
福利厚生をなくす?不利益変更を行う3つのポイントや手続き方法
既存の福利厚生をなくし新しいサービスを増やす際や、福利厚生自体を廃止する際には「不利益変更」を行わなくてはいけません。
しかし、そもそも福利厚生をなくすことはできるのか、不利益変更がいまいち分からないと悩んでいる担当者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、福利厚生を廃止する不利益変更の手続き方法や条件を解説すると同時に、仮に従業員の同意が得られなかった場合の変更手続き方法にも触れていきます。
本記事を参考にして、自社の福利厚生の刷新を図りましょう。
▼そもそも福利厚生について、詳しく知っておきたいという方は次の記事をご参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.福利厚生を廃止することはできるのか
- 2.福利厚生の変更や廃止は不利益変更になる?
- 3.福利厚生を不利益変更した際の罰則
- 4.福利厚生を不利益変更できる2つの条件
- 4.1.変更に合理性がある
- 4.2.変更後の規則を周知する
- 5.福利厚生を不利益変更する手続きや進め方
- 5.1.1:就業規則の変更方針を決める
- 5.2.2:従業員との面談や労組との協議をする
- 5.3.3:同意書の作成や労働協約の締結をする
- 5.4.4:就業規則を変更し届出する
- 5.5.5:変更の周知を徹底する
- 6.福利厚生の不利益変更に従業員が同意しない場合
- 7.従業員の同意がない福利厚生変更の手続き
- 7.1.1:変更方針や草案を作成する
- 7.2.2:労働者代表から意見書をもらう
- 7.3.3:就業規則変更届を作成し届出をする
- 7.4.4:変更を徹底して周知する
- 8.福利厚生の不利益変更を行う際の3つのポイント
- 8.1.規則の周知を徹底する
- 8.2.従業員のモチベーションを把握する
- 8.3.経過措置を設ける
- 9.一部の福利厚生を廃止した企業例と打開策
- 10.一部の福利厚生をなくす際に刷新したい人気の制度
- 10.1.柔軟な働き方ができる福利厚生
- 10.2.ライフワークバランスの両立ができる福利厚生
- 10.3.経済的負担や不安軽減になる福利厚生
- 11.福利厚生の刷新は従業員満足度に比例する
福利厚生を廃止することはできるのか
そもそも福利厚生をなくすことはできるのでしょうか。結論から言えば、従業員の了承があれば可能です。しかし、一方的な廃止は「不利益変更」に当てはまる可能性があります。 不利益変更とは、企業が一方的に従業員が不利益になる労働条件へ変更をすることです。 例えば、突然の給料引き下げ、手当の廃止などが当てはまります。
福利厚生の変更や廃止は不利益変更になる?
福利厚生の突然の変更や廃止は不利益変更に当たります。
不利益変更とは「従業員の労働条件を現在よりも不利益に変更すること」です。不利益変更に関連した条文は、労働契約法第8条〜第10条に規定されています。
下記は労働契約法の第8条、9条、10条の抜粋です。
”労働者および使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。” ”使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
ただし、次条の場合は、この限りでない。” ”使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。”労働契約法第10条(一部抜粋)
参照:労働契約法|e-Gov法令検索
企業による一方的な労働条件の変更は認められておらず、原則として従業員との合意が必要です。
福利厚生を不利益変更した際の罰則
不利益変更は、広い領域をカバーする「一般法」の中でも一定の領域のみを対象とする「特別法(私法)」であるため、仮に違反したとしても罰則はありません。
また、特別法はある特定の事項について、一般法よりも優先して適用される特徴があります。 例えば、事業者と労働者との雇用契約・労働契約には、民法第二章契約の第八節雇用(第六百二十三条)の規定よりも、労働基準法や労働契約法が優先して適用されます。
