
エンゲージメントサーベイとは?成果につながる設計・活用法まで徹底解説
従業員が何を感じ、どう働いているか——。
なんとなく把握しているつもりでも、実は見えていない。
そんな声を多くの現場から耳にします。
そこで注目されているのが エンゲージメントサーベイ です。
これは、従業員が仕事や組織に対してどれだけ前向きに関わっているかを“見える化”する仕組み。
本記事では、"エンゲージメント領域で多数の企業支援実績をもつ リロクラブ"が初めての方にもわかりやすく解説します。
現場の知見も踏まえながら、エンゲージメントサーベイの基本から成果につなげる活用法までを網羅してお伝えします。
♦そもそもエンゲージメントに関して、詳細を知りたい方は次の記事をご覧ください:エンゲージメントとは?企業が今すぐ取り組むべき理由と成功事例
目次[非表示]
- 1.エンゲージメントサーベイとは?
- 1.1.主な種類と特徴
- 1.2.従業員満足度調査(ES調査)との違い
- 2.エンゲージメントサーベイの効果とメリット
- 2.1.モチベーションと生産性を可視化し、改善へつなげる
- 2.2.人材育成・キャリア開発に役立つ
- 2.3.離職防止・定着率アップに繋げられる
- 3.エンゲージメントサーベイの実施ステップ
- 3.1.Step1. 調査の目的を明確にする
- 3.2.Step2. 設問を設計し、調査内容を決定
- 3.3.Step3. 社内周知を行い、アンケートを実施
- 3.4.Step4. 結果を分析し、改善アクションへつなげる
- 4.エンゲージメントサーベイの設問例
- 4.1.Gallup社のQ12とは?
- 4.2.推奨されるeNPS(従業員推奨度)とは?
- 4.3.経済産業省・マーサージャパンの推奨設問例
- 5.エンゲージメントサーベイで確認すべき指標
- 5.1.総合的なエンゲージメントスコア
- 5.2.ワークエンゲージメント(業務没入度)指標
- 5.3.エンゲージメントドライバー(要因別)指標
- 6.エンゲージメントサーベイ活用6ステップ
- 6.1.1.経営指標とエンゲージメントをリンクさせる
- 6.2.2.属性ごとの傾向分析と施策出し
- 6.3.3.課題ピラミッドで施策の優先順位づけ
- 6.4.4.アクションプランの策定と実行
- 6.5.5.従業員への結果共有・フィードバック
- 6.6.6.定点観測で成果を可視化する仕組みづくり
- 7.エンゲージメントサーベイ実施時の注意点
- 7.1.調査の目的と重要性を従業員に伝える
- 7.2.回答の負担を減らす工夫をする
- 7.3.結果の共有とフォローアップを行う
- 7.4.専用ツールで効率的に実施する
- 8.エンゲージメントサーベイツールの選び方
- 8.1.組織改善に役立つ「Reloエンゲージメンタルサーベイ」のご紹介
- 8.2.成功事例1.従業員ニーズを満たす福利厚生サービスを導入|株式会社イトーキ
- 8.3.成功事例2.健康管理アプリの導入で健康経営を推進|積水化学工業株式会社
- 9.従業員エンゲージメント調査を継続的に実施して組織の成長を目指そう
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、会社や仕事に対する従業員の熱意や、組織への愛着度を測定するための調査手法です。
「組織が目指す方向性をどの程度理解・共感しているか」「仕事に対するモチベーションはどの程度か」などを測定することで、自社の課題の把握や改善に向けた施策立案に役立ちます。
施策を実施することで、生産性アップや離職率の低下などの効果も得られます。
主な種類と特徴
エンゲージメントサーベイには主に、短いスパンで繰り返すパルスサーベイと、定期的に大規模に実施するセンサスという形態があります。
- パルスサーベイは最新の従業員の感情を捉えて改善を繰り返すのに適しており
- センサスは全社的な課題を一括で把握するために有効です。
どちらを選ぶかは企業の目的や組織体制に左右されますが、いずれも結果の分析とフィードバックを丁寧に行うことで、高い効果を得ることができます。
パルスサーベイ
パルスサーベイは1週間から1か月といった短い間隔で実施することが多く、従業員のコンディションや意欲の変化をリアルタイムに把握しやすい点が特徴です。
5~15問程度の簡易的な調査により、モチベーションの低下や部門間のコミュニケーションギャップをすばやく察知できます。
素早いアクションを取ることで、チーム単位での改善を小刻みに行い、最終的には大きな組織成果につなげることが可能です。
センサス
センサスとは50~150問程度の大規模な調査のことで、年に1回程度おこないます。
