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ストレスチェックとは?目的や方法、効果的な活用法を徹底解説
近年、過度な業務負担や不適切な労働環境によるストレスが、従業員の心身に大きな影響を与えると問題視されています。
そうした状況への対処として重要なのが「ストレスチェック制度」の導入です。
ストレスチェック制度は従業員の健康を守り、職場環境の改善にも役立ちます。
この記事では、ストレスチェック制度の目的や実施方法、結果の活用法をわかりやすく解説し、より良い職場作りに役立つ情報をお届けします。
目次[非表示]
- 1.ストレスチェックとはどういう制度?
- 1.1.ストレスチェックとは
- 1.2.ストレスチェック制度が導入された背景
- 1.3.ストレスチェックの実施義務について
- 2.ストレスチェックを実施するメリット
- 3.ストレスチェック制度を導入する前の準備
- 3.1.1.企業の方針を決める
- 3.2.2.衛生委員会などで実施方法を決める
- 3.3.3.社内規程を作成し、従業員に周知する
- 4.ストレスチェックの実施方法
- 5.ストレスチェック後の対応
- 5.1. 結果の通知
- 5.2.医師による面接指導
- 5.3.職場環境の改善へ活用
- 6.ストレスチェックを実施する際の注意点
- 6.1.プライバシー保護と不利益取り扱いの防止
- 6.2. 結果の保存と管理
- 6.3.面接指導結果の保存
- 7.ストレスチェックを活用して従業員の健康を守ろう
ストレスチェックとはどういう制度?
ストレスチェックは多くの企業で導入されていますが、具体的な内容や目的が十分に理解されていないこともあります。
ここでは、ストレスチェック制度の基本的な仕組みや実施義務などについて解説します。
ストレスチェックとは
ストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態を確認し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための調査です。
従業員が事前に用意されたストレスに関する質問に回答し、その回答をもとにストレスレベルを計測します。これによって、自分自身の状態を把握し、必要なサポートを早い段階で受けられるようになります。
ストレスチェック制度が導入された背景
近年、過重労働や悪質な職場環境の問題から、従業員のメンタルヘルス不調が深刻化しています。
うつ病や過労死などが社会問題となり、企業におけるメンタルヘルス管理の重要性が増しました。
2023年度の精神障害の労災補償請求件数は2,683件で、5年前の1820件と比べると863件の増加でした(147.4%)。
こうした背景から、ストレスチェックの実施が法的に義務化され、企業は従業員の心身の健康を守るための予防的措置を講じる責任を担うようになりました。
ストレスチェックは、従業員の健康状態を把握し、問題があった際に早期に対処するための有効な手段の1つとして位置づけられています。
ストレスチェックの実施義務について
ストレスチェックの実施は、従業員50名以上の企業に義務として定められています。
2015年の法改正により、年に1回の実施が義務化されました。
ストレスチェックの結果は労働基準監督署へ報告しなければなりません。
一方、従業員50名未満の企業では、現時点では「努力義務」にとどまっていますが、2024年10月に発表された厚生労働省の方針では、小規模事業所においても義務化を進める方向が示されています。
このため、将来的にはすべての企業でストレスチェックの実施が求められるようになると見込まれています。
▼実施義務化や労働安全衛生法について、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考にしてください。
ストレスチェックを実施するメリット
ストレスチェックは、企業と従業員にとって多くのメリットをもたらします。
ここでは、具体的なメリットを企業側と従業員側に分けて解説します。
企業側のメリット
企業側のメリットとしては、以下三点のメリットを挙げることが出来ます。
- 離職のリスクを抑えることが出来る
- 生産性を上げることが出来る
- 職場環境の改善に充てることが出来る
それぞれの詳細を後述していきます。
メンタルヘルス不調による離職リスクの低減
ストレスチェックを導入することで、従業員のメンタルヘルスの問題を早期に発見し、必要に応じたサポートが可能になります。
特に、ストレスチェックの結果から強いストレスにさらされている可能性のある従業員を発見できるため、深刻な病気や長期休職を防ぎ、離職リスクを減らすことが可能です。
生産性の向上
職場のストレス要因を特定し改善することで、従業員のモチベーションとパフォーマンスの向上が期待できます。
ストレスを軽減することで、従業員が最大限の能力を発揮しやすくなり、業務効率や生産性が高まるでしょう。