参照:民法 第三編 第二章 第八節|e-Gov法令検索
そのため、違反時の罰則はありません。ただし、不利益を受けた従業員が提訴するリスクはあるため注意が必要です。
福利厚生を不利益変更できる2つの条件
本章では、福利厚生を不利益変更する条件を紹介します。 2つの条件は下記のとおりです。
- 変更に合理性がある
- 変更後の規則を周知する
それぞれ解説します。
変更に合理性がある
労働契約法第9条により、企業は労働者の不利益になるような労働条件の一方的な変更は原則禁止とされています。
しかし、規則の変更が「合理的である」と判断された場合は、変更が可能です。合理的かどうかの判断は、労働契約法の第10条の下記条件で判断します。
- 労働者が受ける不利益の程度
- 労働条件を変更する必要性
- 変更後の就業規則の相当性
- 労働組合などとの交渉状況
- 国内や同業他社の状況など
参照:労働契約法 第二章 第十条|e-Gov法令検索
合理性や変更の妥当性があるのかを、かならずチェックしておきましょう。
変更後の規則を周知する
合理性があった場合でも、必ず「周知する」ことが必要です。労働基準法では、就業規則の周知について下記の行動を促しています。
- 常時作業場の見やすい場所へ掲示や備え付ける
- 書面で交付する
- 磁気ディスク等に記録し各作業場で内容を常時確認できる
このような方法で、従業員が就業規則の内容を知れる状態であることが必要です。
仮に就業規則が周知されなかった場合は、労基法違反となり30万円以下の罰金が科せられてしまいます。
福利厚生を不利益変更する手続きや進め方
本章では、福利厚生を不利益変更する手続きや進め方を解説します。 主なステップは下記の5つです。
- 就業規則の変更方針を決める
- 従業員との面談や労組との協議をする
- 同意書の作成や労働協約の締結をする
- 就業規則を変更し届出する
- 変更の周知を徹底する
それぞれ丁寧に把握して、手続きが行えるようにしておきましょう。
1:就業規則の変更方針を決める
まずは就業規則の変更方針を定めましょう。総務部や人事労務部門を扱う部署を中心に、就業規則の変更方針を固めて草案を作成します。
適用される従業員の範囲や対象を定めたら、変更内容に合理性があるか、従業員の不利益度がどのぐらいかなどを確認し、問題がなければ合意に進みます。
また変更方針を決める際に、対象の従業員へ個別で同意を得るか、労働組合との協議で合意を得るのか同意を得る方法も決めておきましょう。
2:従業員との面談や労組との協議をする
2つめのステップは、従業員や労働組合との面談や協議を進めます。
従業員との面談では、変更の具体的な内容や変更理由について詳しく丁寧に説明することがポイントです。また、威圧的にならずに、交渉をすすめましょう。
一方で労働組合との協議は、労働組合間で労働協約を締結すれば、従業員からの個別の同意を得ずに労働条件の変更ができる点がメリットです。
ただし、対象となるのは原則組合員のみに限ります。
3:同意書の作成や労働協約の締結をする
3つめのステップは、同意書や労働協約の締結をしましょう。 従業員の同意ができた場合は「同意書」を、一方の労働組合間での合意では「労働協約」の締結を行います。 従業員による同意は口頭でも可能です。
しかし、後のトラブルへと発展する可能性もあるため、同意書を書面で残しておくのがおすすめです。 また、労働協約の場合は労働組合法第14条により、書面にする点と両当事者の署名または記名押印することで効力が発生します。
そのため、労働協約は必ず書面として残しておきましょう。
参照:労働組合法 第三章 第十四条|e-Gov法令検索
4:就業規則を変更し届出する
4つめは、就業規則の変更の届出を行います。新しい就業規則を2部ずつ作成し、労働基準監督署に届け出ます。1部は受付印を押されて返却されるため、社内で保管しておきましょう。
5:変更の周知を徹底する
最後のステップは、変更の周知を徹底することです。
- 社内の目につくところに掲示する
- 書面にして従業員に交付する