部門や拠点、職種ごとの傾向を網羅的に比較し、全社的な課題を把握することに優れています。
ただし、実施の間隔が長い分、状況の変化を逃しやすいというデメリットもあります。
実施後は従業員との共有と改善の取り組みを十分に行い、次回調査までに変化を促すことが重要です。
従業員満足度調査(ES調査)との違い
従業員エンゲージメント調査と似た調査に、「従業員満足度調査(ES調査)」があります。
どちらも従業員の状態を測る調査ですが、測定する対象や調査の目的が大きく異なります。
たとえば、
- 従業員満足度調査は、福利厚生や職場環境など、企業が提供する制度や環境に対する「満足度」を測るものです。
- 一方、従業員エンゲージメント調査は、従業員が仕事や組織に対してどれほど前向きに関わっているかといった「主体的な関与」や「貢献意欲」を測定します。
つまり、満足度は「与えられたものへの評価」、エンゲージメントは「組織に対する主体的な思い」といった違いがあります。
以下の表は、両者の違いを端的に整理したものです。
違いを理解し、目的に応じた調査を選ぶ参考にしてください。
エンゲージメントと満足度の比較表
従業員満足度もエンゲージメントも、組織課題の可視化や改善の第一歩として重要な視点です。
「どんな結果を得たいのか」「何に活かしたいのか」といった目的に応じて、適切な調査手法を選びましょう。
エンゲージメントサーベイの効果とメリット
エンゲージメントサーベイを実施することで得られる具体的なメリットを紹介し、その効果を明らかにします。
エンゲージメントサーベイの結果を分析し、改善策を打つことで従業員のモチベーションや組織力を高めることができます。
また、経営層にとっても現場の声が明確に可視化されることで、投資や施策の優先度を判断するための具体的な指針になるでしょう。
モチベーションと生産性を可視化し、改善へつなげる
エンゲージメントサーベイによってチームごとの意欲や生産性を数値化することで、課題がどこに集中しているのかが明らかになります。
例えば、A部署の生産性が低いという課題がある場合、従業員エンゲージメント調査により「なぜ生産性が低いのか」という原因を特定できます。
生産性が低い原因を排除する施策を立てれば、生産性の向上に役立てられるでしょう。
厚生労働省の調査では、エンゲージメントの向上により働きがいを感じ、労働生産性が向上することが明らかになっています。
そのため、従業員エンゲージメント調査はモチベーションや生産性を高めるために重要な役割を担うと言えるのです。
人材育成・キャリア開発に役立つ
エンゲージメントサーベイは、人材育成やキャリア開発にも大きな力を発揮します。
たとえば、調査結果を階層別・部署別に分析することで、どの層やどのチームに育成課題があるのかを明確に把握できます。
- 新入社員のモチベーションが低い場合、原因が「研修の不足」であれば、育成プログラムの見直しやオンボーディングの改善につなげられます。
- また、管理職層に課題が見つかれば、マネジメント研修やメンター制度の導入といった、より的確な育成施策を検討しやすくなります。
このように、見えにくかった育成のボトルネックを“見える化”することで、個別最適なアプローチが可能になります。
結果として、組織全体のエンゲージメント向上と、持続的な人材育成サイクルの構築に役立ちます。
離職防止・定着率アップに繋げられる
エンゲージメントサーベイを活用することで、離職率の低下や定着率の向上にも効果が期待できます。
調査結果をもとに施策を打ち、従業員のエンゲージメントが高まれば、「働きやすさ」や「やりがい」を実感しやすくなります。
実際、厚生労働省の調査によると、働きがいを感じている従業員ほど、離職率が低く、新入社員の定着率も高いというデータがあります。
さらに、調査によってコンディションが悪化している従業員を早期に把握できれば、人事面談や1on1ミーティングなどで個別にフォローすることも可能です。
こうした早期介入による予防策も、離職を防ぐうえで非常に有効です。
つまり、エンゲージメントサーベイは、単なる実態把握にとどまらず、人材の流出を防ぐための“アラート”としても機能します。
エンゲージメントサーベイの実施ステップ
エンゲージメントサーベイを社内に導入し、運用するまでのプロセスをステップごとに解説します。
エンゲージメントサーベイを円滑に実施するためには、目的の明確化から結果の共有まで、段階的に準備を進めることが大切です。
特に調査結果を踏まえた改善策を実行し、次回以降のサーベイで効果を検証するというサイクルを回すことが最終的なゴールとなります。