職場環境の改善
ストレスチェックの結果を分析することで、職場内のストレス要因が明確になります。
その情報をもとに改善策を講じることができ、従業員が快適に働ける環境を整えやすくなります。
これにより、職場全体の雰囲気が良くなり、企業の運営がよりスムーズに行えるようになるでしょう。
実際に、「厚生労働省のストレスチェックの効果に関する調査研究結果」によれば、以下の効果をストレスチェック制度の効果として感じていると報告されています。
- 53.1%が「社員のセルフケアへの関心度の高まり」
- 27.8%「メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成」
▼ストレスチェック以外にもできるメンタルヘルスに有効な施策や事例について記載した次の記事もご参考してください。
従業員側のメリット
メンタルヘルス不調の予防と早期発見
ストレスチェックを受けることで、従業員は自分のストレスレベルを把握しやすくなります。
これにより、うつ病や精神的な不調を予防し、強いストレスを抱えていると判定された場合には医師の診断やカウンセリングを通じて早期に適切なサポートを受けることができます。
セルフケア意識の向上
自分のストレス状態を知ることで、セルフケアへの意識が高まりやすくなります。
ストレス管理やリラクゼーションの方法を学ぶきっかけとなり、日常的に自分のメンタルヘルスをケアする意識が育まれるでしょう。
ストレスチェック制度を導入する前の準備
ストレスチェック制度を導入するには、企業としての方針を明確にし、関係者と十分に話し合うことが大切です。
事前にしっかり準備を進め、従業員が安心してストレスチェックを受けられる環境を作りましょう。
1.企業の方針を決める
まず、ストレスチェックの目的や方針を企業としてはっきり示すことが重要です。
例えば、「メンタルヘルス不調の予防を目的として、ストレスチェックを実施する」といった基本的な方針を従業員に伝えることで、制度への理解と協力が得やすくなります。
この方針が従業員にしっかり伝わることによって、ストレスチェックの実施がスムーズに進みやすくなります。
2.衛生委員会などで実施方法を決める
ストレスチェックを実施するには、社内で意思決定を行う必要があります。
従業員50人以上の企業では、「衛生委員会」もしくは「安全委員会」、または2つを統合した「安全衛生委員会」の設置が義務づけられており、この委員会で、実施方法や運用の詳細を決めます。
実施スケジュールや方法、結果の取り扱いについて話し合います。
また、従業員が安心してストレスチェックを受けられるように、プライバシー保護についても十分に検討が必要です。
3.社内規程を作成し、従業員に周知する
衛生委員会(安全衛生委員会)で決めた内容をもとに、社内規程を作成しましょう。
この規程には、ストレスチェックの目的、実施方法、結果の取り扱いについての基本方針を明記します。
文書化することで、従業員にとって制度がより理解しやすくなります。
規程作成にあたっては、厚生労働省が公表している例を参考にすると良いでしょう。
規程を全従業員に周知することで、制度の実施に向けた理解と協力を得やすくなります。
【参考】「ストレスチェック制度実施規程(例)」(厚生労働省)
ストレスチェックの実施方法
ここでは、ストレスチェックを実施する際の基本的な流れを紹介します。
調査票の準備と配布
ストレスチェックを実施するためには、まず調査票を準備します。
調査票はデータ化して渡すか、紙で配布します。
集計を効率的に行いたい場合は、データ形式での配布がおすすめです。
調査票には、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)や、「ストレスチェック実施プログラム」などが使用できます。
【参考】「ストレスチェック制度 導入マニュアル」(厚生労働省)
【参考】『会社向け「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト』(厚生労働省)
調査票の回答
配布された調査票に従業員が回答します。
回答結果は、社内規程に基づいて厳重に管理し、他の従業員が閲覧できないようにしましょう。
プライバシーの保護を徹底し、従業員が安心して答えられる環境を作ることが大切です。
高ストレス者の特定
調査の結果をもとに、高ストレス状態にある従業員を特定します。
高ストレス者とは、精神的な負担が大きく、早急な対応が求められる状態にある従業員です。
このような従業員には、カウンセリングや個別面談などのサポートを提供し、メンタルヘルスの問題が悪化するのを防ぎます。
高ストレス者の基準は、厚生労働省が提供する基準を参考にすると良いでしょう。
【参考】『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法』 (厚生労働省)
リロクラブ「ストレスチェックサービス」のご紹介