- 誰でも閲覧できるデータとして扱う
上記のような方法で、必ず周知を行いましょう。
福利厚生の不利益変更に従業員が同意しない場合
不利益変更の条件に従業員が同意しないケースもあります。
原則としては従業員との合意が必要ですが、変更が合理的で変更後の就業規則を従業員に周知する場合に限り、労働条件の不利益変更を行うことは可能です。
ただし、一方的な変更を強行すれば反発した従業員との間で労働紛争となることも考えられます。また、紛争まででなくとも不利益変更の影響で従業員のモチベーションが低下する可能性もあるでしょう。
モチベーションが下がれば、生産性の低下、離職率の増加など企業にとって痛手になってしまいます。 そのため、できる限りは従業員の合意や、労働組合との協約締結を行いましょう。
従業員の同意がない福利厚生変更の手続き
本章では、従業員の同意や労働組合との協約締結を行わずに福利厚生を変更する手続きについて解説します。 主なステップは下記の4つです。
- 変更方針や草案を作成する
- 労働者代表から意見書をもらう
- 就業規則変更届を作成し届出をする
- 変更を徹底して周知する
万が一に備えてこれらのステップも把握しておきましょう。
1:変更方針や草案を作成する
ステップ1は、変更方針や草案の作成です。自社の経営状況の分析や変更したい福利厚生を調べてみましょう。 また、対象となる従業員の範囲、合理性が伴っているかも確認することが大切です。
2:労働者代表から意見書をもらう
次に、労働者代表から「意見書」を受け取ります。労働基準監督署へ届け出るには、労働者代表から意見を聞き取った証明となる「意見書」が必要です。 意見書の様式は決まっていませんが、下記の数値の意見書が必要です。
- 労働者の過半数で組織する労働組合
- 労働者の過半数を代表する者の意見数
特に意見がない場合は「特に意見はありません」と記入してもらうことで対応できます。
3:就業規則変更届を作成し届出をする
ステップの3つ目として、就業規則を労働基準監督署に提出しましょう。就業規則届も特に様式はありません。
- 名称
- 所在地
- 代表者の役職と氏名
- 代表者印の捺印
上記の4つを満たしていれば問題ないでしょう。
4:変更を徹底して周知する
最後のステップは、変更の周知を必ず行うことです。変更内容を従業員に周知することは法律で義務付けられています。 周知義務を怠ると、労働基準監督署の指導を受ける場合や、罰金刑につながってしまうため、注意しておきましょう。
福利厚生の不利益変更を行う際の3つのポイント
本章では、福利厚生の変更を行う際のポイントを解説します。 気を付けたい3つのポイントは下記のとおりです。
- 規則の周知を徹底する
- 従業員のモチベーションを把握する
- 経過措置を設ける
それぞれ解説します。
規則の周知を徹底する
最も重要なポイントは、規則の周知を徹底することです。全従業員に情報が行き渡るように、何度も広報活動を行いましょう。
- 社内掲示板への貼りだし
- 全従業員への一斉メール送信
- 社内ツールでの拡散
- 文書化して配布する
- 全員が見れるデータベースへの格納
周知活動は1度限りではなく、何度も行い必ず徹底することが重要です。 変更後の周知が十分ではなかったため、無効となったケースもあります。 従業員の理解を促すためにも、変更前・変更後を一緒に掲示するなどの工夫も凝らしてみましょう。
従業員のモチベーションを把握する
スムーズに合意に至った場合でも、福利厚生の変更は大きなストレスにつながります。 そのため、従業員のモチベーションを把握しておきましょう。 モチベーションの低下はさまざまな悪影響と紐づいています。
- 生産性の低下
- 帰属意識(エンゲージメント)の低下
- 離職率の増加
- 求人者数の現象
- 売上や利益の低下
企業価値を低下させないためにも、定期的なリサーチやアンケートを行い現状の従業員満足度を分析し、モチベーションアップにつながる施策を実行しましょう。
経過措置を設ける
最後のポイントは経過措置を設ける点です。 新しい制度運用を始めるときは経済的にだけでなく、精神的にも負担が大きくなります。 不利益をカバーできるような措置や、運用スケジュールの共有、社内説明会などを開催し、徐々に新制度に慣れてもらうようにしましょう。