Step1. 調査の目的を明確にする
最初に、自社でエンゲージメントサーベイを行う理由や期待する成果を明確に設定することが重要です。
業績向上や離職率低減など、どの指標を改善したいのかを具体化し、経営層や人事部門と共通認識を持ちましょう。
目的があいまいだと設問設計や分析の軸がブレる可能性があるため、最初の段階でしっかり議論する必要があります。
Step2. 設問を設計し、調査内容を決定
目的に合わせて設問を設計する際は、曖昧さの少ない質問形式を心がけます。
選択式の他、自由記述欄を設ければ定量だけでは拾いきれない意見も得られるでしょう。
さらに、調査スケジュールや実施頻度も重要です。
適切なタイミングとボリュームで実施すれば、従業員への負荷も軽減し、より正確な情報を収集できます。
設問例については、後章で解説します。
Step3. 社内周知を行い、アンケートを実施
従業員にサーベイを案内するときは、調査の目的や回答の匿名性などを明確に伝えることがポイントです。
特に従業員の回答は上司の目に触れないことを説明することが大切です。
回答結果によって評価に影響すると不安を感じると、素直な回答を得られません。
調査の実施は繁忙期を避けることが賢明です。
また、組織体制が変化したタイミングも避けたほうがよいでしょう。
雑な回答になったり正確なデータが得られなかったりなどの事態を避けるため、実施のタイミングはしっかりと検討することが大切です。
Step4. 結果を分析し、改善アクションへつなげる
調査が終了したらできる限り早く集計・分析をおこないます。
「達成できた目標はあるか」「どのような課題があるか」などを明確にして改善策を立てましょう。
また、改善策の実行後は再度調査をおこない、改善策の効果が出ているかを確認します。
改善と分析を繰り返すことで、組織課題の解決につなげられます。
エンゲージメントサーベイの設問例
具体的な質問項目を挙げ、どのように回答を分析するかの指針を紹介します。
設問は、ごくシンプルな選択形式から深い洞察を促す自由回答形式まで、多様なパターンが考えられます。
自社で重点を置く課題を明確にしておくと、回答結果を施策に反映しやすくなります。
ここでは、世界的に認知度の高いQ12やeNPSなどの指標を例に、設問設計時のポイントを見ていきましょう。
Gallup社のQ12とは?
Q12(キュートゥエルブ)とは、ギャラップ社が開発した従業員エンゲージメント調査のことです。
12の質問を5点満点で回答し、従業員の幸福度を測ります。
特に「自分の意見は尊重されているか」「会社の使命を理解し、共感しているか」といった内容が含まれ、仕事への没頭度合いを定量的に把握するのに役立ちます。
設問は以下の通りです。
- 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。
- 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。
- 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。
- この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした。
- 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。
- 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。
- 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。
- 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。
- 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。
- 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。
- この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある。
- 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。
ギャラップ社によると、Q12で従業員エンゲージメントが高かった企業は生産性や業績が高いことがわかっています。
多くの国や企業で活用されており、グローバルなベンチマークを取りたい場合にも適しています。
参考:ギャラップ社公式サイト
推奨されるeNPS(従業員推奨度)とは?