リロクラブの「メンタルヘルスケアサービス」は、4つのメニューで構成されており、各社の課題やニーズにあわせたストレスチェックの実施が可能です。
ストレスチェックに関する法令への対策も万全で、ストレスチェックに関連する業務をシステム化できるので、企業の担当者の事務的な手間や心理的負担を軽減できます。
■ストレスチェックに関するサービスをお探しの方は、下記リンクをご参照ください。
ストレスチェック後の対応
ストレスチェックは実施して終わりではなく、その後の適切な対応が重要です。
迅速かつ効果的なフォローアップを行うことで、従業員のメンタルヘルスを守り、職場全体の健康を維持しやすくなります。
ここでは、ストレスチェック後に必要な対応について解説します。
結果の通知
ストレスチェックの結果は、従業員のプライバシーを守りながら、速やかに本人に通知します。
通知内容には、ストレスの程度や高ストレスかどうか、医師の面接指導が必要かなどを含めます。
結果は本人とストレスチェックの実施者にのみ共有され、実施者に該当しない会社の関係者が結果を知るためには、従業員の同意が必要です。
医師による面接指導
高ストレス者には医師による面接指導が必要です。
専門的なアドバイスを受けることで、ストレスが心身に与える影響を軽減できるでしょう。
面接指導は、結果の通知後1カ月以内を目安に実施する必要があります。
会社は面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性について意見を聞き、必要な措置を講じます。
これにより、メンタルヘルス問題の予防にもつながります。
職場環境の改善へ活用
ストレスチェックの結果をもとに職場環境を改善することは、従業員の健康維持や職場の雰囲気の向上につながります。
そのため、ストレスチェック実施後には「集団分析」が推奨されます。
集団分析は、部署やグループなど一定の規模で結果を集計し、各集団のストレス状況や課題を把握する方法です。
この分析を通じて、どの集団にどのようなストレス要因があるのかが明確になり、具体的な改善策を立てられます。
例えば、業務過多が原因であれば、業務内容の見直しや適切な人員配置が効果的です。
集計・分析結果をもとに、管理監督者向けの研修や衛生委員会での検討を通じて、会社全体で職場環境の改善に取り組みましょう。
集団分析は、回答者数が10人以上のグループを対象に行うことが求められます。また、産業保健スタッフや管理監督者と連携して進めることが大切です。
▼集団分析の手法に関する詳細は次の記事も併せてご一読ください。
ストレスチェックを実施する際の注意点
ここでは、ストレスチェック結果の取り扱いや実施時に注意すべき点について解説します。
プライバシー保護と不利益取り扱いの防止
ストレスチェックを行う際に大切なのは、従業員が自身のメンタルヘルスに関して正直に回答できる環境を整えることです。
従業員が安心してできるよう、結果は厳密に保護され、不正な利用や不利益な取り扱いがないようにしなければなりません。
従業員の個人情報は守秘義務の対象であり、結果が不適切に利用されると企業は責任を負うことになります。
また、ストレスチェックの実施によって従業員に不利益が生じることは認められません。
例えば、面接指導を希望したことや、ストレスチェックの結果をもとにメンタルヘルスのサポートを受けたことを理由に解雇や降格の通達はできません。
企業は従業員の権利を尊重し、正当な理由がない限り不利益な取り扱いを避ける必要があります。
結果の保存と管理
ストレスチェックの結果は厳重に管理する必要があります。
結果は、外部からのアクセスを防ぐために、安全な場所に保管し、セキュリティ対策を徹底しなければなりません。
例えば、紙の調査票なら鍵のかかるキャビネット、データの調査票ならセキュリティの高いサーバーに保存し、アクセス権限を厳格に管理することが求められます。
また、ストレスチェックの結果は5年間保存する義務があります。
この期間中、個人情報が不正に使用されないよう、管理には十分な注意を払うことが必要です。
面接指導結果の保存
面接指導を受けた従業員の結果についても、ストレスチェックの結果と同様に5年間保存しなければなりません。
面接指導の記録には、医師からの報告内容や必要な就業上の措置が含まれます。
これらの記録は適切に保存され、必要に応じて対応を行うことが求められます。
企業は、面接指導結果の管理においてもプライバシー保護を徹底し、適切な保存方法を講じる必要があります。
ストレスチェックを活用して従業員の健康を守ろう
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを守るために必要な施策です。
早期にストレスの兆候を発見し、適切に対応すれば、従業員の健康を守り、職場全体の働きやすさを向上させることが可能です。
今後もストレスチェックの活用を継続し、健康で活力ある職場作りに取り組んでいきましょう。