一部の福利厚生を廃止した企業例と打開策
2017年に日本の大手製紙メーカーである大王製紙株式会社が福利厚生の刷新を行いました。 内容は、家族手当を見直し配偶者手当を廃止するものです。
一方で、子女手当を増額および支給期間を延長した「子女教育手当」を新設しています。 同社によれば、夫婦共働き世帯が中心となっており、配偶者手当の支給意義や教育費用の負担増の背景も含め検討した結果とのことです。
参照:大王製紙、家族手当を見直し「子女教育手当」を新設|日本経済新聞
既存の福利厚生を見直して新しい時代のニーズにマッチした施策を取り入れることが、福利厚生の廃止の「打開策」です。古い制度を廃止し新しい施策を運用することは、福利厚生費用の削減や従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
▼2019年の情報を元に福利厚生の流れを纏めている記事もありますので、併せてご覧ください。
一部の福利厚生をなくす際に刷新したい人気の制度
本章では、古い福利厚生をなくし、新しく制度を刷新する場合におすすめの制度を解説します。 主に、下記の3つが人気の福利厚生制度です。
- 柔軟な働き方ができる福利厚生
- ライフワークバランスの両立ができる福利厚生
- 経済的負担や不安軽減になる福利厚生
また、下記はエン転職が2023年2月に実施した1万人アンケート「企業選びで特に重視する項目」の結果です。
参照:採用強化につながる福利厚生とは? 求職者に喜ばれる制度|エン転職
これらを元に、人気の福利厚生を紹介します。
柔軟な働き方ができる福利厚生
1つめは、柔軟な働き方ができる制度です。主な制度は下記の3つです。
- フレックスタイム
- テレワーク
- 時差・時短勤務
国が推進する働き方改革に伴って、働く場所や時間の自由度が高いことが評価されています。
ライフワークバランスの両立ができる福利厚生
2つめは、ライフワークバランスを重視した制度です。
- 特別休暇
- 出産・育児に関する休暇
- 施設・レジャー割引
従業員の健康は企業の資産そのものです。昨今では、従業員の健康や高いエンゲージメントや組織づくりの達成を目指す「ウェルビーイング」や、従業員の健康を戦略的に管理し業務パフォーマンスを上げる「健康経営」などの考え方が見直されています。
従業員がリフレッシュすることで、仕事でより高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/21171
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/20861
経済的負担や不安軽減になる福利厚生
最後は、経済的なサポートが魅力の福利厚生です。
- 食事手当・補助
- 住宅手当
- 資産形成制度
社員食堂や住宅手当は「助かる」との声が多く、人気の福利厚生です。そして、現在は資産形成をサポートする制度の需要も高まりを見せています。 NISAやiDeCo、企業型DC(企業型確定拠出年金)など、さまざまな施策があるため、自社に合った制度を導入してみましょう。 また、従業員の金融リテラシーを高めることで、企業へのエンゲージメントが向上するという調査結果もでています。
参照:従業員エンゲージメントと金融リテラシーの関係性|三菱UFJ年金情報
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/21005
参考記事;https://www.reloclub.jp/relotimes/article/20979
福利厚生の刷新は従業員満足度に比例する
福利厚生をやめる・廃止することは、難しいことではありません。 古い福利厚生があっても、働き方の多様性に伴って使わない・使えないケースもあるでしょう。
廃止や見直しで福利厚生を刷新することで、結果的に従業員の満足度が向上し、企業にとってもよい結果につながることは言うまでもないことです。 ぜひ、福利厚生の刷新や自社にあった新しい制度を導入し、企業価値を高めましょう。