eNPSは、従業員が自社を周囲にどの程度推奨するかを数値化する指標です。
顧客向けのNPS(ネットプロモータースコア)の考え方を社内向けに応用したもので、愛社精神の高さや働きがいを端的に示すとされています。
「現在の職場を親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいか」を11段階でたずねて、推奨する人の割合とそうでない人の割合を引いた結果をeNPSというスコアで表します。
この結果を分析することにより、従業員エンゲージメントの高い従業員・低い従業員を把握でき、離職の予防やモチベーションの向上の施策に役立てることが可能です。
経済産業省・マーサージャパンの推奨設問例
組織コンサルティングサービスを提供するマーサージャパン株式会社と経済産業省は、「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」において以下の設問項目を例として示しています。
- 自分の会社全体としての目的・目標・戦略をよく理解できている
- 経営陣は、事業の方向性について健全な意思決定をしている
- 自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい
- 自分の会社で働くことに誇りをもっている
- 自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う
参考:経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室、マーサー ジャパン株式会社「経済産業省 主 催経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」
各設問はシンプルながら、組織内のコミュニケーション・評価制度・働きやすさなど、核心的な要因を測るように設計されています。
Q12とeNPSに加え、経済産業省・マーサージャパンが提示した項目を参考に設問設計をしてみましょう。
エンゲージメントサーベイで確認すべき指標
調査結果を総合的に評価するための代表的な指標と、その活用方法を解説します。
エンゲージメントサーベイでは単にスコアを集計するだけでなく、どの指標に注目するかが重要です。
組織全体を俯瞰できる指標から仕事への集中度合いを測る指標まで、組み合わせて分析することで、より正確に課題を特定できます。
総合的なエンゲージメントスコア
エンゲージメントサーベイでは、全体の回答結果を総合スコア(エンゲージメントスコア)として算出することで、組織全体のエンゲージメントの状態をひと目で把握できます。
この総合スコアを見ることで、まず全社の平均的な傾向を把握できるほか、部門ごとのスコアを比較することで部門間の偏りや差も可視化できます。
さらに、単なる平均値だけでなく、標準偏差やスコア分布といった統計的な観点から分析することで、課題が一部に集中しているのか、それとも全体に広がっているのかを判断しやすくなります。
このような総合指標は、従業員が自社や担当業務に対してどう感じているか、またどれだけ愛着や貢献意欲を持っているかといった“組織との関係性”を測る上で非常に重要です。
ワークエンゲージメント(業務没入度)指標
従業員一人ひとりがどれほど仕事に没入しているかを測定する指標として、ワークエンゲージメントが注目されています。
具体的には、作業に熱中できているかや、業務から活力を得られているかなどを質問項目に含める方法です。
設問例は以下の通りです。
- やりがいを感じていますか?
- 自分の強みやスキルを業務に活かせていると感じますか?
仕事に対する前向きな姿勢が高いメンバーが多いほど、成果創出やイノベーションの発生率が上がることが期待できます。
♦ワークエンゲージメントの詳細については次の記事をご覧ください:ワークエンゲージメントとは?高めるための具体的な方法も解説
エンゲージメントドライバー(要因別)指標
エンゲージメントドライバー指標とは、従業員エンゲージメントを高める要因を明らかにするために必要になる指標のことを言います。
企業理念への共感度や仕事への満足度をはじめ、成長している実感はあるのか、良好な人間関係を築けているのかなどを調査できます。
設問例は以下の通りです。
- 自社や部署のビジョンを理解していますか?
- 担当業務が企業理念の実現に貢献できていると感じますか?
