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)
- 事業所外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
- 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
届出が不要な労使協定
- 賃金から法定控除以外の控除を行う場合
- フレックスタイム制に関する労使協定(清算期間が1ヶ月を超えない場合)
- 休憩の一斉付与の例外
- 年次有給休暇の時間単位での付与
- 年次有給休暇の計画的付与
- 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合
- 育児休業、看護休暇及び介護休業が出来ない者の範囲
【特に注意】時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)について、臨時的な特別の事情がなければ、時間外労働・休日労働の限度は基本的に
- 1ヶ月に45時間
- 1年間では360時間
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも
- 月100時間未満(休日労働を含む)
- 年720時間以下
- 2~6ヶ月間の平均時間外労働時間が80時間以下(休日労働を含む)
- 月45時間を超えることができるのは、年間6回まで