これらをドライバーとして設定し、セクションごとにスコアを算出すると、具体的な改善領域を見つけやすくなるでしょう。
エンゲージメントサーベイ活用6ステップ
サーベイ結果を効果的に経営に結び付けるための実践ステップを解説します。
エンゲージメントサーベイの結果を単に報告するだけでは、組織の変革につながりません。
経営指標と連動させて分析し、的確な改善施策を実行する6つのステップを踏むことで、より大きな成果を得ることが可能となります。
1.経営指標とエンゲージメントをリンクさせる
エンゲージメントスコアを、売上・利益率・顧客満足度などの経営指標と関連づけて分析することは、サーベイ結果を活用する第一歩です。
経営層にとっても、エンゲージメント施策を“コスト”ではなく“投資”と捉えやすくなるため、意思決定につながりやすくなります。
たとえば、熟練人材の定着は顧客満足度の向上にもつながり、売上や利益に波及していきます。
このように、「エンゲージメント → 離職率改善 → 顧客満足・売上向上」といった論法を数値で示すことで、経営層の関心を引きやすくなります。
実際、Gallup社の調査では、エンゲージメントが高いチームは低いチームと比較して、利益が23%、顧客指標が10%高いと報告されています。
経営層へ報告する際は、離職率や満足度といったKPIの変化だけでなく、その先にあるKGI(売上・利益・顧客満足度など)の改善可能性を添えることが重要です。
参考:ギャラップ社報告
2.属性ごとの傾向分析と施策出し
エンゲージメントの全体スコアを見ただけでは、「どこに」「どんな対策を打つべきか」は見えてきません。
そこで有効なのが、部門・職種・勤続年数・勤務地などのセグメント別にスコアを分析することです。
これにより、“温度差”がある層=リスクの高いグループが浮かび上がり、施策の優先順位が明確になります。
たとえば、エンジニア(勤続3年未満)のグループで「キャリア成長の機会」に関するスコアが2.6と、全社平均より0.9ポイント低かった場合、「成長実感の欠如」「スキルアップの機会不足」「社内異動の少なさ」などの背景が見えてきます。
このように、スコア差が顕著な“温度差セグメント”を特定し、その背景を深掘りすることで、より精度の高い改善施策が立てられるようになります。
3.課題ピラミッドで施策の優先順位づけ
前のステップで抽出した施策は、「課題ピラミッド」というフレームワークを使って優先順位をつけていきます。
課題ピラミッドとは、施策を次の3層に分類する枠組みです:
- 最上段(Top 3):集中して取り組むべき最重要課題
- 中段(次点):中期的に対応する課題
- 下段(後回し):経過観察または将来的に対応する課題
なぜこのフレームが必要かというと、エンゲージメント課題は多岐にわたるため、すべてに手をつけるとリソースが分散し、効果も見えづらくなるからです。
施策を分ける際には、エンゲージメントスコアと経営指標との関連性をもとにスコアリングを行います。
具体的には、以下の3軸で評価します。
※影響度・重要度・改善可能性の3軸マトリクス
このスコアリングにより、集中すべき“トップ3課題”を定量的に特定できます。
判断基準の一例:
最上段:影響度×重要度スコアが上位25%かつ改善可能性≦7
- 中段:影響度×重要度スコアが上位25〜50%
- 下段:それ以外
この整理によって、限られた人員・予算を最もリターンの大きい領域に集中投下できるようになります。
この工程を行うことで、経営リソースを集中投下し、限られた予算・人員を最もリターンが大きい領域へ配分する根拠になります。
このピラミッドが明確になれば、次のアクションプラン作成では「誰が・いつまでに・何をするか」を具体化するだけ。
逆にピラミッドが曖昧だと、施策実行の段階で迷走するリスクが高まります。非常に重要なステップです。
4.アクションプランの策定と実行
ここからは、実際に施策を実行へと移します。
ポイントは、短いサイクルで施策を回し、効果測定まで含めて完結させることです。
このアプローチには、次のようなメリットがあります:
- 高速運用と学習ループの確立:90日単位などの短い期間で施策を回し、仮説→実行→検証→学習の流れを高速で繰り返すことで、改善の精度とスピードを高められます。
- 責任の明確化:オーナー、期日、成果指標を明示することで「誰が・いつまでに・何をやるのか」がブレなくなり、途中で頓挫するリスクを下げられます。
この仕組みを機能させるには、次のような項目を整理し、定期的にレビューすることが重要です。
※施策テンプレート(例:キャリア面談制度の導入)
このテンプレートに沿って施策を設計すれば、「実行されない」「目的がブレる」「途中で止まる」といったよくある失敗を防ぐことができます。
5.従業員への結果共有・フィードバック
アクションプランとあわせて、エンゲージメントサーベイの結果は従業員にも迅速かつ丁寧に共有することが重要です。
結果が共有されないと、従業員は「声を届けても意味がない」と感じ、次回の回答率や協力度が低下してしまいます。
そのため、「結果 → 施策 → 進捗」までの流れをタイムリーかつ分かりやすく伝えることが、信頼関係と参加意欲の向上につながります。
単にスコアを見せるのではなく、なぜその結果になったのか、どう改善していくのかを丁寧に説明しましょう。
必要に応じて、従業員との意見交換の場を設けることも有効です。
こうした双方向のフィードバック体制があることで、組織課題の本質に迫るヒントや、現場視点の改善アイデアが得られやすくなります。
6.定点観測で成果を可視化する仕組みづくり
サーベイを年に1回のセンサス(全社調査)だけで終わらせてしまうと、組織の変化の兆しを捉えづらく、施策の効果検証も遅れがちです。
そこで重要なのが、パルスサーベイ(短期間・高頻度の調査)を併用し、継続的にモニタリングする仕組みです。
施策を実施したら、その効果を再びエンゲージメントスコアや業績指標を用いて検証します。
改善が見られた領域は継続強化し、効果が薄い部分についてはアプローチを見直します。
このように、PDCAを高速に回し続けることで、組織のエンゲージメントレベルは徐々に底上げされていきます。
►エンゲージメントを高める具体的な施策については次の記事をご覧ください:従業員エンゲージメントを高める8ステップ|具体的な施策も紹介
エンゲージメントサーベイ実施時の注意点
調査の円滑な実施と効果を上げるために、注意すべき点をまとめました。
エンゲージメントサーベイは適切に運用しないと、従業員に負担をかけるだけで終わったり、組織内に不信感を生んだりする恐れがあります。
ここでは、目的の共有からフォローアップまで、実施にあたって気をつけたいポイントを確認していきましょう。
調査の目的と重要性を従業員に伝える
サーベイを実施する際には、経営側がなぜこの調査を行うのか、その結果をどう活用するのかを丁寧に伝えることが重要です。
従業員が意図を正しく理解すると、回答への協力態度が高まり、正直な意見が集まりやすくなります。
また、匿名性やプライバシー保護に関するルールもあわせて説明し、安心して回答できる環境を整えましょう。
回答の負担を減らす工夫をする
設問数を必要最小限に絞り、回答にかかる時間を短くするのも大切な配慮です。
長すぎるアンケートは回答の質にも影響を与えるため、当初の目的に合った質問を取捨選択しましょう。
日程的にも忙しい時期を避けて実施するなど、従業員の利便性を考慮することで、回答率と回答の信頼性を高められます。
結果の共有とフォローアップを行う
サーベイ終了後すぐに結果を公開するだけでなく、その後のアクションプランや改善活動を従業員へ定期的に報告することが大切です。
社員が「ちゃんと意見を聞いてくれた」と実感できれば、次回以降の協力姿勢が強まります。
フォローアップの過程で疑問や要望が出た場合には、柔軟に対応しながら組織としての信頼関係を深めていきましょう。
専用ツールで効率的に実施する
エンゲージメントサーベイの実施や集計、分析には、専用のクラウドツールを活用すると効率的です。
回答状況をリアルタイムで把握できたり、分析機能が自動化されていたりするため、担当者の負担を大幅に削減できます。
価格やサポート体制、データのセキュリティ面を確認し、自社に最適なツールを選定しましょう。
エンゲージメントサーベイツールの選び方
従業員エンゲージメント調査ツールを利用するときは、複数のサービスを比較することが大切です。
以下の点を比較して、自社に合った調査ツールを選びましょう。
- 自社が知りたいことを把握できるか
- 調査設計の信頼性・再現性はあるか
- どのような設問設計ができるか(内容や設問数、回答にかかる時間など)
- 専門的な分析ができるか
- 自社の予算に合っているか
継続しておこなう従業員エンゲージメント調査を効果的に実施できるよう、しっかりと比較検討する必要があります。
組織改善に役立つ「Reloエンゲージメンタルサーベイ」のご紹介
従業員エンゲージメント調査ツールの導入や調査によって組織改善をおこないたい方におすすめなのが、リロクラブが提供する「Reloエンゲージメンタルサーベイ」です。
本章ではサービスの特徴や導入のメリットについてご紹介します。
サービスの特徴
Reloエンゲージメンタルサーベイの特徴は、2つのサーベイ(ディープサーベイ、ショートサーベイ)を実施できることです。
これにより、エンゲージメント・組織課題の可視化・分析ができ、自社の現状の理解と課題解決に向けた施策立案に活かせます。
従業員の休職・離職につながる変化を早い段階で把握し、要因を特定できます。
メンタルヘルス対策や職場環境の改善を実現できれば、従業員エンゲージメントを高められるでしょう。
Reloエンゲージメンタルサーベイの詳細はこちら
導入のメリット
Reloエンゲージメンタルサーベイは企業・従業員ともにメリットがあります。
企業にとってのメリットは以下の通りです。
- 定点観測・包括的な組織状態の確認の2つができる
- 組織課題が可視化される
- 従業員の急な離職や休職の防止が期待できる
- 従業員の心と体のコンディションも理解できる
- 学術的な観点を踏まえた分析ができる
定点観測ができるショートサーベイの利用で従業員リアルタイムの状態の把握、包括的な組織状態の確認ができるディープサーベイで組織の深い要因分析ができます。
また、18万人以上のメンタルヘルスデータを持っているため、質の高い分析も可能です。
また、精神科医・産業医・臨床心理士・AI研究者などの専門家の知見で作成した調査項目を利用できるため、自社での実施より高い効果を得られるでしょう。
従業員にとってのメリットは以下の通りです。
- 自分の状態を客観的に把握できる
- 職場の状況や自分の状態を企業に発信しやすくなる
- セルフケアマネジメントができる
調査実施後はセルフケア動画やコラム記事を閲覧できます。
15万通りのアドバイスから気付きを得てメンタルケアを促進できれば、休職や離職を防げます。
従業員エンゲージメントの向上や調査の効果を高めるReloエンゲージメンタルサーベイは人数規模、ご予算に応じたプランの提案が可能です。
企業の課題に合わせてカスタマイズできるReloエンゲージメンタルサーベイの導入を検討してみてください。
成功事例1.従業員ニーズを満たす福利厚生サービスを導入|株式会社イトーキ
ワークプレイス事業や設備・パブリック事業を展開する株式会社イトーキでは、「従業員のニーズを満たしたい」との想いで福利厚生アウトソーシングサービスを導入しました。
ニーズにフィットした宿泊・食事・レジャー・育児・介護がお得に受けられるサービス、自己啓発サポートを受けられるリロクラブの福利厚生倶楽部です。
福利厚生俱楽部の導入後に従業員エンゲージメント調査をおこなうと、「社員の会社に対する誇り」の項目で「誇りに思っている」と回答したのは74.7%と、前回調査の40.4%から大きくアップできました。
福利厚生の充実は従業員エンゲージメントの向上にポジティブな影響を与えると考えられます。
成功事例2.健康管理アプリの導入で健康経営を推進|積水化学工業株式会社
住宅事業や不動産事業を展開する積水化学工業株式会社では、「健康経営の実現という経営方針を実現したい」との想いで健康サポートアプリを導入しました。
健康促進を促すコラムや撮影した食事写真からAIがアドバイスするなどの機能があるRelo健康サポートアプリを導入した結果、健康管理、従業員間のコミュニケーションの活性化を実現しました。
「企業が従業員の健康について考えてくれている」「上司や同僚とコミュニケーションが取りやすい」と感じる職場は従業員エンゲージメントが高まりやすいです。
健康管理アプリは従業員エンゲージメントを高める施策として重要なものと言えるでしょう。
従業員エンゲージメント調査を継続的に実施して組織の成長を目指そう
エンゲージメントサーベイを定期的に行い、PDCAを回すことで組織は大きく成長します。
最後にまとめとして継続実施の意義を確認しましょう。
エンゲージメントサーベイは一度実施して終わりではなく、組織の成長を支える長期的な取り組みとして捉えることが肝心です。
結果を分析して改善策を実行し、その効果を再度測定するというサイクルを回すことで、従業員の満足度とモチベーションを継続的に高めることができます。
変化の激しいビジネス環境において、エンゲージメントの維持・向上は組織競争力の源泉となるため、調査の継続実施を欠かさず行いましょう。